「蒼井と少し話がしたい。ちょっと借りていいか」
「お?いいっすよー」
「…ええ?」

風間さんに模擬戦終了後にそう言われた。当真師匠は太刀川さんたちと話している最中で、私のことはさらりと流してまた話に夢中になってしまった。風間さんに手招きされて少し離れたところまで来る。ど、どうしたのだろう。やっぱり撃ちすぎて怒られるのではなかろうか。ひいいい。こわい。先に謝ってしまおう。

「すっ、すいませんでした!」
「…?何がだ」
「あ、あれ…?その、撃ったこと…怒ってらっしゃるのでは、と…」
「なぜ怒らなければならない?確かに狙撃をくらったのは久しぶりだが、だからこそ、逆だ」

ええと、逆、とは。ぱちくりとまたたきすると、風間さんは率直に言おう、と切り出した。

「お前の目が欲しくなった。風間隊に来ないか」
「………え?」
「それとももうどこの隊に入るかあてがあるのか」

あてなどないが、そもそも隊に入ろうとさえ思っていなかったのだ。首を振ると、そうか、と頷く風間さん。

「じゃあ問題ないな、うちに来い。」

はっきり言われ、目を白黒させた。
風間隊に誘われたああああ!?




「とっとととと当真師匠!!どっどどどうしましょう!?」
「落ち着けー、落ち着けー」

返事ができないでいる私に返事はいつでもいい、ゆっくり考えてくれと言って去った風間さん、私は足元がふらつきながらも太刀川さんたちと別れて帰ろうとする当真師匠のもとへ全速力で駆けつけてすがりついたのだった。落ち着けません!!無理です!!頭が混乱している。とりあえず食堂まで来てお茶を飲んで落ち着けようとしてみたが、無理だ落ち着くわけがない。

「にしたってなあ、まさか風間隊に勧誘されるとはさすがの俺も思ってなかったぜホント」
「なんでっ…私が…!?」
「カメレオン通用しないってことは、隠密戦闘の天敵であると同時に、姿が見えるんだからレーダーなしで普通に狙撃のサポートができるってことでもあるからなあ。瑠花が入れば風間隊無双じゃんかよ」
「はっ、入りませんよ!入れませんよ…!!」
「なんだ、入らねーの?」

意外そうにぱちくりする当真師匠にこれでもかと首を振る。無理ですそんな、B級入りたての一介の狙撃手には荷が重すぎます!!今日の初模擬戦でこんなにボロボロだったのに!!

「でもいつかはどっかの隊に入らねーといけねーんだぜ?」

いきなり当真師匠は現実を突きつけてくる。実は気になっていたのだ、防衛任務って隊に所属していない状態だとどうなるのだろうと。

「それ、は……ひ、一人で活動するっていうのは…」
「狙撃手がソロってのは無理だろ。これから防衛任務の時は、どっかの隊に日替わりで入る感じになると思うぜ」
「ひっひっひひ日替わり!?!?」
「お前やっていけんの?」
「む!り!で!す!」
「必死すぎんだろ」

日替わりで!見知らぬ隊に!入る!?ただでさえ今はまだ全く出来ない攻撃手のサポートを毎回アウェー感をひしひしと感じながらこなす!?くらっと目眩がしたのはきっと気のせいじゃない。そこでいいことを思いついた。パッと顔をあげて当真師匠をすがるように見つめる。何が言いたいのか当真師匠はすぐに察したようだった。

「………冬島隊は無理だぞ、トラッパーに狙撃手で既に完成しちまってるんだもんよ」
「も、も、もうひとり…狙撃手…いたら…便利かも…」
「残念だが俺様で十分手は足りてるんだなー」
「うううう………す、すみません…」
「ま、俺もどっかの変なチームに愛弟子を取られるわけにゃいかねーし、入れたい気持ちはあるけどよ。ウチの隊長は、いらねーって言いそうだな」

当真師匠ぉぉぉ。私を見捨てないでくださいぃぃぃ。と思ったが、あまりのワガママを言ったと気づいて一瞬で帰りたくなった。

「それでいくと、風間隊はかなり好物件なんじゃねーの?サイドエフェクトを活かせるわけだし、何より全員知ってる奴ら、さらにあいついるだろ。菊地原」

項垂れていたが、ピクリと反応する。そ、そうか。菊地原くんがいるんだ。風間さんはまだ少しこわいが、歌川くんはもう友達だし。オペレーターには会ったことがまだないが、優しくてとても有能だとは聞いたことがある。…いやいやでもでも。でも!

「でっでも!無理です!まだB級入りたてでろくにサポートも出来ないんですよ…!?」
「そこはまた練習しまくりゃ良いわけだろ」
「…そ、そうかもしれませんが…!えっ、か、風間隊って、何位でしたっけ…?」
「A級3位」
「無理です!!」
「はえーよ」

どう足掻いても無理です!お断りする決意を固めたところへ、美人な方がやって来た。この方は、あの本部長補佐の沢村さんだ。

「お話中ごめんね、今いいかしら?蒼井さん」
「はっ、はははい!」
「B級に昇格おめでとう。もう入るチームとかは決めたの?」

タイムリーすぎる。青ざめながら、決めてませんとか細い声で答える。それじゃあ、蒼井さんが防衛任務があるときは日替わりでどこかの部隊に入ってもらうことになるのだけど、と沢村さんは説明しだす。当真師匠をちらりと見ると、悟ったような視線をよこされた。こ、これは。まさか、私の死亡宣告が…早くも来たのか……!?

「初の防衛任務は、三輪隊と一緒よ。いきなりA級チームなのは申し訳ないけど、古寺くんが明日用事があるらしくていないから、ちょうど良いってことになっちゃった。明日の夕方だから、よろしくね」

ぎゃああああ!!!


いざよう睫毛


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