せがむ
今日ものんびりお散歩、お散歩。
何か面白いことないかなあ、なんて思いながら町の様子を眺めていると、煙草の匂いが漂って来た。
「みゃ?」
猫の嗅覚には煙草はキツい。少し不快に思い、見上げる。
「あ?…猫か」
黒い隊服に、猫から見ても男前なその容姿。この人、確か、真選組副長だったっけ。…なんか、エサくれないかなあ。持ってそうだなあ、と思ってすり寄ってみる。煙草の匂いは気にしない事にして。
「にゃあ」
〈何か食べるものちょうだい。〉
なんとなく通じたのか、副長さんは煙草を潰した。
「…んだよ。エサでも欲しいってか?仕方ねェな」
くれるのかな?副長さんだから、期待しちゃうぞ。
懐から何かを取り出した。
「!」
ソーセージィィィ!べリッと包装紙を外したそれから匂ってくる美味しそうな魚肉ソーセージ!なんでソーセージを持ってるのかはさておき、副長さんの足に前足を置き、もう待てない、と全身で表す。
「にゃーにゃー!」
「おい、ちょっと待て。すぐやるから」
すると、なぜかもう一度右手を懐にいれる。もしかして、もう一個くれるとかっ!?ぴんっと尻尾をたてる。しかしそれは、クリーム色と赤色のコントラストの容器。ソーセージではない。ソーセージにそれをぶちゅぶちゅ、とぶっかける。私はそれを固まって見ていた。
「ほらよ」
私の大好きな魚肉ソーセージは、見る影もなくクリーム色のものに覆われている。匂いだって、なんか…強烈。目の前にそれを出される。
「に"…」
後ずさり。どうしてこうなった…!!ソーセージ!ソーセージが…!そのままで良かったのにィィ!
「?どうした。真選組ソーセージ土方スペシャルだ。さらにうまくなったぞ」
どこがだァァァ!猫だよ!私猫!これ猫大丈夫なの!?たとえ大丈夫でも見た目でアウトだよ!!
なんだこの人!!
「にゃっ!」
「あ、おい猫っ!」
さよなら私のソーセージ!ごめんなさい副長さん!私には無理だわー!
猛ダッシュでその場から逃げたのだった。