Clap thanks!
春ですねえ。机に死んだようにうなだれてる彼女を見ると本当に、春だなあと感じます。
「ねえー」
彼女は唸りながら私を呼びました。そのあとに続く言葉が何だか分かっているので、返事をするのがすごく嫌だったのですが、そうすると彼女は不機嫌になってしまうから、それも面倒くさいので、私は仕方なく返事をします。
「何?」
「なんで先輩は卒業しちゃったのぉ」
「先輩だからよ」
「なんで私は先輩とタメじゃないのぉ」
「お母さんとお父さんに訊きなさい」
「なんで先輩がこの学校から居なくなっちゃったのぉ」
「卒業したからです」
……以下、エンドレス。
彼女の思い人の先輩が卒業してから数日が経つのですが、先輩の姿を学校で見ることが出来なくなって以来彼女はこんな感じなので、私の気持ちは曇り空です。もう少しで雨が振り出しそうです。晴れ渡りません。
決して彼女を心配しているとかではないのです。心配はしていませんがウジウジするのを止めていただきたいのです。誰が彼女の相手をするかって、私なのですから。今の彼女の相手は、面倒くさいことこの上ないのです。
「もう、そんなに好きならなんで告んなかったの」
私のその言葉に彼女は驚いたような顔をしました。その表情に私も驚いてしまいました。……もしかして、でも、え?
「その手が……その手があったのかあ!」
「ええ!?」
彼女は瞳を爛々と輝かせています。
告白という手段を思いつかなかった彼女に私は脱帽したい気持ちになりました。
「だから、先輩と接点がなかったのか……。……そうか、告れば良かったのか」
いろいろとずれてる気はいたしますが、彼女の顔に生気が戻ったことですし、良かったことにしましょうか。
……生気のない彼女の相手をつとめるにはなかなか骨が折れますからね。
end