零れ落ちたナミダ
お母様とお父様がいなくなって、すぐに涙が溢れた。
ぼろぼろと、止まらない。膝に何滴も何滴も落ちていく涙。


「………っ!!」


下唇を噛む力が入りすぎて、血が出そうだ。さっきの柔らかな笑顔が瞼に焼き付いて離れない。涙腺が崩壊したのを感じて、立ち上がり、走り出す。


「おい、理御!」

「理御ちゃん!」

「…っ!」


勢い良くふすまを開けると、そこにはたくさんの隊士達が集まっていた。


「補佐!」
「副長補佐…」
「補佐…!」


おおかた、盗み聞きでもしていたのだろう。参ったなあ、聞かれたくなかったのに。それに、こんなぐちゃぐちゃな泣き顔、見られたくなかった。
隊士達を突き飛ばし、駆け抜ける。しかし、腕をがしっと掴まれた。今だ止まらない涙でぐちゃぐちゃの顔で振り向く。


「どこ行くんでィ、理御」

「…!!」


総悟だった。他の隊士なら振り切っていたけれど、総悟だったから、また、一層涙が溢れる。
そのまま腕を引かれて抱きしめられた。ぽんぽん、とあやすように背中を叩かれる。


「…一人で泣くな。俺たちがいるんだから」

「…!!ぅ…ううっ…ひっ…」


もう、駄目だった。耐えられなくて、崩れ落ちる。総悟も一緒に座り込む。総悟にしがみついて、声を上げて泣いた。涙が出なくなるまで、ずっと、泣いていた。






「待ってくれ!」


門を出たご両親を引き止める。振り向いたお母さんの頬には、涙の跡が残っていた。


「あ、あなたは…局長さん…」


お父さんも振り向く。頷いて、話を切り出した。


「あの…理御ちゃん、今日はあのような感じでしたが、いつもはとても明るく、頼りになる良い子で、いつも支えてもらっていて…」

「分かっています。私があの子と道でぶつかった時、とても良い笑顔でした。輝いていました。…あなた達のおかげ、ですね」

「いや、そんな…」


ふっと笑うお母さん。笑うと理御ちゃんに良く似ている。


「あの子、理御を、よろしくお願いしますね。また、来ます」


そう言って軽く頭を下げた。

遠くなる背中を見つめていた。
一緒に暮らさないかと、そう言っていた。そうなれば、ここにはもういられないだろう。ここから遠いのだろうし、真選組を出ることになる。優秀な補佐がいなくなるのは惜しいし、理御ちゃん抜きでは正直、やっていけなくなりそうだ。全員。精神的に。
それほど、真選組にとってかけがえのない、大きな存在なのだ。

だけど。

理御ちゃんのことを思えば。
ご両親とやり直した方が、いいに決まっている。親の愛を忘れた理御ちゃんには、ご両親は必要だ。仲直りして欲しいとも、思う。理御ちゃんも口ではああ言いながら、心のどこかで、一緒に暮らしたい、やりなおしたいという思いが少しでもあるはずなのだ。

俺は…どうすれば。
空を仰ぎ見る。鳥が一羽、飛んで行った。






零れ落ちたナミダ

(美しすぎる涙だった)
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