エリカ


 黒く深い闇の中、私はもがく。もがく、もがく。
 上も下も左も右も、何も判らない。
 必死に手を伸ばし、辺りを探る。
 何も掴めず、何も見えず。
 それでも私が求めるのは、果たして何なのか。それすらも判らぬまま、暗い霧の中で、私は足掻く。
 光なんて1つも見えて来ない。聞こえるのは、甲高い笑い声。

「アハハハハハ!」

 誰の笑い声なのだろう。耳を傍たてる。
 何処から聞こえて来るのか皆目見当がつかなかった。
 若しかしたら私の直ぐ傍でかも知れない。然し、私よりずっと遠くから発せられて居るのかも知れなかった。

「アハハハハハ!」

 その声に意識を集中させる。馬鹿みたいに続くその高い声は、泣いているかの様だった。

「……あっ……あー!」

 私の口からは言葉が出せなかった。出せるのは乳児の様に母音のみ。
 私が発声している間は笑い声が止まる。そして、私が止めると今度は笑い声が再び始まる。
 ──黒く深い闇は、更に暗さを増していく。
 其れは、もう誰も受け付けないとでも言う様に。
 又其れは、誰かを受け入れるのを諦めている様に。

(此で、良いの?)

 私の問い掛けに、何処かの誰かが答える。

(良いのよ、此で。どうせ、誰も知りやしない)

 私は目を閉じる。
 甲高い笑い声だけが辺りに満ちる。

(……どうせ、誰も知ろうとしない)

 ──笑い声も、問に答えたのも、総て私自身。
 何故なら、私は何時でも孤独なのだ。

「アハハハハハ!」
(……どうせ、誰も見ようとしない)

 其れ故、私は声を張り上げる。

(どうせ、誰も何も感じやしない!)

 私は其れだけちっぽけな存在なのだ。
 きっと、存在価値なんで在りなどしない。

 私は黒く深い闇の中で、もがくのを止め、足掻くのを止め、只々目を閉じる。


エリカ
花言葉 孤独
また、副題で
イトスギ
花言葉 絶望

私にもよくわかんない、
むしゃくしゃした時に書いたやつ。



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