どうにかしてくれ
「ついたわ」

「ついたのう」

「離れてよ辰馬」

「嫌じゃ」


万事屋にやっとついたころには、なぜか辰馬があたしにすごく懐いてしまった。さっきから、腕にひっついて離れず、お尻を触ったりほっぺたをつつかれたり。


「やめんかァァァ!」

「ぐどふぉっ」


何度目かしれない蹴りをくらわせると奇声を発しながら階段から転がり落ちた。なんか、無駄に疲れた…。少しやつれながらインターホンを押す。


ピンポーン。


「はい…って理御さん!!久しぶりです!どうしたんですか?」

「はろー、新八君。依頼しに来たんだけど、銀さんいるかしら」

「いますよ!銀さん、神楽ちゃん!理御さん来てるよ!」


靴を脱ぎ、お邪魔しまーす。中に入ると、酢昆布を食べていた神楽ちゃんが嬉しそうに駆け寄って来た。


「理御!会いに来てくれたアルか!?嬉しいアル!」

「ふふ。久しぶり神楽ちゃん」


頭を撫でる。と、ジャンプを読んでいた銀さんが立ち上がって神楽ちゃんを押しのけた。


「おう、どした理御。何、銀さんに会いにきてくれたの?」

「そうだよ」

「はっ!?」


銀さんはぱちくりした後、なぜか照れ臭そうに顔を背けた。ん?いや、辰馬を会わせに来ただけなんだけどね?すると、押しのけられた神楽ちゃんがムキになって今度は銀さんを押しのけた。


「銀ちゃん何するアルか!」

「邪魔だったんだよガキ!」

「何を〜!そんな言ってどうせ理御を独り占めしたいだけネ!」

「うっせー!」

「ちょっとちょっと!理御さんは依頼があるんですよ!」

「依頼ィ?」

「あ、そうだった」


喧嘩が始まりそうだったが、新八君が止めてくれた。さすがだ。


「そうなの。依頼っていうのは…」


そのとき、玄関から足音が聞こえた。


「ひどいぜよ理御!まあもう慣れて来たけどのォ、アッハッハ!」


ずかずかと入ってきて隣に立つなり、頭に腕をのせて寄りかかってきた。


「久しぶりぜよ金時!元気にしちょったがかー?」

「この人をどうにかして」


隣のモジャモジャ頭を指差す。銀さん達はぽかんとしていたが、大声で騒ぎ出した。


「辰馬!?なんでいるんだよ!」

「何じゃ、いちゃ悪いか」

「このモジャモジャを殺ればいいアルか?」

「何言ってんのォォォ!?」

「セクハラばっかなのよこいつ」


そうしている間にもお尻に伸びてきた手をつねる。


「あいたたっ!」

「てんめえ私の理御に何してるアルか!!」

「セクハラってこれですか」

「何やってんのお前」


辰馬はアッハッハと笑うと、あたしの頭をポンポンと軽く叩いた。


「理御を気に入ったんぜよ。一緒に宇宙に行くんじゃ」

「すでに決定事項!?」


いつのまに決まっちゃったの!?本人の意思は関係ないの!?


「何言ってんのおまえ。理御は真選組副長補佐だぞ。無理に決まってんでしょーが」


銀さんが呆れたように言うも、辰馬はものともせずに答えた。


「そんなもん、ちょっと誘拐すればいいんじゃき」

「何企んでるの!?」

「そんなこと許さないヨ!」


誘拐されちゃうのあたし!?すると、銀さんにあたしの腰を引き寄せられてぐらりと傾き、銀さんの胸板に頭が当たる。


「実はな、こいつは俺の彼女なんだよ。恋人同士。だから諦めるこった」

「!?」


まさかの言葉が銀さんの口から出て、あたしは銀さんを見つめて目を見開き、口をパクパクさせた。初耳なんだけど!?何言ってんのこの人!?


「本当か!?…じゃあしかたないがぜよ」

「そうそう、だから早く宇宙でもどこでもさっさと帰れってんだ」


全くの嘘を信じきって頭をかいた辰馬。そのとき、神楽ちゃんが鬼の形相で銀さんを背負い投げした。


「銀ちゃん何言ってるアルかァァァ!!」

「げぼぉぉあっ!!」

「そんなこと聞いてないアル!嘘ついたってムダネ!理御の顔が物語ってるアル!」

「そうですよ!!嘘言わないでください!!びっくりするじゃないですか!!」


床が神楽ちゃんの投げの衝撃に耐えきれず嫌な音を立てたが、銀さんがなんとか立ち上がる。


「だからっ、嘘は方便と言うだろうが!」

「あ、そういうことね…びっくりしたわ…」


辰馬に諦めさせようとしての嘘だったってワケか。あたしは無駄に疲れて胸を撫で下ろした。


「嘘だったんか金時ィィィ!」

「ほら見ろ騙せそうな感じだったのにィィィ!」

「いや変な誤解も嫌だし!」


またギャーギャーと騒ぎ出す。あたしはため息をついてから、騒ぎに乗じてそうっとその場を離れたのだった。







どうにかしてくれ

(理御ーっ、わしと宇宙へ行)
(言わせねーよ!)
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