休戦、退却、帰り道
ふと上を見ると、そこにはすでに高杉の姿はなかった。どこへ行ったのかと視線を巡らせると、いつのまにか下へ降りて来た高杉と神威が、戦場となっていた場所へ歩いて行くのを見つけた。


「おい、やめろ。闘うのをやめろ」

「ストップストップー」

「晋助様っ!?」

「団長!!」


鬼兵隊と春雨のやつらが動きを止める。それを見て、真選組も様子を見るためゆっくり下がる。高杉が不敵に笑いながら、下がれと合図を出す。


「ここで真選組をつぶすのも悪かねーが、それもそれで面白くねェし、今はそのときじゃねェ。ここは引くぜ」

「理御が逃げたからおもしろくなくなっちゃったしね」


よくわからないけど、あまり納得出来ないけど、あの人がそう言うのなら。そういう感じで、ぞろぞろと武器を下げ、距離をとった。外れたところにたたずむあたしを高杉が横目で、これで文句ねェだろ、とでも言いたげな視線で見た。
真選組は状況を理解出来ておらず、敵が下がったのを見て疑問に思いながらも警戒を解いていない。そんな真選組の前に近藤さんと総悟が出た。


「おい、なにしてんだ。刀をしまいなせェ。休戦、ってこった」

「理御ちゃんを助けられたらしいからな。もう目的は果たした」


そう指示され、顔を見合わせ、またぞろぞろと刀を降ろし出す。互いに退却しだす中で、近藤さんと高杉が睨み合う。


「命拾いしたなァ、理御が賢くて良かったな」

「…いずれ決着をつけるぞ、高杉。そのときは必ず逮捕してやる」


そう言って、互いに踵を返した。
一連の様子を外れたところから眺めていたあたしとトシと銀さん。とりあえず、これで安心だ。なんとか策がうまくいって胸を撫で下ろす。あたし達も、退却する真選組を追って、その場を後にした。振り向くと、高杉と神威が上からあたしを見下ろしていた。二人に向かって思い切りべえっと舌を出して、また駆け出した。





「理御」


真選組の後を追いながら、銀さんに話しかけられる。


「親のこと、聞いた」


足を止める。トシはあたしと銀さんの話に気づかず、歩みを止めない。銀さんを見ると、銀さんはにっと笑ってあたしの頭をぽんぽんと叩いた。


「大変だったな。…でもよ、お前には新しい家族がいるんだし、俺もいる。悲しいことを忘れろとは言わねェ、楽しいことで上書きしちまえばいいんだ」


銀さんの手つきが優しくて。思わず涙が出そうになった。なんで知ってるのとか、誰に聞いたのとか。そういうのはどうでもよくなって、なんだか嬉しくなった。


「なにしてんだ、行くぞ」


トシが振り返って急かす。マヨ型ライターを取り出し、煙草に火をつけて、咥える。銀さんが行くぞとあたしの背中を軽く叩いた。


「うん、帰ろう」


にっこり笑って、トシの元へ走り寄り、三人でゆっくり歩き出したのだった。







休戦、退却、帰り道

(ありがと、二人とも)
(おう。もう高杉に近づくなよ)
(ったく…早く帰るぞ)
<<>>
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -