人斬りと紅い弾丸
「…あの」


じーっと。ただ、じーっと舐めるように見下ろされ、たらりと汗をたらす。


「あの…そんなに見ないでくれない?人斬り万斎」


人斬り万斎。鬼兵隊の幹部。サングラスに、髪を立てた三味線の男。
が、さっきから無言で私を見て来る。


「あの」

「理御、といったかお主」

「え、あ、はい」


やっと喋った。てか、敵に敬語とか使わないでいいのに、反射的に使ってしまった。


「ぱっと見、誰かわからなかった。化粧で化けるものでござるな」


え、初対面じゃないっけ?あたしの顔を見たことあるような言い方。真選組の副長補佐だから知ってるのかな。


「前に一度、主を見たことがあったのだ。女とは思えぬような猛々しさだったのでな、興味があったのでござる」


あたしの心を読んだかのようにそう言う。何を見られたんだろう、恥ずかしい。


「晋助が妙に気に入っている。何かしたのか?」


そう聞かれて、堰を切ったように話し始める。


「そんなの、あたしが聞きたいわ!急に拉致られて鬼兵隊に入れだのどうのこうの!迷惑してるの、どうにかしてくれない?てゆーか早くここから出してよ!」


そこまで言って睨むと、万斎が小さく笑った。聞いてるんですか。


「…成る程分かった」

「分かってくれたの!?」

「晋助が何故気に入ったかがな」


そっちかい。
すると、万斎の背中からひょこりと顔を出したのは、紅い弾丸来島また子だった。


「晋助様の…お気に入り…」

「え?」


殺気がハンパないんだけど。なんかオーラが漂って来るんだけど!
たらりと汗が流れる。


「晋助様は渡さないっスよ…!!」

「いらない」


すぱっと即答。だってまず敵だし。
来島また子はガンッと衝撃を受けてから唖然とした。万斎がまた口を開く。


「主、そんなことを言っていて良いのか?晋助はここから主を出す気はないでござる。機嫌をとっておいた方が良いのではないか」


ここから出す気はない?いいですよーだ、自力で出るから!!心の中であっかんべーをして、表情には出さずに鼻で笑う。


「高杉に媚びるくらいならここから飛び降りた方がマシだわ。ああ、いっそそれがいいかもね?この下って江戸でしょ?」


ナイスアイデアじゃない?とか思っていると、万斎はククッと笑って大した娘だ、と言った。それって褒め言葉?







人斬りと紅い弾丸

(度胸だけはあるようでござる)
(晋助様は渡したくないけど…でも、面白そうな奴っスね)
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