本日は今までで一番胃が痛い防衛任務である。今までで、といっても、まだ数えるほどしかないが、その中では間違いなくダントツに顔合わせしたくない。なぜかというと。

「君が蒼井だな!今日はよろしくな。隊長の嵐山だ!」
「…木虎藍です。よろしくお願いします」
「時枝充です。僕は同い年かな。がんばろうね」
「ってことはオレとも同い年じゃん!佐鳥賢、サトケンでもいいよ!よっろしくー!」
「オペレーターの綾辻遥です〜。よろしくね、瑠花ちゃん」

ぎゃああああ!!テレビでよく見る人たちー!!眩しい!笑顔が眩しい!テレビで見るよりかっこいいしかわいいし美人…!!どうしよう目が合わせられない!直視できない!と一人でパニックになっていると、嵐山さんから頭にポンッと手を置かれ、そのまま頭を撫でられる。

「大丈夫だ、怖くないぞ〜。よーしよしよし」
「何やってるんですか」
「蒼井がパニックになったときの落ち着け方だって。当真さんから教えてもらったらしいよ。よく分かんないけど…お前らと合同はあいつやばそうだからな、って」
「犬みたいね」
「嵐山さん完全に犬感覚でやってるね」

時枝くんと木虎藍ちゃんから犬みたいだと言われてしまったが、ちょっと気持ちが落ち着いたのは事実です。ううう、情けない。情けないがあなたたちのそのオーラが凄いんです!!

「す、すいません…お見苦しいところを…。ええと、狙撃手の蒼井瑠花です……」
「ふふ、いいのよ。落ち着いた?」
「す…少し……」
「効果あるんだな、当真直伝の技!」

にこにこする嵐山さんはテレビでいつも見ているものと変わらない爽やかさ。あ、サインほしい…。なんて思いながら、もらった緑茶とお饅頭を食べる。

「それこの前の撮影でもらったお饅頭なんだけど、美味しいでしょう?いいとこのお饅頭なんですって〜」
「そ、そうなんですか…」
「じゃあ蒼井がそれ食べたら防衛任務行こうか」

うわあああ私今からあの嵐山隊と任務ううう!無理だどうしよう帰りたい!お饅頭の味をあまり感じないままに口に詰め込み、外へ向かう。

「じゃあ、行くぞ!任務開始だ!」
「「はい!」」

今までになく緊張しながらバッグワームを着る。内線でいきなり聞こえてきたのは佐鳥くんの声だ。

「蒼井だいじょーぶ?」
「うっ、うん」
「そんなに怖がることないって、このさとりがいるからさ!楽に行こー楽に!」

ううう優しい。優しいが、今のところ恐怖で立ちすくんでいるのではなく、あなたたちと合同だという緊張でいっぱいなだけなのだが。なんだか申し訳なくなりながら、気合いを入れ直す。とにかく役目は果たさなければ。どうこう言っている場合じゃない。

「とりあえず…近界民が出たら、蒼井は佐鳥と一緒に僕たちの援護を頼むよ」
「りょりょ了解ですっ」

時枝くんの声が聞こえて、内線だとは知りつつもこくこくと頷く。距離をとりつつ、嵐山さんたちの移動に伴って動く。しばらく様子の変化はない。日が暮れて行くだけだ。門がこのまま開かなかったらいいのになあ、といつも思っているが、そんなにうまくはいかない。

『門発生、門発生。位置を送るわ』
「やっときたあー!」
「佐鳥、不謹慎。蒼井、準備はいい?」
「は、はいっ!」

イーグレットを構えつつ、ぽっかりと浮かんだ黒い穴から出てくる近界民を見つめる。1、2、3。モールモッドが1匹と、バンダーが2匹。

「私がモールモッドを」
「じゃあ2匹のバンダーは俺と充でやろう。賢、蒼井、援護は頼むぞ」
「了解です」
「オッケーです!」
「了解です……!」

すぐさま戦闘を開始した木虎藍ちゃんと嵐山さんと時枝くん。私はバンダー撃破の援護。バンダーは砲撃専門だったはず、動きは遅いから2体いるからって慌てないことだ。嵐山さんと時枝くんはさすがの連携プレーで、確実にバンダーを削って行く。私は二人の動きを見つつ、近界民の急所にイーグレットを構える。当真師匠の訓練を思い出す。当たらない弾は、無理に撃たない。当たると思った瞬間を逃さず、確実に。

ドン!
「!バンダー撃破」
「蒼井、良くやった!」

弱点の目にうまく当たった。ホッと息を吐き出す。お二人が引きつけていたから、隙だらけで撃ちやすかった。

『!警戒、バンダーの砲撃!』

綾辻先輩の声が聞こえる。そうだ、二体いるんだった。完全に私の方を向いている。ああこれはピンチ。シールド、と叫ぼうとした瞬間、違う方がチカッと光る。
ドドッ!

「へっへーん、こっちだよーっ」

佐鳥くんが攻撃してくれたんだ。助かった、と遠く離れた佐鳥くんを視たとき、思いがけない光景に目を疑った。佐鳥くんは両手に片手ずつイーグレットを構えているのだ。

「りょ…両手に……!?」
「うわ、やべっ」

今度はバンダーは佐鳥くんを狙った。今度こそ光線が放たれる。
なんとか直撃はしなかったが、衝撃をくらう佐鳥くんが、二つのイーグレットを構えた。

「こんにゃろっ!」

ドドッ、と同時に二つのイーグレットが火をふく。直後バンダーに視線を向けると急所に綺麗に当たっていた。ええええ今の何!?

『目標沈黙!バンダー撃破』
「よっしゃ!決まったぜ、オレのアクロバティックツインスナイプ!!見た!?とっきー!」
「はいはい、木虎は?」
「こっちも終わりました」
『モールモッドもたった今撃破確認したわ』

ポカンとしている間に話は進み、私だけが取り残されている。えええ、皆さん今の見慣れてる感じですか……?衝撃的な光景を見て私が動いていないのに気づいた嵐山さんが声をかけてくれる。

「どうした、蒼井。大丈夫か?」
「は、はい……佐鳥くんのさっきの…びっくりして…」
「おっ!?俺の必殺ツインスナイプに見惚れちゃった感じ!?」
「うん……!!す、すごいね今の!片手ずつ撃って、それにあんな体制からなのに…命中するなんて!」

興奮気味に食いつくと、内線の佐鳥くんの声がちょっと狼狽えているのが分かった。

「え、マジ?そんなに?なんか照れるな〜…」
「いつもぞんざいに扱われてるもんね。こんなに素直に褒められるの初めてじゃない?」
「良かったな佐鳥!」
「へへへ…教えてあげようか、蒼井っ」
「えっ、でも私出来る気しないよ、無理だよ…!あんなの初めて見たよ!」
「そりゃそーだよ、なんたって唯一無二のツインスナイパーですから」

自慢げな声に、思わずおおー!と歓声を上げる。褒めすぎじゃないですか、と木虎藍ちゃんが言うが、全くそんなことはない。当真師匠でもこんなことは出来ないのではないだろうか。

「すごいなあ、神業だね…!」
「かっ神業!?…ま、まあ、それほどでもあるけど〜」

イーグレットを片手で構えることがすでに無理だ。さらにあんな体制で。当たることさえすごいのに、弱点を狙い撃ち。同い年なんて考えられない。ツインスナイプなんて神業はできないけれど、私も頑張らなくちゃ、とやる気に満ち溢れた私なのだった。


まばたきの度に侵食


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