檻から逃げ出して
突然、雄叫びと騒音が聞こえ出す。もしかして…


「今、真選組が…!突入して来ましたっ!」


部下が阿伏兎に知らせたのを聞いて、ごくりと息をのむ。
来た。
阿伏兎がやれやれとため息をつく。


「じゃあ、俺はとりあえずこの嬢ちゃんが逃げないようにしときゃあいいわけだな」


な、なんだと。それじゃあだめだ、良いように使われてしまう。みんなの足でまといになるわけにはいかないし、逃げるなら今だ。逃げる時がやってきたのだ。
どうにかして阿伏兎を突破しないと。アレを…アレをやるしかない!!

知らせに来た部下がどこかへ去り、阿伏兎がぼりぼりと頭をかいてから、ゆっくりとこちらを振り向く。


「おい嬢ちゃ____」


振り向いた阿伏兎の目の前まで迫っていたあたし。間髪いれず、股間に足を振り上げた。


「ぐぁあァア!!」


渾身の蹴りをくらって膝をつき、悶える阿伏兎の横をすり抜け、扉から出る。


「おま…っ、なんつーことを…っ!!」

「ごめんなさい!でもお話楽しかったわ。じゃあね!」


重い着物を引きずりながら、その場を後にした。阿伏兎のうめき声と引き止める声が聞こえたけど、そんなのに構っている暇はない。
うねる通路を通って、ひと気のない掃除用具置き場のような場所に入る。

阿伏兎はもうしばらく動けないはずだ。動けるようになっても、ここまで来たら気づかないだろう。なんとか脱出成功だ。
でも、ここからが勝負。まずは動きやすい服装にしなくちゃ。
高そうな着物なので少しためらったが、思い切ってびりっと破く。見られたものではないが、動きやすくはなったのでよしとする。
そして、武器が必要だ。追っ手が来るだろうし、戦いがあっているのだから。武器と言っても、刀なんて都合よく落ちてることもなく、かと言って武器になりそうなものなんて、ここには何も…


「こいつは…捕虜の女だ!!逃げたのか、捕まえろッ!!」


見つかった!!なんでこんなとこまで来るのよ!!走って来た奴は二人。刀を振りかざしている。どうすれば…!
そのとき、片方がハッと何かを思い出した。


「そういや、こいつは殺しちゃ駄目だ!刀はいけん!」

「そうは言っても…!」


しめた、スキあり!
そこらへんに転がっていたモップを掴んだ。


「やあっ!」

「「うわあっ!」」


カンカンッ、と刀を落とさせ、それからモップの柄で力の限りみぞおちを突くと、二人はどさりと倒れた。


「はあ…」


息をつく。そして、手に掴んだモップを見る。モップか…これでもいいか。刀のように扱えば。
ぼきりと折って柄だけにする。これでいい。


「…行くか」







檻から逃げ出して

ただじっと誰かの助けを待ってるお姫様じゃないんだから!
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