夜埜様へ1000ヒット記念

最近ずっと気になっている事がある。妹が何故か俺を避けてくるのだ。

今朝だって一緒に学校に行こうと思って早めに支度を終わらせたのに、それより先に学校に行ってしまっていた、

こんな事がもうずいぶんと続いている。


 * * *


「なあーなあー」

俺の前の席な座っている友達が話しかけてきた。

「ん?」

「最近妹ちゃんと一緒に登校してねえの?」

「あー、うん、まあな」

今言われて一番キツい事をコイツは笑顔で訊いてきた。内心少しイラッとしたが、そんな事は顔に出さないようにする。

「じゃあ、もうそろそろお互い離れる時期かあ、兄離れ妹離れってか」

そう言うとソイツは何が面白かったのかアヒャヒャと笑った。

何だその笑い方は。てか本当に笑えねえ冗談だよ。

そしてソイツは更につけ加えた。

「やっぱ、いくら双子だからって離れる時には離れるよなあ。でも妹ちゃん可愛いからさあ、お前と離れたら男がウジャウジャ寄ってくるだろうなあ。俺もその一人だけど!」

ほんとにお前と血繋がってんのか分かんねえくらい可愛いもんなあ。そう言ってソイツはまたアヒャヒャと笑った。

俺はもう苦笑いしか出来なかった。



 * * *



最近避けている。自分の双子の兄を。

そのことは自分でもよく分かっている。でも避けずにはいられないのだ。


 * * *


私が兄を避け始めたのは多分二週間前くらいからだ。教室で次の授業の支度をしていると、廊下からよく騒ぐ女子たちの話し声が聞こえてきたのだ。

「ねー、あの人カッコ良くない?」

「あ、4組の人でしょ?」

「分かる、凄いカッコ良いよね」

「でもあれでしょ、よく朝とか女と一緒にいるし」

「あれ双子の妹らしいよ」

「え、全然似てないし!」

「お兄さんあんなにカッコ良かったらみんなに自慢出来るよねえ」

「でも正直妹可愛くないじゃん?」

「あーそれ言えてる」

「何でいっつも一緒に居るんだろうね」

「双子だからじゃん?」

その人たちの会話は全て私の耳に入ってきた。

その中の一人が私がいる事に気付いたらしく、口を噤んだ。廊下で話していた彼女たちは気まずくなってかそそくさと隣の教室に入って行った。

私はアイツと同じクラスじゃなくて良かったなあ、なんて考えていた。

それからだった、私が兄を避け始めたのは。

家でまで避ける事は難しいから、登下校は一緒にならないように気をつけている。


 * * *


今日も一人で学校から帰る。イヤホンから流れてくる音楽のおかげで何も考える事なく、ほぼ無意識に足が家へと向かう。

家まであと少し、という所まで来た時。腕をガシッと掴まれた。

驚いて振り返ると、そこには息を切らした兄がいた。

「や、やっと追いつ、いた」

はあはあと息を荒げた兄がそう言う。

私はまた前を向いて歩き出した。

「あ、ちょっと待ってくれるくらいしても良いじゃん!」

それすら無視して歩く私。

自分がした行動なのに、胸がチクリと痛んだ。

そしてそのまま家の中に入る。

兄は「待ってよー」なんて言いながら私の部屋までついてきた。

ドスンと床に学校の荷物をおく。


兄が口を開いた。

「何気にしてんのか知んねえけどさ」

兄を見やる。

「俺たちは俺たち、じゃん?」

そう言うと兄はニッと笑った。

その笑顔はいつもより幾分も切なそうで、だがそれを隠そうとする笑い方だった。

「バカじゃん、アンタ」

その笑顔を今見せる事は。

「そーですよ俺はバカですよ」

そう言うと兄は私の頭をポンポンと撫でた。

きっと、バカなのは私のほうだったのだ。






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