脱出成功
「おーい。理御、おきろ」


目を覚ましたら、目の前に銀さんの顔があってびっくりした。


「…なにこの体制?」

「お前が離してくれねェからだろうがァァァ!」

「え、あたし?あ、そっか昨日…」


銀さんから離れる。がっちりホールドしていたようだ。


「銀さん、目にくまが出来てる」

「理御ちゃんのせいで眠れなかったからねっ」

「うそ、そんなにキツかった?ごめん」 

「そういう意味じゃねーけど…」


でもなんとか、夜を越えた。良かった、心底ホッとした。さあ、気を取り直して!


「さあ、張り切って脱出しよ!」

「おう」

「…」


ちらり、と銀さんを見る。眠そうにあくびした銀さんと目があった。


「なに?」

「…聞かないの?昨日のあたし、おかしかったでしょ」

「あー?まあ、聞かれたくない事もあんだろ。人には人の事情があるからな」


知ってるんだ、きっと。銀さんは、闇を抱える人の事を。


「……昔ね、いろいろあってさ。閉所恐怖症、みたいなやつなの。狭くて暗い密室に独りだと駄目」

「…ふーん」

「だから、なんとか明るいうちに脱出したいのよ」


スカーフをスタンガンに巻きつけながら、そう言った。


「ありがとね、銀さん。助かったわ。精神的に」

「いいってことよ」


なでなでと頭を撫でられた。
銀さんは優しい。…その優しさに、甘えすぎたらダメだ。


「…よし、じゃあいっちょ頑張りますかね!」


気合いを入れ直して、スカーフの端を持った。


「それは?」

「これなら刀に届くわ。なんとかこれで刀を転がしてこっちにやる。で、鎖を斬る」

「よしいけ!」


びゅん、とスタンガンを投げて刀にぶつけた。すごい音がしたけど、気にせず。刀が転がった。


「よし、アレを引き寄せる…」


スタンガンを操り、ごろごろと刀を転がす。


「「よし!!」」


なんとか刀を掴んだ。あとはこっちのもの。


「行くよ?」

「行くぜ」


お互いの鎖を斬り合う。じゃらっ、と音をたてて斬られた鎖が落ちた。首輪と少しの鎖は残ってるけど、とりあえずいいや。


「あとはここを出るだけ…!!」

「どいとけ理御!」


言われるままに下がると、銀さんはドアごと破壊した。


ドゴオオン!

「やりすぎだと思うけど」

「そうかァ?」


とにかく、なんとか脱出成功!
太陽が眩しい。シャバの空気、最高!ホッとしたのと、達成感でいっぱいだ。


「おつかれ、銀さんっ」

「おつかれさん。腹減ったよ」


ぱん、とハイタッチして二人とも倒れこんだ。


「なんか…疲れたわ」

「俺も。糖分足りねェ」

「ちょっと…休んで、いいかな」

「どーぞ。おひさんの下で日向ぼっこといくか」

「それもいいね」


お腹減ったし、屯所に戻らなきゃだし、ここがどこかも分かってないけど。とりあえず、今は。心身共に疲れきった体を投げ出して、目を閉じたのだった。







脱出成功

(ああああ!?逃げられたっ!!)
(やるな、人間…)
(くそ、あいつら〜!)
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