伊藤鴨太郎
「土方ァァァァ!!」

「伊東ォォォォ!!」

ガキィィン!!


斬り合った瞬間、鴨の肩から血が吹き出し、こっちはパトカーのタイヤが斬られて飛んだ。ガリガリガリガリッ、とそれでも走るパトカーが嫌な音を出す。
そんなとき、後ろから車両が突っ込んで来る。このままじゃつぶれる!!


「ああああああっ!」


とっさにパトカーの屋根から突っ込んで来る車両の扉をぶった切る。まあ、止まるはずもないけど!


「えっ意味なくね!?理御!」

「なっ、なんとかしようとしたのよ!?…って、あ!!」


トシが車両に足をつき、なんとかパトカーと当たらないように支えた。そして、車内を見ると。あたしは、ぶった切った車両の中にいた人物に気がついた。


「総悟ぉぉぉっ!」

「理御、何してくれてんでィ。ま、いいけどよ。ちぃと働きすぎちまった」


車内は、飛び散った血が至る所についていて、隊士達が倒れていた。そういえば、鴨が総悟はここの何倍もの人数と戦ってるって言ってた…!さすが総悟だ。
そのとき、パトカーの前の方から銀さんめがけてバイクが突っ込んで来た。


「ぐがっ」

「銀さんんんんんっ!」


銀さんは血を吐きながら吹っ飛び、線路から出てしまった。バイクに乗っていたのは、河上万斎。
そして、今度は先頭車両が前から来てパトカーをつぶしにかかった。車内では鴨がこちらを睨んでいた。
…ヤバいな。
メキメキとつぶれゆくパトカー。ギリギリで飛び越えて、車両の屋根に飛び乗った。みんなは車内へ逃げ込んだと思う。

と、そのとき。ゴゴゴゴ、と足元の車内が揺れた気がした。


「っ!!」


瞬間的に危険を感じ、屋根から飛び移る。
次の瞬間、

ドォォォォン!!

どうやら、車内に爆弾が仕掛けられていたようで。モロに当たるところだった。間一髪…ひやりとする。
スタンと着地し、下を見下ろす。みんなは大丈夫かな。てか、着地したってここどこだよ。振り向くと、驚きに満ちた顔の銃を持った攘夷志士が二三人、いた。


「しっ、真選組だァァァ!」

「撃てェェェ!」


鬼兵隊のヘリだった。逃げた先が敵地とか、最悪。
刀を抜いて、一閃。銃の先端からぱっくりと切り落とした。刀を収め、一言。


「撃たせない」
_____鴨は。


そう、あたしは気づいていた。鴨を狙っていたヘリだって事を。
鴨は、鬼兵隊に道具として使われていたのだ、きっと。裏切り者が、裏切りによって破滅するなんて、そんなシナリオ許さない。
そして、トシがこのヘリを狙ってるってこともわかっていたッ!!


「いっけェトシッ!!」

「ナイス理御!!ぅうおらぁぁぁああ!!」

ザンッ!!!


ヘリのプロペラを根元からぶった切った。ヘリが落ちて行く、そのときトシがあたしを担ぎ、列車に向かってヘリから飛び降りた。
必死にのばすトシの手を鴨が掴む。なんとか、傾いた列車に辿り着き、ホッとしたのも束の間、安定した列車に這い上がると、攘夷志士が待ち構えていた。


「お出迎えまで用意周到ね…!」


汗をたらしながら刀を抜く。生憎、諦めるなんて言葉はあたし達の辞書にない。ところどころから炎が上がる車内で、また戦いが始まった。

襲い来る攘夷志士に刀を振り下ろす。椅子から椅子へ飛び移りながら、確実に致命傷を負わせる。斬り合いの最中、割れた窓からヘリが見え、銃がこちらを狙っていた。
ぞくり、とする。防ぐ手立てはない!

ガガガガガガガガッ!!

あたり構わず放たれる。伏せたあたし達に、一発も当たらず、不思議に思って顔をあげると、あたし達の前に守るように左腕を失くした鴨が立ちはだかっていた。


「先生ェェェェ!!」

「伊東ォォォォ!!」

「鴨ォォォォォ!!」


血を吐き、ガクンと膝をつく鴨。駆け寄り、体を支える。鴨の体には至る所に穴があき、見るも無残。見ていられず、視線をそらした。

ヘリの方は銀さんが河上万斎ごと車両のすぐ外で破壊させた。銀さんの強さを身に染みて感じて、ごくりとつばをのむ。
ぽかんとして見ていたあたし達に、鴨が声を絞り出して言った。


「何をしている…ボヤボヤするな、副長。指揮を…」


トシがハッとする。そうだ、指揮を!


「総員に告ぐぅ!!敵の大将は討ち取った!!最早敵は統率を失った烏合の衆!!一気にたたみかけろォ!!」

「「「おおおおおっ!!!」」」


あたしもだっと駆け出し、攘夷志士を誰彼構わず斬って行く。歯を食いしばり、次々向かって来る奴らに猛攻撃を浴びせた。

しばらく戦い続けていると、攘夷志士が引いて行く。最後の最後まで討ち取ろうと刀を振るうが、とうとう攘夷志士はいなくなった。
刀を鞘に収める。
……終わった。真選組は、守られた。
どっと押し寄せる疲労感にふらりとよろめく。再度ぐっと踏ん張り、ゆっくりと歩き出した。


生き残った隊士全員で倒れた鴨を囲む。その中で、トシが前に出て刀を鴨に渡した。


「立て。伊東、決着つけようじゃねーか」


裏切り者としてじゃない、武士として、あたし達の仲間として。
死なせてやりたいから。

鴨はガクガクと震える体でなんとか立ち上がり、片方の手で刀を掴む。その表情は、辛そうだったが笑みを浮かべていて。
涙が溢れた。ぐっと唇を噛む。見届けなくちゃならないんだ。決着を。
二人同時に走り出す。


「土方ァァァ!!」

「伊東ォォォ!!」


斬られたのは鴨の方だった。鴨はゆっくりと振り向き、隊士達を視線で見渡して、ふっと笑った。その頬には涙がつたっていた。


「あり…がとう」


そう言って、ドサッと地面に倒れた。みんな、何も言わずに見届けた。
鴨は最後の最後で気づけたんだ。絆が、つながってることに。
近藤さんに頭をぽんぽんとされて、涙を拭った。







伊藤鴨太郎

真選組参謀にふさわしい最期だった。
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