N様より

―夢を見た
私は知らない誰かに恋をしていた
怖いくらい綺麗でそれでいて儚い夢だった―
目を覚ますと見慣れた天井、嗅ぎ慣れたアイツの残り香
全ていつもと変わらないのに何だか無性に泣きたくなった
起き上がるのも億劫だったが無理矢理身体を起こすと、
「いったぁ〜…」
予想通りの痛みに苦笑が漏れる
いつからだろう
アイツとこんな関係になってしまったのは
いつからだろう
恋というものに恐怖を感じるようになったのは
本来綺麗であるはずのソレなのに、今では私を縛る鎖に他ならない
アイツの出て行った扉を見つめながら、
「私、馬鹿じゃん…」
そう思うのに止められない
不毛な関係であっても縋っていたい
他人はこんな私を嘲笑うだろうけど、
少しでいいから視界に入れて…
私を感じでほしい…
アイツの前でいつも冷静を装うのは私の小さなプライド
零れてしまいそうな言葉を必死に飲み込んで、
伸ばしてしまいそうな腕を必死に我慢して…
そんな私をアンタは知らないでしょ?
隣りに無造作に投げ捨てられたバスローブに顔を埋めた
(大丈夫…、まだ頑張れる)
震える掌に気付かないフリをして、
今日もまたアイツの居ない部屋を後にした


灯の中の闇を掴んで離さない


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