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チューリップ(黄)
見てしまった。ああ、見ないほうが絶対良かった。
私は取り敢えず、深呼吸してみる。しかしそれは、ただの溜息にしかならなかった。
「どうしたの?」
私の異変に気付いた隣の席の友達が、声をかけてきた。正直、そっとしておいて貰いたかったが、そういうわけにはいかないので曖昧に笑顔を向ける。
「ううん、なんでもないよ」
「でも、そういう顔してないよ。今だって、なんか泣きそうな顔してる」
ほっといてよ。そう言いたかったが、ぐっと堪える。
「ちょっと、ね。でも、大したことじゃないから」
友達は、ふうん、と返事をした。
「ま、良いけど。何かあったら相談してくれて良いからね」
「ありがとう」
友達が私から顔を背けた。私はほっと息をつく。
窓の外に目を向ける。先ほど私の胸をきつく締めた元凶はいなくなっていた。
まあ、それもそうか、と机に突っ伏す。もうすぐ学校が始まる時間になるのにいつまでも一緒に居るわけにはいかない。
私が見たのは、女の子と手を繋いで登校する好きな人の姿だった。
随分とあっけない終わりだったな、と私はもう一度深呼吸してみることにする。
チューリップ(黄)
花言葉 望みのない恋