見廻組局長と真選組副長補佐
次の日から鉄は変わった。
何が起きたの?と目を疑うほど態度と顔つきが変わった。てか顔つき変わりすぎ!!本当に何があったの!?本人はもともとコレで、グラサンで隠してたって言ってたけど、それにしては別人なんだけどォォォ!!
あたしは見廻りでてくてくと歩きながら、鉄のキラキラしたあの目を思い出した。


「なーにが『副長補佐、何かやる事ありませんか!』なんだか。初対面の時とは比べ物になんないわ。『副長補佐、お胸をおもみしましょうか!』はアウトだけど」

「おや、真選組の副長補佐殿ではありませんか」


ぶつぶつと独り言を呟いていると、声をかけられ視界に捉える。真選組によく似た真っ白い隊服でモノクルをつけた紳士。
この人は…


「…見廻組がこんなところにいるなんて珍しいわね。見廻組局長なんてエリート様があたしをご存知なんて光栄だわ。お初にお目にかかります、真選組副長補佐の天海理御です」


にやっと笑って軽く頭を下げると淡々とした声が返って来た。


「さすが真選組の唯一の女隊士、野蛮でがさつなそちらの隊士とは違っていくらかは常識があるようですね」


上から目線にカチンと来たが、気にしたら負けだ。表情には出さずに軽く流す。今度は相手が自己紹介する番だ。


「私は見廻組局長、佐々木異三郎と申します。以後よろしくお願いします」


見廻組局長、佐々木異三郎。名門佐々木家のご子息、鉄のお兄さん。エリートぞろいの見廻組の中でもエリートのボンボンだ、こいつに、トシが喧嘩を売ったらしい。チンピラ警察だなんて言われてる真選組とは違い、きっちり役目をこなす忠実なる集まりの見廻組。その見廻組にトシが喧嘩を売ったということは、それだけの何かがあったということで。


「ウチの副長がご無礼をしたようで。何があったか、深くは知らないけど」


モノクルの奥の眼を一睨みした。


「ウチを容易く蹴落とせるなんて思わない事ね」

「…そうですか、肝に命じておきますよ」


表情一つかえずにそう答える佐々木さんは、おもむろに携帯を取り出しいじり出した。


「ところで、私とメル友になりませんか。というかもうアドレス登録したのでメールして下さいね」

「は?って、あたしの携帯!」


いつのまにやらあたしの携帯まで持っていて、パタンと閉じて渡された。思いっきり嫌そうな顔をしてアドレス帳を開くと、サブちゃんと書かれたアドレスを見つけた。…サブちゃん?


「ああ、あなたのアドレスはりおんたんでよろしいですよね」


ピッピッと音がする。…なんなんだこの人。ドン引きなんだけど。


「そちらに私の愚弟が厄介になっているでしょう。あんな出来損ない、ゴミも同じ。早めの処理をお願いします。先ほどそちらの一番隊隊長殿にもそう言ったところです」


携帯を閉じながらあたしにそう言った。あたしは眉間にしわを寄せた。仮にも弟を、ゴミだとこの男は口にしたんだ。トシは間違っていなかった。


「…今の鉄は前の鉄と違う。変わろうとしてるの、あいつは。ゴミなんて言わないでくれる?」

「ゴミも集まれば燃えるでしょう」

「…そりゃあたしたちの事を言ってんの?」

「そうは聞こえませんでしたか」


燃えるゴミ呼ばわり、ね。どうやら黒と白は相入れないみたいだ。


「では、またお会いしましょう。私、ヒマではないもので」

「奇遇ね、あたしもよ。…最後に一つ、言わせて」

「…何でしょうか」


ザッと足を踏み出して、距離を近づける。そして、凛と言い放った。


「…あんまり、あたし達を舐めないで。エリートでもなんでもない、庶民で野蛮人の寄せ集めかもしれないけど…それでも、見廻組とは違う、見廻組にはない強さを持ってる。舐めてかかってたら痛い目に合うよ」


ではこれで、と吐き捨てるように言ってそこから立ち去る。内心、はらわたが煮えくりかえってたけれど、携帯の着信音が聞こえて半ばヤケクソで開いた。


【そんなに怒らないでお☆また会おうねりおんたん(^^)/~~~P.Sりおんたんからもメールしてネ】


携帯を握りつぶしそうだった。







見廻組局長と真選組副長補佐

第一印象最悪。
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