定家葛


 私の手の指にマニキュアを塗る彼の手が、震えている。
 それが面白くて、つい笑ってしまうと、彼は私を睨んできた。

「緊張してんの?」
「仕方ないだろ、初めてなんだから」

 彼の言葉に、私は再び笑ってしまう。嬉しいのだ、彼の初めてが。
 彼の手で、マニキュアを塗られる。深い、けれど明るい青色。彼が好きな色だ。

「あー、難しい」

 彼はそう言って溜め息を吐く。

「終わったら、今度は私がマニキュア塗るよ」

 あなたの手に。そう続けたら彼はニヤリと笑った。

「じゃあ、どっちが上手く塗れるか勝負な」
「臨むところです」

 彼の手で、彼の好きな色に私の指先は染められる。その事にどうしようもない快感を覚えてしまう。
 真剣な表情で、でも不器用にマニキュアを塗る彼の姿をぼんやりと眺めながら、私は彼の指先に塗るマニキュアの色を選び始めた。


定家葛
花言葉 依存


彼氏とこんなことしたいよっていう妄想



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