出水先輩らの動き、そして敵の人型近界民の位置を狙撃ポイントから把握する。準備はできた。出水先輩は戦闘開始の合図のように、片手ずつ違うトリオンキューブを用意する。

「メテオラ、プラス、バイパー…トマホーク」

ドドッ、と放った弾は通常の変化弾と同じように弾道を変えて敵へ狙いを定める。すると炸裂弾の効果を発揮して爆発した。思わず目をこすって二度見した。今の何ですか!!初めて見た技なんですが…!まさか弾を合成したとでもいうのだろうか。そんなことできるんですか。すごすぎる。
奇襲をかけた次は、緑川くんがグラスホッパーを駆使して相手に陽動をかけ、その背後からは米屋先輩が槍で攻撃を仕掛ける。即興とは思えない完璧すぎる連携に、私入る隙なんて見つからないんですけどと思ったが、まずはここで畳みかけるべきだと判断してイーグレットの引き金を引く。

ガキンっ!!
「!狙撃もきたか」

油断をついたはずが、しっかりシールドで防がれてしまった。テレポーターをすぐさま起動すると、まもなくしてぎゅおんっとすごい音とともに、ついさっきまでいたビルの屋上が崩壊する。さーっと青ざめてその火力のすさまじさと速射性の高さを思い知る。テレポーターがなかったら即終了だっただろう。
ぱっと視線を敵に戻すと、今度は頭上に舞い上がっていた。ええええ飛べるのおおお。そこから雨のように弾丸が降るさまはもはやチート。あれも黒トリガーなんじゃないですか。

『瑠花ちゃん瑠花ちゃん、緑川くんが一対一になっちゃったよー。強化視力使ったら、壁抜き狙撃とかできないよね〜』

国近先輩からそう言われ、一瞬戸惑ったが目を凝らせば緑川くんが建物の中で対峙しているのが視えた。壁抜き狙撃は東さんの過去の記録で見たことがある。見よう見まねではあるが、やってみるしかないとアイビスにトリガーを変える。

「み、視えるので…いけると思います!」
『え、ほんと?地形データなしで?本気じゃなかったんだけど、さすが当真くんの弟子。よろしく〜!』

いや壁抜きなんて初めてですが…!よく考えたらさっき黒トリガーを狙っていたときも建物の中だったし、できるはずだ、と自分に言い聞かせてスコープを覗く。煙幕のように煙が立ち込めて、緑川くんが敵の足をスコーピオンで落とした。敵がバランスを崩し片膝立ちになる。今だ、と思って引き金を引く。煙がまだ晴れない中、腕に命中したのを確認した。

『命中〜!すごい!片腕落とした〜!』
「よ、よかった…!!」
『ちょっと焦ったところをうまくついたね!』

緑川くんが攻めるが建物ごと派手に反撃され、ギリギリで回避して外へ出る。敵はというと、片腕片足なくしてもまだぴんぴんして上空に舞っている。えええ。いつ倒れてくれるのでしょうか。狙撃位置を変えるため走っていると、東さんの声が内線から聞こえてきた。

『今が攻め時だ、ガンガン押すぞ。B級各員人型を包囲しろ』

東さんいわく、警戒レベルを引き上げた今、反撃の精度は上がったが余裕がなくなって隙が生まれ始めているらしい。

『数の優位が活きる場面だ。ばらけてやつの意識を散らせ、まとまってると一発でもっていかれるぞ』
「「了解!」」

東さんの的確な指示のもと、皆の動きが変わる。敵の飛行速度が上がったのが見てわかった。少し焦りがあるのだろうか。こちらの思うつぼである。私もイーグレットを何発か撃って敵を追い込む。すると、敵はいきなり低空飛行になった。射線を切るためだろう。
ちょうど敵の飛行の方角にいた隊員が狙われる。しかし、それはこちらの作戦通り。待機していた米屋先輩がビルから飛び降りた。

「なるほど。こうして敵を呼び込むわけだな。よく理解できたよ」

ぐるりと体の向きを変え、弾トリガーを構えてにやり、と敵が笑ったのが視えた。つまり、相手はこちらの陽動をわかっていたということだ。しかし、ほぼ同時に米屋先輩が落下しながら不敵に笑う。

「……と、思うじゃん?」

まわりの隊員がシールドを米屋先輩に一斉にはる。何重にも分厚くなったシールドで、敵の弾を防ぐ。一枚じゃあっさりと割られてしまうシールドでも、何重にも重なることで段違いの強度になるのだ。
私は遠すぎて祈ることしかできない。でも、この祈りさえもきっと、無駄なんかじゃなく、力になる。なぜなら、それは。

「こっちはチームなんで。悪いな」

シールドを割られながらもそのまま押し通し、ついに敵のトリオン中枢器官を貫いたのをしかと見届けた。私たちの勝利の瞬間だった。

「…やった…!!」

イーグレットを離してへにゃへにゃと座り込む。全身の緊張が解ける。私も今回は、少しは役に立てたようだ。完全に終わった気分で様子を見ていると、米屋先輩の周囲に釘のようなものが生えてくるという謎の不意打ちにあっていた。しかしいとも簡単に回避する米屋先輩。一瞬心臓が止まるかと思って、ほっと息を吐く。小さなゲートが開き敵が迎えに来た仲間とともに逃げてしまったようだが、とりあえず撤退させたということで一件落着したようだった。

「お、おわったんです、よね?」
『おう、瑠花!おつかれ〜』
『おつかれ瑠花ー!!』
「出水先輩米屋先輩、皆さんお疲れ様でした…!!」
『蒼井先輩、さっき壁越しの援護狙撃ありがとうございましたー、壁抜きなんてビビりました!』
「あ、緑川くん…!うまくいってよかったよ、初めてだったんだけど…」
『初めてで当てんのかよ、お前も立派に変態狙撃手だな!』
「ええっ、へへ変態…!?」

今の絶対褒められてない、むしろけなしてる…!!と少し落ち込んでいると、東さんの笑う声が内線から聞こえてきた。

『はっはっは、いやあ褒めてるのさ。正確すぎるくらい正確ってことだ。師匠の技術をしっかり受け継いでるな。お疲れ蒼井』
「あ、東さん…お疲れ様でした…!人型近界民、倒せましたね…!!」
『ああ、だがまだ終わってない。もうひと踏ん張りがんばってくれ。』
「了解です…!!」

東さんにそう言われて気合を入れなおす。そうだ、一人倒したところで、まだ全く戦いは終わっていない。すると東さんが最後に付け加えた。

『本当、お前が来てくれて助かったよ。お前も今度出水たちと一緒に何かメシおごらせろ』
「ええっ。そ、そんな、いいです申し訳ないです…!!」
『なんで断ってんだよ瑠花!焼肉おごってもらおうぜ焼肉!』
『行こうぜ焼肉〜〜』
『蒼井先輩、行こうよ行こうよ!』
「えええええ…!!」

東さんのおごりで焼肉なんて、そんな恐れ多いこと!!と思って必死に断っていたが、数度目には根負けでわかりましたと返事を返してしまっていた。ああ、私あのお三方ほど大したことしてないのにいいのだろうか…。
とりあえず、返事もそこそこに次の防衛へ動いたものの次はどこへ行けばいいのだろうと路頭に迷った挙句、近くのトリオン兵を退治することにした。しばらくそこで退治に勤しんでいると、内線で聞き慣れた声が私の名前を呼んだ。

『瑠花ー、こちら当真』
「!とっ当真師匠!!」
『暇なら基地屋上まで来てくんねえ?仕事だぜ、弟子さんよ』
「…!了解です!」

師弟揃っての仕事は初めてだ。不謹慎ながらも、気分が高揚する。すぐさま移動を開始した。


流星を手繰り寄せて


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