参謀の帰陣
近々、あの人が仕事を終えて江戸に帰って来るらしい。
真選組に入って一年あまりの新参者にして真選組参謀_____伊東鴨太郎が。


*


「伊東鴨太郎君の帰陣を祝して!カンパーイ!!」

「「「カンパーイ!!」」」


近藤さん、トシ、鴨を中心に宴会が始まる。

鴨には、参謀という地位で政治方面を全て任せている。だから、外回りの仕事が多くてなかなか屯所に帰って来ない。久しぶりに見た仲間の姿に、嬉しくなる。
今回鴨は、たくさんの武器を仕入れて来た。幕府はケチでなかなか武器を揃えてくれないのに、説得してあれだけの武器を調達してくるなんて、さすがだ。

鴨にお酌しながら、にっこりと笑った。


「お疲れ様、鴨。」

「ああ、ありがとう天海さん」

「いやあ伊東先生!本当にご苦労でした!」


近藤さんがにこにこと笑う。
近藤さんは、新参者の鴨を先生、と尊敬を込めて呼ぶ。少し引っかかるけど、あたしは気にしていない。
鴨はつがれた酒をぐいっと飲むと、眼鏡を押し上げた。


「近藤さん、我々はこんなところでいつまでもくすぶっていてはいけない…」


立ち上がると、ぐっと拳を握り、力強く言った。


「進まなければならない!そしていずれは国の中枢を担う剣となる事が使命だと僕は考える!近藤さん一緒に頑張りましょう!」

「うむ!みんな頑張るぞ!」


酒も入って熱くなっている鴨とノリノリな近藤さんを見て、くすりと笑い、次はトシにお酌をしようとすると。


「…トシ」

「………あ?なんだ理御」

「顔、怖くなってる」

「…」


眉間に深いしわを寄せて、瞳孔がいつもより開いているトシは、不機嫌オーラを醸し出している。…どうにも、鴨とトシは仲がよろしくないようなのだ。仕事以外で話しているところを見た事がない。
お酌し終えて、自分も酒を飲むか、と座ると、鴨が隣に来て座った。


「僕が酌しよう」


珍しい、と思ったけど、素直に嬉しい。


「ありがと、頼むわ」


盃にお酒が入る。くいっと飲むと、鴨が口を開いた。


「天海さん、このごろの調子はどうだ?」

「ん、まあぼちぼちね」


盃を置いて鴨を見る。


「…良ければ今度、…いや、いろいろ経費や幕府の事で相談したい事がある。時間があるとき僕の部屋に来てくれ」


鴨は目を伏せて、もごもごと聞き取りにくい声で何かを言いかけ、すぐに言い直した。良ければ今度…?何の話だったんだろう。まあ、いいや。


「了解。でも、あたしでいいの?近藤さんとか、トシは?」

「いや、副長補佐に用があるんだ」

「わかった」


鴨はフッと笑って、席に戻った。しっかりしてるなあ。こんなときにも仕事の話か…なんて思って自分で酒をついでいると、トシと目が合ってなぜかギロリと睨まれて、危うく酒をこぼしそうだった。







参謀の帰陣

(あの、天海さん。土産があるんだが…)
(わ、ありがとう!)
(…副長、顔、怖いです)
(…うるせえ山崎)
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