えーっと、これ今どういう状況?
慌てるな、落ち着け理御。
「なーこれ、どういう状況?」
「うんそれはあたしが聞きたい」
目を覚ましたら、窓が一つしかない狭い部屋に、首輪に鎖付きで、銀さんと二人。ねーこれ、どういう状況?
「確かさあ、あたし定食屋さんで昼ごはんを食べてたと思うんだけど」
「そうそう。そこでばったり会ってさあ」
「だよね、それでものすっごい体に悪そうな丼物食べてたよね?銀さん」
「体に悪そう言うな。白ご飯にあずきぶっかける、アレは神ってるからマジで」
「どこがよ。ただの馬鹿でしょ、ただの味覚馬鹿でしょ、ただの甘味馬鹿でしょ」
「ひどくね?それひどくね?」
「で、あたしはカツ丼食べてたよね」
「え、無視?おーい理御ちゃーん」
「それで、一緒に食べながら楽しくランチタイムしてたよね」
「あーまあそうだなあ」
「んで、あたしが食べ終わって、お勘定して、屯所に戻ろうかなって席たって」
「そのとき、誰かが定食屋に入って来てよォ、…………」
「「そっからあとどうなった?」」
銀さんとあたしは顔を見合わせた。なんにもわかんない、原因も成り行きも、ここがどこかも。じゃらりと鎖を持ち上げて、辿ると柱に固定されてた。もちろん銀さんも。ナニコレ動けないじゃん。ちょっとは歩けるけど、範囲狭っ。うん、とりあえず、
「やばいいいいい!!この後すぐ仕事あるのおおおお!!トシに怒られるううう!あの書類、今日締め切りなのに!どうしよう殺される!」
「落ち着けよ理御、その前にここで死ぬかもしれねーぞ」
「やだあああなんでこんな意味わかんないことで銀さんと一緒に死ぬのあたし!?」
「おいこら、銀さんと一緒に死ぬのが嫌って感じの言い方だぞ」
「うん嫌」
「泣いていい?」
「あたしが泣きそうだわ!」
せまい部屋でわあわあと喚いていると、ハッと思い出した。今の時点での救世主の存在を!
「あ、そうだ携帯!!」
「おお!!」
携帯があればトシに言い訳できる。なんとか命つながる。…って、それどころじゃないか。あわよくば、ネットが繋がれば現在位置も分かるかも!あたしは必死にポケットを探った。すると、固い手触り。
「あったァァァ!」
「うおおおお理御ちゃんさすが!」
「まあねっ」
無機質なその機械が神々しく見えた。開くと、時刻は3時すぎ。定食屋さんに行ったのがちょうど12時くらいだったから、かなり時間がたってる。あーあ、もうこれはアウトだな。鬼の副長がご立腹なはずだ。
圏外、なんてこともない。心底安心して、トシの携帯の番号をぽちぽち押して行く。
「あとで俺にも貸して」
「はいはい」
銀さんも万事屋に電話しなくちゃだもんね。神楽ちゃんと新八君も心配してるはずだ。
何回目かのコールが耳元で鳴る。なかなか出てくれない。出てくれるよね?心配になって来た。早く出てくれトシぃぃいい!
『てんめえええ理御ーーっ!!』
「わっ」
やっと出たかと思うと、耳元でキィィンと鼓膜に響く。やっぱご立腹です。銀さんにも余裕で聞こえて、嫌そうな顔をしていた。
『今どこにいんだてめえ、サボるなんざ良い度胸じゃねえか。切腹させるぞコラ』
「いやあ、これには海より深ーい訳が…」
ありまして、と言おうとしたとき、銀さんが携帯をひったくった。
「うっせーんだよ大串君よォ。もうちょっと静かに出来ねーの?」
『ァあ!?その声は万事屋か!?なんでてめーがいんだよ!!つーか俺大串じゃねーし!!』
あーあ、何してくれちゃってんのかなあ。余計ややこしくなるでしょーが。頭を抱えたくなった。
「今、俺と理御、拉致されてどっかに監禁されてる。首輪と鎖で繋がれてて、出れねえ感じ。つーことで助けてー」
『っはァァァァ!?どういうことだよ!!』
「俺達にもさっぱりわけわかんねえよ。なんで昼メシ食べてたらこんなとこに連れて来られんだよ」
『お、おいとにかく理御にかわれ!』
銀さんに携帯を渡されて代わる。銀さんは大きくため息を吐いてごろんと横になった。
「もしもし。かわったけど」
『おい、ちゃんと説明しろ』
トシは焦っているのだろう、少しどもっていて早口だ。こっちは逆になぜか冷静になってきたよ。
「銀さんの言ったとおり。本当にこっちもパニックなの。昼ごはん食べてて、なぜか誰かに眠らされて、起きたら知らない所だったのよ」
『…マジかよ…』
「助けてトシ。たぶんね、江戸のどこか」
『アバウトすぎんだろ、どこかもわかんねーのかよ』
「うん」
横から銀さんが口を挟む。
「おい大串君、こちとら"二人っきり"なんだからなァ。早く助けに来ねーと、手遅れになっちまうかもよ」
いろんな意味で、と銀さんがトシに言う。なぜか二人っきりを強調した。それを聞いてトシはまた声を荒げた。
「ァあ!?何だとおい!!」
「トシうるさい」
「万事屋…てめえ覚えとけよ…いつか絶対殺してやる」
「やってみればァ?てか、今死にそうなんだけどねー」
そんなに危機的状況じゃないけど、長期戦になると見ての事だ。
「とにかく、やばいから…早く助けに来」
ブツッ。
…え。急に、切れたよ。…まさか…
携帯をおそるおそる見ると、
充電してください
と出て、光を失った。
「嘘でしょォォォォッ!?」
たった今、救世主が天に召された。
拉致☆監禁
(おいっ!理御!?…切れた)
(理御がどうかしたんですかィ)
(…拉致られた)
(…は?)
慌てるな、落ち着け理御。
「なーこれ、どういう状況?」
「うんそれはあたしが聞きたい」
目を覚ましたら、窓が一つしかない狭い部屋に、首輪に鎖付きで、銀さんと二人。ねーこれ、どういう状況?
「確かさあ、あたし定食屋さんで昼ごはんを食べてたと思うんだけど」
「そうそう。そこでばったり会ってさあ」
「だよね、それでものすっごい体に悪そうな丼物食べてたよね?銀さん」
「体に悪そう言うな。白ご飯にあずきぶっかける、アレは神ってるからマジで」
「どこがよ。ただの馬鹿でしょ、ただの味覚馬鹿でしょ、ただの甘味馬鹿でしょ」
「ひどくね?それひどくね?」
「で、あたしはカツ丼食べてたよね」
「え、無視?おーい理御ちゃーん」
「それで、一緒に食べながら楽しくランチタイムしてたよね」
「あーまあそうだなあ」
「んで、あたしが食べ終わって、お勘定して、屯所に戻ろうかなって席たって」
「そのとき、誰かが定食屋に入って来てよォ、…………」
「「そっからあとどうなった?」」
銀さんとあたしは顔を見合わせた。なんにもわかんない、原因も成り行きも、ここがどこかも。じゃらりと鎖を持ち上げて、辿ると柱に固定されてた。もちろん銀さんも。ナニコレ動けないじゃん。ちょっとは歩けるけど、範囲狭っ。うん、とりあえず、
「やばいいいいい!!この後すぐ仕事あるのおおおお!!トシに怒られるううう!あの書類、今日締め切りなのに!どうしよう殺される!」
「落ち着けよ理御、その前にここで死ぬかもしれねーぞ」
「やだあああなんでこんな意味わかんないことで銀さんと一緒に死ぬのあたし!?」
「おいこら、銀さんと一緒に死ぬのが嫌って感じの言い方だぞ」
「うん嫌」
「泣いていい?」
「あたしが泣きそうだわ!」
せまい部屋でわあわあと喚いていると、ハッと思い出した。今の時点での救世主の存在を!
「あ、そうだ携帯!!」
「おお!!」
携帯があればトシに言い訳できる。なんとか命つながる。…って、それどころじゃないか。あわよくば、ネットが繋がれば現在位置も分かるかも!あたしは必死にポケットを探った。すると、固い手触り。
「あったァァァ!」
「うおおおお理御ちゃんさすが!」
「まあねっ」
無機質なその機械が神々しく見えた。開くと、時刻は3時すぎ。定食屋さんに行ったのがちょうど12時くらいだったから、かなり時間がたってる。あーあ、もうこれはアウトだな。鬼の副長がご立腹なはずだ。
圏外、なんてこともない。心底安心して、トシの携帯の番号をぽちぽち押して行く。
「あとで俺にも貸して」
「はいはい」
銀さんも万事屋に電話しなくちゃだもんね。神楽ちゃんと新八君も心配してるはずだ。
何回目かのコールが耳元で鳴る。なかなか出てくれない。出てくれるよね?心配になって来た。早く出てくれトシぃぃいい!
『てんめえええ理御ーーっ!!』
「わっ」
やっと出たかと思うと、耳元でキィィンと鼓膜に響く。やっぱご立腹です。銀さんにも余裕で聞こえて、嫌そうな顔をしていた。
『今どこにいんだてめえ、サボるなんざ良い度胸じゃねえか。切腹させるぞコラ』
「いやあ、これには海より深ーい訳が…」
ありまして、と言おうとしたとき、銀さんが携帯をひったくった。
「うっせーんだよ大串君よォ。もうちょっと静かに出来ねーの?」
『ァあ!?その声は万事屋か!?なんでてめーがいんだよ!!つーか俺大串じゃねーし!!』
あーあ、何してくれちゃってんのかなあ。余計ややこしくなるでしょーが。頭を抱えたくなった。
「今、俺と理御、拉致されてどっかに監禁されてる。首輪と鎖で繋がれてて、出れねえ感じ。つーことで助けてー」
『っはァァァァ!?どういうことだよ!!』
「俺達にもさっぱりわけわかんねえよ。なんで昼メシ食べてたらこんなとこに連れて来られんだよ」
『お、おいとにかく理御にかわれ!』
銀さんに携帯を渡されて代わる。銀さんは大きくため息を吐いてごろんと横になった。
「もしもし。かわったけど」
『おい、ちゃんと説明しろ』
トシは焦っているのだろう、少しどもっていて早口だ。こっちは逆になぜか冷静になってきたよ。
「銀さんの言ったとおり。本当にこっちもパニックなの。昼ごはん食べてて、なぜか誰かに眠らされて、起きたら知らない所だったのよ」
『…マジかよ…』
「助けてトシ。たぶんね、江戸のどこか」
『アバウトすぎんだろ、どこかもわかんねーのかよ』
「うん」
横から銀さんが口を挟む。
「おい大串君、こちとら"二人っきり"なんだからなァ。早く助けに来ねーと、手遅れになっちまうかもよ」
いろんな意味で、と銀さんがトシに言う。なぜか二人っきりを強調した。それを聞いてトシはまた声を荒げた。
「ァあ!?何だとおい!!」
「トシうるさい」
「万事屋…てめえ覚えとけよ…いつか絶対殺してやる」
「やってみればァ?てか、今死にそうなんだけどねー」
そんなに危機的状況じゃないけど、長期戦になると見ての事だ。
「とにかく、やばいから…早く助けに来」
ブツッ。
…え。急に、切れたよ。…まさか…
携帯をおそるおそる見ると、
充電してください
と出て、光を失った。
「嘘でしょォォォォッ!?」
たった今、救世主が天に召された。
拉致☆監禁
(おいっ!理御!?…切れた)
(理御がどうかしたんですかィ)
(…拉致られた)
(…は?)