屯所に帰る途中、携帯を折ろうかと握り締めているともう一通のメールが届いた。誰からかと思えば、それはトシからだった。
【緊急連絡。非常事態発生。鉄が誘拐された。至急屯所に戻れ】
文面を読み終わらないうちに携帯を叩くように閉じ、ポケットに入れて地面を蹴った。
*
「近藤さんっ!ただいま戻りました!」
全力疾走で屯所に戻ると、みんなパトカーを出す寸前だった。ギリギリセーフ。間に合ってよかった…!!
「やっと戻って来たか理御ちゃん、早くこっちに乗ってくれ。話は中でする」
「分かった」
パトカーに急いで乗り込む。すぐにパトカーが動き出した。運転はトシ、助手席に近藤さん、そして後部座席にあたし。身を乗り出して状況を聞く。
「何があったの?」
「鉄は…攘夷浪士と繋がりがあったらしい。知らなかったよ…。そいつらが裏切り者として鉄をさらって、人質にしてる」
「攘夷浪士と…!?」
近藤さんが説明してくれる。攘夷浪士と繋がりがあったなんて、真選組の隊士としてはあるまじき行為。鉄……。
「鉄取り返して敵ぶった切って、早くみんなで帰るぞ。俺達の家に」
そう言うトシの運転は、とても荒かった。
*
ファンファンファンファン。
大量のパトカーがサイレンを鳴らしながら廃ビルの前に止まり、たくさんの隊士が出てくる。しかし、その隊士の色は、一色ではなく、黒と白。見廻組と真選組が対峙した。
「ご苦労様です。お互い大変ですね。あんな出来損ないのためにこんな所に駆り出される事になるとは」
佐々木さんが敬礼をする。攘夷浪士と鉄との繋がりを知っていたようだ。
「総員出撃だ。人質に構う事はない、攘夷浪士を残らず殲滅するのだ」
右手をあげて冷たく言い放つ。近藤さんが慌てて動いた。
「まっ…待て佐々木殿!あんた弟を見殺しにする気か!!」
「ならば取引に応じると?残念ながら私の首はあなた程安くはありませんよ。だから言ったんです、腐ったゴミはそのまわりさえ腐らせると」
呆れたように、でも口調は変えずに淡々と続ける。
「どいてください。あなた達は自分の心配をなさった方がいい。一体どう責任をとられるのか…ファンとして楽しみにしていますよ」
そこまで聞いてから、トシがやっと動いた。佐々木さんの襟元を掴む。
「てめェ…鉄を道具に使いやがったな」
瞳孔がこれでもかと言う程開き、声が殺気を含んでいる。
「邪魔なもん二つ同時に消したかったのはお前の方だったってワケか」
「やめろトシ!」
近藤さんが止めようと声を張り上げても、聞こえていないようだった。
「誤解ですよ、私はあなた達のファンだと言ったでしょ」
「ってめーは一生人に罪をなすりつけてやがれ!!」
ついに刀に手をかけたトシ。
「トシっ!」
あたしがついトシを呼ぶ。そのとき近藤さんの後ろに殺気を感じ振り向くと、見廻組の女が刀を抜きかけたところだった。しまった____すると、いち早く反応した総悟がその刀のさやごとぶち抜いた。間一髪。
「やっ…やめろトシ!総悟!おちつけてめーら!今はんな事やってる場合じゃねーだろ!!」
そのとき、上から声がした。
「野郎共、サツ同士の潰し合いを見せてくれるらしいぜ!!こいつは見ものだぜ!早くやれよ!待ちきれなくて手がすべっちまいそうだ」
縛った鉄に刀を向ける攘夷浪士。やーれ、やーれというコールが響き渡る。トシが構わず刀を抜いた。
「正気ですか土方さん。そこをどきなさい」
「あいつらに乗るつもりはねェよ、だがここから先に行くってんなら通す訳にはいかねぇ。この先は…俺達がゆく道だ」
煙草をぐしっと足で踏み潰す。トシがまだしゃべっている間、近藤さんがこそっと耳打ちをして来た。
「理御ちゃんは、ここでトシ達と足止めしててくれ。俺達は別働隊で動く。お前は副長補佐だ。トシを頼む」
「わかったわ。気をつけて」
そっと廃ビルへ向かう近藤さんと総悟とザキを見送った。トシに目を戻すと、トシと佐々木さんとの一騎打ちが始まる所だった。あたしは刀に手をかけながらも、トシから離れ、見廻組を囲む。トシの邪魔しちゃいけない。
「手ェ出すなよ理御」
「分かってる」
いざとなったら出すけどね。
トシと佐々木さんの、薔薇ガキと茨ガキの戦いが始まる___
瞬きさえ許さない、ものすごいスピードでめまぐるしく繰り広げられる。銃も所持しているから佐々木さんのほうか有利だ。銃でトシを狙い、その弾丸を避けた所を狙って刀を浴びせるという回避のしようがない攻撃。どんどんトシが押されて行き、傷を作っていく。
見ていられない、あたしも____
そのとき、甘んじて銃撃を受けて切りかかったトシの後ろで、爆発が起きた。貫通した弾丸が油の入ったタンクに直撃したのだ。そして爆発で宙に舞うトシを、佐々木さんの刀が_____
「副長ォォォォォオ!!」
「トシぃいいいい!!」
ばっと駆け出し、倒れたトシを囲む。トシは血まみれで倒れていた。
「トシっ!しっかり!」
あたしがいながら…!!近藤さんにトシを頼まれたのに!!ごめんトシ…!!
佐々木さんは銃をくるくると指で回し、ニヤリと嗤って振り向いた。
「茶番はオシマイです」
動き始める見廻組。
オシマイ?まだ…何も終わっちゃいない。
「…まだよ」
そこに転がっていた、トシが使っていた刀を拾ってゆらりと立ち上がる。そして見廻組の前に立ちふさがり、佐々木さんを睨んだ。
「選手交代よ。次はこの副長補佐を相手してもらおうじゃない」
「副長補佐……」
「補佐…!」
スラリと刀身を抜く。
右手には自分の刀を、左手にはトシの刀を持つ。
「無駄な事だと気づかないのですか。…いいでしょう。二刀流だとでも言うのですか?女とて容赦はいたしませんよ」
「わかってる、容赦は無用!副長をやられて黙ってる副長補佐じゃないわよ!!」
渾身の力を込めて地面を蹴った。
緊急事態発生
見廻組vs真選組
【緊急連絡。非常事態発生。鉄が誘拐された。至急屯所に戻れ】
文面を読み終わらないうちに携帯を叩くように閉じ、ポケットに入れて地面を蹴った。
*
「近藤さんっ!ただいま戻りました!」
全力疾走で屯所に戻ると、みんなパトカーを出す寸前だった。ギリギリセーフ。間に合ってよかった…!!
「やっと戻って来たか理御ちゃん、早くこっちに乗ってくれ。話は中でする」
「分かった」
パトカーに急いで乗り込む。すぐにパトカーが動き出した。運転はトシ、助手席に近藤さん、そして後部座席にあたし。身を乗り出して状況を聞く。
「何があったの?」
「鉄は…攘夷浪士と繋がりがあったらしい。知らなかったよ…。そいつらが裏切り者として鉄をさらって、人質にしてる」
「攘夷浪士と…!?」
近藤さんが説明してくれる。攘夷浪士と繋がりがあったなんて、真選組の隊士としてはあるまじき行為。鉄……。
「鉄取り返して敵ぶった切って、早くみんなで帰るぞ。俺達の家に」
そう言うトシの運転は、とても荒かった。
*
ファンファンファンファン。
大量のパトカーがサイレンを鳴らしながら廃ビルの前に止まり、たくさんの隊士が出てくる。しかし、その隊士の色は、一色ではなく、黒と白。見廻組と真選組が対峙した。
「ご苦労様です。お互い大変ですね。あんな出来損ないのためにこんな所に駆り出される事になるとは」
佐々木さんが敬礼をする。攘夷浪士と鉄との繋がりを知っていたようだ。
「総員出撃だ。人質に構う事はない、攘夷浪士を残らず殲滅するのだ」
右手をあげて冷たく言い放つ。近藤さんが慌てて動いた。
「まっ…待て佐々木殿!あんた弟を見殺しにする気か!!」
「ならば取引に応じると?残念ながら私の首はあなた程安くはありませんよ。だから言ったんです、腐ったゴミはそのまわりさえ腐らせると」
呆れたように、でも口調は変えずに淡々と続ける。
「どいてください。あなた達は自分の心配をなさった方がいい。一体どう責任をとられるのか…ファンとして楽しみにしていますよ」
そこまで聞いてから、トシがやっと動いた。佐々木さんの襟元を掴む。
「てめェ…鉄を道具に使いやがったな」
瞳孔がこれでもかと言う程開き、声が殺気を含んでいる。
「邪魔なもん二つ同時に消したかったのはお前の方だったってワケか」
「やめろトシ!」
近藤さんが止めようと声を張り上げても、聞こえていないようだった。
「誤解ですよ、私はあなた達のファンだと言ったでしょ」
「ってめーは一生人に罪をなすりつけてやがれ!!」
ついに刀に手をかけたトシ。
「トシっ!」
あたしがついトシを呼ぶ。そのとき近藤さんの後ろに殺気を感じ振り向くと、見廻組の女が刀を抜きかけたところだった。しまった____すると、いち早く反応した総悟がその刀のさやごとぶち抜いた。間一髪。
「やっ…やめろトシ!総悟!おちつけてめーら!今はんな事やってる場合じゃねーだろ!!」
そのとき、上から声がした。
「野郎共、サツ同士の潰し合いを見せてくれるらしいぜ!!こいつは見ものだぜ!早くやれよ!待ちきれなくて手がすべっちまいそうだ」
縛った鉄に刀を向ける攘夷浪士。やーれ、やーれというコールが響き渡る。トシが構わず刀を抜いた。
「正気ですか土方さん。そこをどきなさい」
「あいつらに乗るつもりはねェよ、だがここから先に行くってんなら通す訳にはいかねぇ。この先は…俺達がゆく道だ」
煙草をぐしっと足で踏み潰す。トシがまだしゃべっている間、近藤さんがこそっと耳打ちをして来た。
「理御ちゃんは、ここでトシ達と足止めしててくれ。俺達は別働隊で動く。お前は副長補佐だ。トシを頼む」
「わかったわ。気をつけて」
そっと廃ビルへ向かう近藤さんと総悟とザキを見送った。トシに目を戻すと、トシと佐々木さんとの一騎打ちが始まる所だった。あたしは刀に手をかけながらも、トシから離れ、見廻組を囲む。トシの邪魔しちゃいけない。
「手ェ出すなよ理御」
「分かってる」
いざとなったら出すけどね。
トシと佐々木さんの、薔薇ガキと茨ガキの戦いが始まる___
瞬きさえ許さない、ものすごいスピードでめまぐるしく繰り広げられる。銃も所持しているから佐々木さんのほうか有利だ。銃でトシを狙い、その弾丸を避けた所を狙って刀を浴びせるという回避のしようがない攻撃。どんどんトシが押されて行き、傷を作っていく。
見ていられない、あたしも____
そのとき、甘んじて銃撃を受けて切りかかったトシの後ろで、爆発が起きた。貫通した弾丸が油の入ったタンクに直撃したのだ。そして爆発で宙に舞うトシを、佐々木さんの刀が_____
「副長ォォォォォオ!!」
「トシぃいいいい!!」
ばっと駆け出し、倒れたトシを囲む。トシは血まみれで倒れていた。
「トシっ!しっかり!」
あたしがいながら…!!近藤さんにトシを頼まれたのに!!ごめんトシ…!!
佐々木さんは銃をくるくると指で回し、ニヤリと嗤って振り向いた。
「茶番はオシマイです」
動き始める見廻組。
オシマイ?まだ…何も終わっちゃいない。
「…まだよ」
そこに転がっていた、トシが使っていた刀を拾ってゆらりと立ち上がる。そして見廻組の前に立ちふさがり、佐々木さんを睨んだ。
「選手交代よ。次はこの副長補佐を相手してもらおうじゃない」
「副長補佐……」
「補佐…!」
スラリと刀身を抜く。
右手には自分の刀を、左手にはトシの刀を持つ。
「無駄な事だと気づかないのですか。…いいでしょう。二刀流だとでも言うのですか?女とて容赦はいたしませんよ」
「わかってる、容赦は無用!副長をやられて黙ってる副長補佐じゃないわよ!!」
渾身の力を込めて地面を蹴った。
緊急事態発生
見廻組vs真選組