帰宅して

「ただいまー」
「にゃんこ〜〜〜!!」


万事屋に帰るなりタックルしてきたのは言わずもがな神楽ちゃんだ。よろけて激しく咳き込む私を気にもとめず、抱きついたままきらきらした瞳を向けてきた。


「将ちゃんとどうだったアルか?ちゃんとがっぽりもらってきたアルか?」
「いろいろ間違ってるからね神楽ちゃん!銀さんってば、何を吹き込んでるのよ…」


無邪気な笑顔で何を言い出すかこの子は。すると神楽ちゃんは一気に冷めた顔になり、ため息とともに私から離れた。


「なんだヨ、手土産もないアルか。見損なったアル」
「お土産はあるけど…お団子」
「大好きアルにゃんこ〜〜!」


変わり身早いな!いやかわいいけどね!お団子が入った紙袋をひったくると、きゃっきゃと喜んで中に走って行った。それと入れ替わりで新八くんが出てきた。


「おかえりなさいにゃんこさん。どうでした?」
「すごく楽しかった!お話も弾んだし。あ、銀さんいる?」
「いますよ。寝てますけど起こしちゃっていいですよ」


靴を脱いで入ると、ジャンプを顔に乗せてソファで寝ている姿が見えた。いつものことだ。私はくすりと笑って新八くんに首を振った。


「せっかくお昼寝してるのに、そんなの悪いわ。ならいいよ、後でで」
「銀ちゃーん!にゃんこが帰ってきたアルよー!お土産くれたアルよー!!」
「土産ェ!?がっぽり持って帰ってきたんだろうな…って団子かよ!いや嬉しいけど食べるけど!!」
「…起きたみたいですね」


しかし起こすまでもなく神楽ちゃんの声で飛び起きた。そんなに現金狙ってたの…ただのお茶会って言ったのに。確かにこのごろお仕事なくて暇そうだけど。


「お、にゃんこ。おかえり」
「…ただいま銀さん」


あくびをして、ごしごし目をこする今だ眠そうな銀さんもかっこいい…!!私が返事をするまでの3秒の間に心の中でそんな叫びをしていたのだが、なんとか持ちこたえた。
そして、将軍様にアドバイスしてもらったことを実行する決意をした。
ソファに座り直して神楽ちゃんと団子の取り合いを始めた銀さんにゆっくりと近づく。


「銀さん」
「んだよお前も団子欲しいのか?お前は食べてきたからもういいだろうが!」


ぽすん。なでなで。
私は銀さんを撫でた。
私を見上げた銀さんのふわふわした銀髪に手を置き、そのままゆっくりと丁寧に。ぱちくり、銀さんは私を見つめる。私は緊張が伝わらないように、なんでもない風を装って微笑んだ。


「私を拾ってくれてありがとう、そしていつもありがとう、のしるし」
「………これが?」
「うんっ」


なでなで。なでなで。そうしているうちに、銀さんは視線を彷徨わせた。どうしたんだろう、もっと喜んでいいのに。頭を撫でられると幸せになる、よね?


「なんかペットと飼い主みたいアル」


神楽ちゃんが団子片手にププッと笑い、銀さんが私の手を払った。


「いつまで撫でてんだ、銀さんは犬か猫じゃねェぞ」
「え、ごっ、ごめんなさい!私、撫でられるの好きだから。銀さんも喜んでくれると思ったんだけど…」


手を慌てて引く。やっちゃったかなとすごく気持ちが下がっていく。そういえばそうだ、私は猫だったから撫でられるのが好きだったわけで。人間だし男の人だし、屈辱だったかもしれない。


「あ、いや…銀さん怒ってるんじゃないから。でも男を撫でるモンじゃねェだろ…あー、もう団子やるから!そんなしょげないの!!」


なぜかほんのり耳を赤くした銀さんがそう早口で言ってから団子を一つ押し付けてきた。よくわからないけど、怒ってるんじゃないんだ、よかった。どっちにしろ間違ったことをしたらしいけど。


「撫でられるの好きって、銀さん、にゃんこさんを撫でてるんですか?」


多少驚いたように新八くんが聞いた。いや、したことねェけどと銀さんが答えたのを聞いて、はっとした。猫のときのこと考えてた!あああいろいろやらかしてる。やるんじゃなかった…!何て言おう何て言おう、と混乱した結果。


「えっと、そう、将軍様とか!撫でてくれたから!」


あああ苦しまぎれに嘘言っちゃってェェェバカ!私のバカ!将軍様ごめんなさい切腹しますゥゥゥ!!
そうなんですねと頷く新八くんを見ていると罪悪感に駆られてどうしようもないのでお団子を食べることで誤魔化した。もぐもぐしながら、ああそういえばと飲み込んでから口を開く。


「また来週、将軍様と会うことになったわ。同じ所で」
「またァ?」
「もしかしてにゃんこと将ちゃんデキてるアルか?」


ニヤニヤして神楽ちゃんがピッと小指を立てる。私は青ざめて最高速度で首を振った。


「ち!!違うよ!!そんなの恐れ多いわ…!!本当に友達みたいな感じで…!!ああでも友達っていうのも恐れ多いけど!!」
「ふ〜ん?まあいいけどナ!イチャラブしてくるヨロシ!」
「違うってば神楽ちゃんー!!」


もげそうなくらい首をブンブンと振って、くらくらしてよろめく。そして、そういえば撫でた結果をなんと報告しようかと頭を悩ませるのだった。


back < | >
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -