囚われの姫
高杉は、一体あたしをどうしたいんだろうか。
縛ることもせず、動きにくい派手な着物を着せて、化粧をほどこし、あたしを広めの部屋に放置している。
本当は、少し、怖い。また、あのときを思い出しそうで。でも、監視が一人いることに、すこしだけ救われている。話し相手になってくれるのだ。


「監視さん、監視さん。暇だわ」

「大人しく捕虜らしくしてろ、すっとこどっこい」


髪を無造作に伸ばしたその人は、確か前に三つ編みの男と一緒に道に迷っていた人だ。阿伏兎…だったっけ。この人が、監視。この人もきっと恐ろしく強いんだろう。この人を倒して逃げるなんてことは無謀だ。


「あたし捕虜なの?」

「そうなんじゃねーのかい。よく俺にも分からんが。…高杉の考えてる事は、よく分からん」


ボリボリと頭をかいた。そこで話が途切れた。

こうして何もすることがないと、思い出すのはやはり真選組のこと。みんな、どうしてるのかな。トシ、総悟、近藤さん…。会いたい。でも、まだ逃げるべきときじゃない。まだ、逃げられない。
ため息を小さくついた。


「元気ー?囚われのオヒメサマ」


そんなときひょこりと顔を出したのは、三つ編みの男、神威だった。


「神威…!」

「あれ、俺、名前教えたっけ?まあいいや。阿伏兎、ちゃんと監視してる?」

「へいへいしてますよー」


めんどくさそうに阿伏兎が返事をする。


「二人きりだからって襲わないでよね」

「誰がこんな小娘を襲うか」

カチンと来たけど、どうでもいいことだ。聞き流した。
神威はにこにこしながらあたしを見た。


「ね、じゃあ俺と一発ヤろうか?」


聞き流…せないよ!!さすがにそれは聞き捨てならないよ!何がじゃあなの!?意味が分からないよ!
目を見開いて聞き返した。


「ななな何言ってるの!?」

「理御は強い子を産みそうじゃないか。理御は力も精神も強いから」


理由になってないからねそれ!!近づいて来る神威に後ずさりしながらすがるように阿伏兎を見ると、まあまあ、となだめてくれた。


「ねえ、いいこと、教えてやろうか」

「何っ」


次は何だというのか。
身を引きながらキッと睨むと、神威は目を開いてニヤリとした。


「この船のことが真選組に知れたらしいよ」

「…!」

「団長、どこでそれを…!」


真選組に、見つかった…!!
阿伏兎までが驚く。知らなかったのか。


「理御がいることまでは分かってないだろうけど、時間の問題かな」


立ち上がる神威。あたしは、たらりと汗を流して空を見つめた。
真選組はやがて乗り込んで来るだろう。でも、春雨だっている。鬼兵隊だけでも驚異なのに。ただ乗り飲んで行くだけじゃだめだ。それに、あたしという人質がいる。そうなれば、圧倒的に不利だ。


「さあ、どうなるかな?面白くなりそうだ」







囚われの姫
<<>>
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -