ゆずき様へ1万ヒット記念

突然だが、俺には好きな女子がいる。

その人は同じクラスで、大して目立つ存在ではないが笑うとメチャクチャ可愛いのだ。

俺は彼女と話すことなんかとうてい出来そうにない。チキンだろうが小心者だろうが、もともとの性格だから仕方ないのだ。

それに加えて、どうやら俺の顔は他人から見るとかなり怖いらしい。視力が低くて、目を細めないと見えないだけなのに。いつも眉を寄せてると友人に言われた。

そんな俺だが、今日たまたま一緒に日直になってしまった。誰と、なんで愚問だ。俺がこんな話をするのに彼女以外の誰がいる。

そして今は放課後だ。これなんて日直の特権じゃないか? 教室には誰もいない、傾く陽、彼女と2人きり。

俺の目の前で日誌を書いている彼女を抱き締めたい。そんなことを思ってしまう俺は、変態なのだろうか。いや、断じてそんなことはないだろう。男ならみんな通る道だ、多分!

彼女を見ながらそんなことを思っていると、彼女の目には涙が溜まっていた。日誌を綴る手は震えている。

「ど、どうした?」

何故彼女が涙目になっているのか分からず、どもってしまった。

彼女は首をフルフルと振った。

「な、何でもない、ですから……」

返ってきた言葉に、俺の頭に疑問符が浮かぶ。何で敬語なんだ?

「何でもないって……何でもないなら、何で泣きそうなんだ?」

彼女の手が止まる。

「なあ」

俺がそう催促すると、彼女の肩がびくりと震えた。

これは……もしかしなくても、怯えられている?

「ほ、本当に何でもないですから……ただ、ちょっと怖いだ、け……っ!」

彼女は慌てて自分の口を手で塞ぐ。その仕草は、言うつもりなどなかったのだと言うようだった。

「……そう」

もう、彼女を見ることなど出来なかった。彼女を泣かせた原因が自分だということが許せなかった。怖いと思われるような顔に何故生まれたのだろう。

──失恋だ。そう思った。

「え……怒らないの?」

彼女はキョトンとして俺を見ていた。俺はその言葉に、自嘲するしかなかった。

「何で怒らないといけないんだ。アンタは本当のことを言っただけだろ? それにこの顔が怖いことなんか知ってる」

彼女は目を見開いていた。俺はそれで良い、と思った。何故なら、その方が簡単に諦めがつく。

夕日が細長く教室に差し込んで俺たちのシルエットを作っていた。

その時彼女が何を考えていたのかなんて、俺には知る術がなかった。



  陽がとまる


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