刻まれるカウントダウン
時間は進む。残酷なくらいに、刻々と。
残りの制限時間は、あっというまにあと三分となっていた。
そろそろ泣きたい。


「そろそろ覚悟決めたほうがいいんじゃねェか?」

「いいんじゃない?」


高杉とさっき来て事情を知った神威がニヤニヤと笑って言う。…めっちゃ楽しそう。


「あと三分あるわ」


ぶっきらぼうにそう言うと、高杉にフンと鼻で笑われた。
いまだ戦いは終わらない。ここから戦いをずっと眺めているが、…こんなところでボーッとしていられない、とモップを握ろうと何度もした。でも、高杉がモップを折ってしまった。そのうえ、神威が遠くへ投げてしまったのだ。なんてことをするんだこいつ。
そうしているうちに、残り一分。……かなりやばい。


「鬼兵隊に入ったら、俺の補佐にでもなるか?」

「その前に俺と一発ネ」


勝ち誇った笑みを浮かべながらそう言う。イラっとするが、それどころじゃない。てか神威のは論外。キコエマセンヨ。あたしには、信じて待つしかないんだ。ぎゅっと手を握りしめ、胸に当てる。そのとき、待ち続けたあの声が聞こえた。


「理御っ!!」


ばっと振り向く。…いない。確かにトシの声だった。…ついに幻聴でも聞こえたのだろうか。視線をまた下に落とした。そして、その姿を見つける。


「…!!トシっ!!銀さん!!」


汗だくの二人があたしを見上げていた。見つけてくれた…!!


「おまっ、なんて格好してんだ!」

「今助けに行くからな!!高杉、手ェ出すなよてめェっ!」


銀さんが走り出そうとするが、あたしの隣で高杉は冷酷に告げた。


「間に合わねェよ、残念だったな銀時ィ。…あと、20秒だ」

「…!?なんのカウントダウンだそりゃ!」

「さあね」


なおも銀さんは上を目指して走り出す。ああでもダメだ、やっぱり間に合わない!脳みそが焦りで働かない。どうすればっ…
すると、トシが両腕を広げて、叫んだ。


「飛べ!!」


あたしは何も考えず、ただ言われるままに、そこから飛び降りた。


「理御っ!?」

「な…」

「ありゃ」


驚く銀さんと高杉、神威の声は耳に入らない。あたしはそのまま落ちて行き、少しの浮遊感を感じた後、トシに抱きとめられた。


「ト、トシ…」

「ったく…」


トシの顔を見上げると、トシは怒ったように、でも優しい笑顔で見下ろして来た。どきり、心臓が跳ねた。なんだろう、と思って胸を押さえると、上から声が聞こえた。


「…0」


高杉のカウントが聞こえて、ばっと上を見上げる。高杉は不満そうに煙管を咥えていて、神威は楽しそうににこにこ見下ろしている。その様子から、間に合ったのだと理解出来た。ホッと胸を撫で下ろす。


「チッ…あと少しだったのによ」

「あーあ。まあ面白かったからいいや」

「オイシイとこ全部持って行きやがったァァ!」


戻って来た銀さんまで悔しがっている。違う意味だけど。トシはカウントダウンの意味を分かっておらず、あたしを見る。


「…なんだったんだ?」

「ああ…えっとね、」


かくかくしかじか。
事情を話すと、銀さんとトシは呆れてから怒り出した。


「おまっ、高杉に交渉とか…馬鹿かァ!」


銀さんが怒鳴る。言い返そうと口を開く。


「だって__」

「だってもくそもあるか、俺たちの事を思ってのことなのかもしれねーが…それは、同時に俺たちを捨てようとしてたも同じなんだぞ」


…言い返せない。でも、あたしも苦渋の決断だったんだよ。俯くと、はあとため息が降ってきた。


「…お前が敵になるなんてあり得ないし、真選組からいなくなるなんて認めねェからな。こんなこと…すんなよ」

「………ごめんなさい」


あたしがしゅんとうなだれると、トシは顔を背けて、まあその、分かったならいいんだ、と言った。







刻まれるカウントダウン

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