刀についた血を振って落とし、チンと収めた。なんとか勝てたけど…。目を伏せて、倒れた隊士を見下ろした。
外がうるさくなってきた。割れた窓から顔を出す。
そこから鬼兵隊が見えて、鴨は鬼兵隊とつながっていたんだと一瞬で理解する。そして、攘夷志士と一緒に、一台のボロボロになったパトカーが見えた。そのパトカーに乗って戦っているのは、あれは!
窓から身を乗り出した。
「ぎっ…銀さぁぁああん!!トシィイィイイ!!」
真選組の格好をした、万事屋トリオとトシだった。トシは隊服ではあるものの、相変わらず中身はヘタレみたいだけど。あたしの声に気づいた銀さんがバズーカを撃つのをやめ、こっちを見た。
「理御!!無事かァァア!てめっ、血だらけじゃねーか!」
「返り血!こんなのまだまだ大丈夫!」
「ったく…!今からそっち行くから!!」
「いや、隣の車両に近藤さんがいるから、近藤さんの方へ行って!あたしも行くから!」
「は!?どうやって…」
窓から離れて、車内の天井を見上げる。ダンッと強く床を蹴り、ジャンプして天井を斬った。
ドカァン!!
ガラガラと崩れ落ちる天井。風穴が空いた。ジャンプして天井から車両の上へ出る。
かなりのスピードで走り続けていて、飛ばされないようにしないといけないな…。ポニーテールが風に靡き、舞い上がる。銀さんの方を向くと、呆れたように見ていた。
「ありえねー。あいつマジで女か?」
「なんか言ったァ!?」
風音と騒がしさで聞こえづらい。でもなんか、失礼なこと言われた気がする。
「なーんも言ってませーん。つか、パンツ見えるぞ」
「見えないわよバカ!スパッツ履いてる!」
履いてるけど、言われたらなんか恥ずかしいじゃん!めくれ上がるスカートを押さえつけた。
「銀ちゃん!何のんきに話してるアルか!」
「そうですよ!バズーカあるならやってください!!」
「あーはいはい。あ、新八、あの車両を追え」
「はい!」
パトカーの進行方向が変わる。じゃあ、あたしも行かないと。飛ばされないように刀でガガガガッと引っ掻きながら走る。
もう少しで着く、とそのとき、ドオウン、と近藤さんのいる車両がバズーカで撃たれて扉が吹っ飛んだ。危ねェェェ!あとちょっとで巻き込まれてたよ!銀さんが撃ったらしい。ボロボロのパトカーがすぐ近くに来ていた。
「近藤さんっ!」
パトカーの屋根に飛び降りる。中から、衝撃に驚いた銀さん達の悲鳴が聞こえた。
「うわああ!?あ、え、理御さん!?」
「ごめんごめん。いいとこに足場があったから」
「ビビっただろーがコノヤロー!」
たいして謝りもしないでいると、近藤さんの声が聞こえた。
「っ理御ちゃんんんんんん!!」
両腕を広げて車内から叫んでいて、ぱっと顔を明るくして叫び返した。
「近藤さーーんっ!無事ですかーっ!」
「たった今殺されかけたけどね!」
ああよかった、そんなこと言えるなら元気だ。
「よかった!ほんとに…よかったっ!」
安心して、ガクッと膝をつく。でも、油断は禁物。まだ終わってない。救い出せてもいない。まだ会えただけだ。
「にしても、なんでお前ら…」
近藤さんが銀さんを指差す。状況を説明しないと…!
「トシは妖刀に呪われてしまったの。ヘタレたオタクになっちゃった。今までの不可解な行動全て、妖刀のせいなのよ!」
「真選組護ってくれって頼まれちまってよ。面倒だからてめーでやれってここまで連れて来た次第さ」
近藤さんは驚きに満ちた表情で数秒後、悲しそうにして銀さんに言った。
「万事屋…トシと理御ちゃん連れてこのまま逃げてくれ。すまなかった、トシ、理御ちゃん…すまなかった…。俺ァ…大馬鹿野郎だ」
俯いて、声を絞り出してそう言う。そんなの…。刀をぎゅうぅっと握りしめた。あたしが何かを言うより先に、トシが無線をとった。
「あーあー、ヤマトの諸君。我等が局長近藤勲は無事救出した。勝機は我等の手にあり!今こそ月に代わってお仕置きするのだ」
《オイ誰だ?気の抜けた演説してる奴は!》
「真選組副長!土方十四郎ナリ!!」
言うだけ言うと、ガシャンと無線を叩きつけた。そして、近藤さんに視線を向ける。
「近藤氏、君がいる限り真選組は終わらない。僕達はアンタに惚れて真選組に入ったからだ。…あんたは真選組の魂だ。俺たちはそれを守る剣なんだよ」
途中から、声音が変わる。いつものトシの口調だ。煙草の煙が屋根に上ってきた。懐かしい匂いだった。
「トシ…!!」
顔が見れないのが悔しい。安堵で頬が緩む。
そこに、鴨を乗せたバイクがやって来た。運転は鬼兵隊幹部、河上万斎だった。目があって、数秒じっと見られ、ふいとそらされた。なんだったんだ。
「土方君、君とはどうあっても決着をつけねばならぬらしい」
「剣ならここにあるぜ。よく斬れる奴がよォ」
トシが車台の後ろのガラスを割って乗る。刀を両手で掴み、ミシミシと音をたてながら無理矢理刀身を抜こうとしながら、叫んだ。
「万事屋ァァァァ!てめーに一言言っておく!!あと理御もだ!…ありがとよォォォォ!」
自然と口角が上がる。
「オイオイ、トッシーか、トッシーなのか」
「礼を言うのはまだ早いよ!」
「…そうだな!!俺は、真選組を護る最後の剣…!」
ガッ、と刀が鞘から抜けた音がした。
最後の剣
「真選組副長!土方十四郎だァァァァ!!」
外がうるさくなってきた。割れた窓から顔を出す。
そこから鬼兵隊が見えて、鴨は鬼兵隊とつながっていたんだと一瞬で理解する。そして、攘夷志士と一緒に、一台のボロボロになったパトカーが見えた。そのパトカーに乗って戦っているのは、あれは!
窓から身を乗り出した。
「ぎっ…銀さぁぁああん!!トシィイィイイ!!」
真選組の格好をした、万事屋トリオとトシだった。トシは隊服ではあるものの、相変わらず中身はヘタレみたいだけど。あたしの声に気づいた銀さんがバズーカを撃つのをやめ、こっちを見た。
「理御!!無事かァァア!てめっ、血だらけじゃねーか!」
「返り血!こんなのまだまだ大丈夫!」
「ったく…!今からそっち行くから!!」
「いや、隣の車両に近藤さんがいるから、近藤さんの方へ行って!あたしも行くから!」
「は!?どうやって…」
窓から離れて、車内の天井を見上げる。ダンッと強く床を蹴り、ジャンプして天井を斬った。
ドカァン!!
ガラガラと崩れ落ちる天井。風穴が空いた。ジャンプして天井から車両の上へ出る。
かなりのスピードで走り続けていて、飛ばされないようにしないといけないな…。ポニーテールが風に靡き、舞い上がる。銀さんの方を向くと、呆れたように見ていた。
「ありえねー。あいつマジで女か?」
「なんか言ったァ!?」
風音と騒がしさで聞こえづらい。でもなんか、失礼なこと言われた気がする。
「なーんも言ってませーん。つか、パンツ見えるぞ」
「見えないわよバカ!スパッツ履いてる!」
履いてるけど、言われたらなんか恥ずかしいじゃん!めくれ上がるスカートを押さえつけた。
「銀ちゃん!何のんきに話してるアルか!」
「そうですよ!バズーカあるならやってください!!」
「あーはいはい。あ、新八、あの車両を追え」
「はい!」
パトカーの進行方向が変わる。じゃあ、あたしも行かないと。飛ばされないように刀でガガガガッと引っ掻きながら走る。
もう少しで着く、とそのとき、ドオウン、と近藤さんのいる車両がバズーカで撃たれて扉が吹っ飛んだ。危ねェェェ!あとちょっとで巻き込まれてたよ!銀さんが撃ったらしい。ボロボロのパトカーがすぐ近くに来ていた。
「近藤さんっ!」
パトカーの屋根に飛び降りる。中から、衝撃に驚いた銀さん達の悲鳴が聞こえた。
「うわああ!?あ、え、理御さん!?」
「ごめんごめん。いいとこに足場があったから」
「ビビっただろーがコノヤロー!」
たいして謝りもしないでいると、近藤さんの声が聞こえた。
「っ理御ちゃんんんんんん!!」
両腕を広げて車内から叫んでいて、ぱっと顔を明るくして叫び返した。
「近藤さーーんっ!無事ですかーっ!」
「たった今殺されかけたけどね!」
ああよかった、そんなこと言えるなら元気だ。
「よかった!ほんとに…よかったっ!」
安心して、ガクッと膝をつく。でも、油断は禁物。まだ終わってない。救い出せてもいない。まだ会えただけだ。
「にしても、なんでお前ら…」
近藤さんが銀さんを指差す。状況を説明しないと…!
「トシは妖刀に呪われてしまったの。ヘタレたオタクになっちゃった。今までの不可解な行動全て、妖刀のせいなのよ!」
「真選組護ってくれって頼まれちまってよ。面倒だからてめーでやれってここまで連れて来た次第さ」
近藤さんは驚きに満ちた表情で数秒後、悲しそうにして銀さんに言った。
「万事屋…トシと理御ちゃん連れてこのまま逃げてくれ。すまなかった、トシ、理御ちゃん…すまなかった…。俺ァ…大馬鹿野郎だ」
俯いて、声を絞り出してそう言う。そんなの…。刀をぎゅうぅっと握りしめた。あたしが何かを言うより先に、トシが無線をとった。
「あーあー、ヤマトの諸君。我等が局長近藤勲は無事救出した。勝機は我等の手にあり!今こそ月に代わってお仕置きするのだ」
《オイ誰だ?気の抜けた演説してる奴は!》
「真選組副長!土方十四郎ナリ!!」
言うだけ言うと、ガシャンと無線を叩きつけた。そして、近藤さんに視線を向ける。
「近藤氏、君がいる限り真選組は終わらない。僕達はアンタに惚れて真選組に入ったからだ。…あんたは真選組の魂だ。俺たちはそれを守る剣なんだよ」
途中から、声音が変わる。いつものトシの口調だ。煙草の煙が屋根に上ってきた。懐かしい匂いだった。
「トシ…!!」
顔が見れないのが悔しい。安堵で頬が緩む。
そこに、鴨を乗せたバイクがやって来た。運転は鬼兵隊幹部、河上万斎だった。目があって、数秒じっと見られ、ふいとそらされた。なんだったんだ。
「土方君、君とはどうあっても決着をつけねばならぬらしい」
「剣ならここにあるぜ。よく斬れる奴がよォ」
トシが車台の後ろのガラスを割って乗る。刀を両手で掴み、ミシミシと音をたてながら無理矢理刀身を抜こうとしながら、叫んだ。
「万事屋ァァァァ!てめーに一言言っておく!!あと理御もだ!…ありがとよォォォォ!」
自然と口角が上がる。
「オイオイ、トッシーか、トッシーなのか」
「礼を言うのはまだ早いよ!」
「…そうだな!!俺は、真選組を護る最後の剣…!」
ガッ、と刀が鞘から抜けた音がした。
最後の剣
「真選組副長!土方十四郎だァァァァ!!」