差し伸べられた手

人間になれたのは嬉しいけど。これから私、どうすればいいんでしょう。
雨の中、裸の女が座り込んでるって、はたからみればかなりおかしい。でも、行くあてもなく、どうしたらいいのかわからない。そして、寒い。一糸纏わぬ体に冷たい雨が打ち付け、ぶるりと震えた。

途方に暮れていると、背後でぱしゃりと水の跳ねる音が聞こえた。誰かが来たのだ。


「ったくよー、ついてねーなァ。雨の中わざわざパチンコに出向いたってのに惨敗かよ。あーあ…」


この、声は。おそるおそる、振り向いた。


「………ぎ…」


銀、さん。
死んだ魚のような目と視線がかち合う。銀さんはピシリと固まり、いきなりぶはっと吐血した。


「ちょっ…何この状況。とりあえず神様ありがとう!…じゃねーよ俺!!」


銀さんだ。本当に。あまりのタイミングの良さに、にわかには信じられない。ぼーっとして、赤くなって動揺しながら駆け寄って来た銀さんを見つめていた。


「オイどうしたお前!何があったんだよなんで裸っ!?つーか、ずぶ濡れだぞ!」

「ぁ…」


なんとか、言おうと口を開くも、寒いのと動揺と混乱とでうまくしゃべれない。身じろぎしていると、銀さんは焦りながらも手を差し出した。


「と、とにかく、俺の家そこだから、来い。立てるか?」


ああ、やっぱり優しい。
溢れそうになる涙を堪えて、かろうじてこくんと頷き、差し出された手を取った。


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