いきなり緊急出動です
その日は、なんて事ない平凡な日だった。
あたしはいつも通り、トシと副長室でお仕事だった。


「はい、トシ。コーヒー」

「おう、さんきゅ」

「今日は意外と書類少ないね?」

「まあな。ま、どうせまたすぐ増えるだろーよ。…ちょっと休憩すっか」

「よっし、休憩休憩!」


襖を開けて、大きく伸びをする。トシも煙草を吸うため、外に出た。
なんだか、この頃平和だなあ。そう思ったときだった。


「副長っ!副長補佐!事件です!!」

「…休憩なんて出来そうにねーな」

「どうしたの、ザキ」


ずっと走って来たのか、はあはあと膝に手をつき深呼吸を繰り返すザキ。嫌な予感しかしない。


「攘夷志士が暴れ出してて…!!一番隊が行ってます。かなりの人数いるそうです!」


それを聞いたトシは、舌打ちを一つして、的確に冷静に指示を出す。


「わかった。手ェ空いてる隊士全員に出動命令だ!パト出せ、俺らも出るぞ理御!」

「了解!何人いるの!?確か、今半分の隊士が遠方に行ってるわよね!?」

「はい!少ない人数で止められるかどうか…!」


そうなのだ。今、真選組の半数が遠方に出勤している。そのせいで今動ける隊士は半数以下。
状況はかなり過酷だった。負ける可能性だって、ある。それでも、やるしかない!!


「止めてみせる!!」


あたしが力強く言うと、ザキも頷き返した。
腰の刀を確認し、すぐにパトカーに乗る。運転はトシだ。助手席にあたし。後ろにザキ。しょっぱなから荒っぽい運転だけど、こんな状況なんだし仕方ない。


「無線使うわよ!」


ひったくるように無線をとると、今現場に向かっている全ての隊士に告げた。


「全ての隊士に告ぐっ!全速力で現場に急げ!被害を最小限に抑えて!数で負けてても怯まないで!」

「「はい!」」


現場につき、パトカーを出ると、既にそこは戦場と化していた。
今回のは規模が大きかったらしい。辺りを見渡せば、こちらの二倍の数の攘夷志士。既に一番隊が乗り込んでいたが、あまりの数の差に苦戦し、押されていた。


「真選組よ!!御用改めである!!」

「理御っ!」

「総悟!」


ぞろぞろとパトカーが着き、降りた隊士達がすぐに戦い出す。あたしの元へ、既に血まみれの総悟が駆け寄ってくる。


「遅ェ」

「ごめん。これでも急いで来たのよ。怪我大丈夫?」

「返り血でさァ。大丈夫でィ」

「一般人は避難させた?」

「出来る限りは避難させやしたが、残りがいないとは限りやせん。つーか、隊士はこれだけかィ?」

「うん…ちょうど今、半分の隊士が遠方に行っていて…多分、奴らこの日を狙っていたんだと思う」

「だろうな」

「とにかく、やるわよ!」

「理御」

「まだなんかあんの!?」

「無茶すんなよ」

「が…頑張る!」


ダッ、と走り出す。


キィン、ガンガン!ドォオオン!


銃声と刀の音と叫び声が鳴り止まない。ふと立ち止まると、あっという間に囲まれた。


「オイオイ、ねーちゃん何でいんの?危ないぜェ」

「うらぁあ!!」


女だからって甘く見てもらっちゃ困るのよね!
あたし目掛けて振り下ろされた刀を全て自分の剣ではじき、相手がよろめいた隙に懐を斬りつける。どさどさっと倒れて行く同志をぽかんと見ていたほかの奴ら。


「強え…!!」

「こいつ、女のくせに…っ!!」

「おい!!この女、あの真選組副長補佐、天海理御じゃねえか!?」

「ご名答ッ!!」


どんどんと斬り倒していく。時には爆弾を投げつけ、息を整えた。
あたしも少しずつ傷が増えて行き、ぜえぜえと息が切れる。


「はぁ…はぁ…よし、あとちょっと…」


見渡すと、もうあと少しで鎮圧出来そうにあった。ただ、隊士も立っている人は少ない。死んではいないよね…?手当てもしないと、と考えながら総悟やトシ、そして出動していた近藤さんと合流した。


「みんな!大丈夫!?」

「理御!」

「理御ちゃん!」

「生きてやしたか」

「勝手に殺さないでよ!!」


みんな傷だらけ。でも、あと少しなのだ。ここで力を緩める訳にもいかない。


「もう少しね…!」

「でも、こっちの動ける人数ももう少しだ」

「俺らだけでもイケるだろう」

「土方さんは休んでてもいいですぜィ」

「てめーが休んでろバーカ」

「喧嘩は後にしてくれる?」


今はそれどころじゃないっつーに。そうこうしているうちに、残りの志士が再び攻撃体制に入った。トシ達は刀を構えて迎え撃つ準備をする。あたしも同じく刀に手をかけたけど、ふと何かの気配に気がついた。


「…誰かいる」

「あ?」

「ちょっと行ってくるわ」

「なにが、おい理御っ」


その場から離れて近くの路地裏へ入ると、そこには一人の男が塀に座っていた。
片足立てて片足を投げ出し、キセルを手に持ち、片目は包帯。女物の着物に、射抜くような鋭い眼差し。そして、溢れ出るオーラ。
ぞくぞくっと背中に悪寒が走る。


「…てめーは真選組副長補佐、天海理御だな?」


見覚えがありすぎる男がそこにいた。







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