真選組に、新入りが来た。
「佐々木鉄之助?」
「ああ。名門佐々木家のご子息だ。だがどうした事か彼だけは職にもつかず悪さばかりしている悪ガキらしくてな。手が付けられないと真選組で預かる事になった」
その佐々木鉄之助は、帽子を反対にかぶり、グラサン、ガムをくちゃくちゃと噛み、ケータイをいじる見るからにガラの悪い悪ガキといった感じだった。道場の壁に寄りかかり、やる気もまるでなし。
扉からその様子を道着姿の近藤さんとトシと総悟、それから同じく道着姿のあたしが眺めていた。
「要するに、世間体気にした親に見捨てられた落ちこぼれのボンボンですかィ」
腕をくんだ総悟が言う。
「近藤さん、ココは更生施設じゃねーんだぜ」
「そうよ、なんで真選組?普通は見廻組じゃないの?」
竹刀を肩に乗せたトシが言うと、あたしも賛成した。それには総悟が淡々と答えた。
「そーいうところたらい回しになって最終的に底辺のココに落ち着いたんでしょ。いいですよ俺の一番隊で預かります。前線に立たせて即殉職させてやりまさァ」
「いやいや、何かあったら上に何を言われるか…」
あれでも名門の御子息だからってか。また厄介な奴が来たもんだ。じゃあ、どうしろと言うのか。トシが提案を出す。
「じゃあ雑用係でもやらせるか」
「いやそれも角が立つし…」
近藤さんがあれもそれも渋る。めんどくさいなあ、とため息をつくとターゲットはトシに向いた。
「そういえばトシ、お前雑務が増えたから小姓が欲しいとか言ってなかったっけ」
「え"」
小姓!?そう来たか。トシのサポートはあたしがいるのに…
「え!?ちょ、ちょっと近藤さん!トシにはあたしがついてるでしょ!?」
「理御ちゃんは副長補佐としての仕事もあるし、トシの身の回りまでは気を使えん。うん、小姓を頼もう」
「お、おい待てよ近藤さん!」
いつのまにやら決まってしまい、あたしとトシは顔を見合わせた。
*
「ちぃす、TETUっス。」
副長室に乗り込んで来た鉄之助はくちゃくちゃとガムを噛みながらあまりにも軽いノリで拳を突き出して来たのだった。
「えーとドカタさんでしたっけ?お互いフェアに行こうぜって事でよろしくTOSHI、イェーイ」
数秒、沈黙が流れる。チラリとトシを見ると、怒りに震えて青筋をたてながら瞳孔かっ開きながら鉄之助を睨んでいた。ヤバイヤバイ、これはトシがキレる!!そこで、少し前の近藤さんの言葉が蘇る。
『ココを追い出されたらあいつ本当に行き場がなくなっちまう。多少の事は目をつぶってやれ。ゆっくり色々教えてやればいいさ』
そう言われてるからにはなんとか理性を抑えないといけない。あたしは慌ててトシの肩を叩いた。トシはハッとして、ひきつった笑みを浮かべて拳を合わせる。
「い…イエーイ…よろしくTETU」
よくやった!!よくやったトシ!
その後、決めゼリフのように言葉を言い残して鉄之助が立ち去るとトシはあたしの肩を掴むとがくんがくんと揺らした。
「おい今のなんだよ理御ーっ!あー斬りてえ切腹だあんなん!」
「お、落ち着いてトシ!ゆっくり教えればいいのよ!」
「ゆっくりってどれ位ゆっくり!?俺の理性が保たねえぞ!」
「落ち着いてェェェ!!」
それからというもの、真選組は乱れまくり。食堂の配給さえまともに出来ず、道場で練習のときもなぜかバスケをして近藤さんがそれにノったり。
トシは精神的にかなりキてるようだった。
「…理御、ちょっと鉄とパトで見廻り行ってくっから資料整理頼む」
「了解。…大丈夫?トシ。あたしが行こうか?」
「いや、俺の小姓だから」
「うん…あのさ、」
「分かってる。ゆっくり教えればいいんだろ?」
「…うん。いってらっしゃい」
煙草に火をつけ、パトカーに乗り真選組を出た直後から、騒音公害で逮捕出来そうなくらいガンガンヒップホップを鳴らしていた。ため息を深くつくと、隣に総悟が立った。
「…大丈夫なんですかィ、あのボンクラ」
「…まあ、ね。時間かかりそう。でも、それでもだめならあたしが直接ありがたい説教をくれてやるわ。あんなんでも、もう真選組の隊士でしょ」
そう言って後ろを振り返り、副長室のふすまを閉めたのだった。
*
ふすまが勢い良く開かれ、それまで机に向かってペンを走らせていたが顔をあげると、トシがいつになく機嫌悪そうに瞳孔を開いてドカドカと入って来た。
「おかえり。どうかした?トシ」
「…見廻組」
「見廻組がどうかしたの?」
ゴロンと横になり、吐き捨てるように言うと寝返りをうった。
「ムカついたから、喧嘩売って来た」
あんぐりと口を開ける。またやらかしたの、という言葉が喉から出そうになったけど、その言葉を飲み込んでため息混じりに微笑んだ。
「…そ。また忙しくなりそうね」
あたしもペンから手を離し、ゴロンと横になった。
ボンクラの入隊
(喧嘩が始まる、デカい喧嘩が)
「佐々木鉄之助?」
「ああ。名門佐々木家のご子息だ。だがどうした事か彼だけは職にもつかず悪さばかりしている悪ガキらしくてな。手が付けられないと真選組で預かる事になった」
その佐々木鉄之助は、帽子を反対にかぶり、グラサン、ガムをくちゃくちゃと噛み、ケータイをいじる見るからにガラの悪い悪ガキといった感じだった。道場の壁に寄りかかり、やる気もまるでなし。
扉からその様子を道着姿の近藤さんとトシと総悟、それから同じく道着姿のあたしが眺めていた。
「要するに、世間体気にした親に見捨てられた落ちこぼれのボンボンですかィ」
腕をくんだ総悟が言う。
「近藤さん、ココは更生施設じゃねーんだぜ」
「そうよ、なんで真選組?普通は見廻組じゃないの?」
竹刀を肩に乗せたトシが言うと、あたしも賛成した。それには総悟が淡々と答えた。
「そーいうところたらい回しになって最終的に底辺のココに落ち着いたんでしょ。いいですよ俺の一番隊で預かります。前線に立たせて即殉職させてやりまさァ」
「いやいや、何かあったら上に何を言われるか…」
あれでも名門の御子息だからってか。また厄介な奴が来たもんだ。じゃあ、どうしろと言うのか。トシが提案を出す。
「じゃあ雑用係でもやらせるか」
「いやそれも角が立つし…」
近藤さんがあれもそれも渋る。めんどくさいなあ、とため息をつくとターゲットはトシに向いた。
「そういえばトシ、お前雑務が増えたから小姓が欲しいとか言ってなかったっけ」
「え"」
小姓!?そう来たか。トシのサポートはあたしがいるのに…
「え!?ちょ、ちょっと近藤さん!トシにはあたしがついてるでしょ!?」
「理御ちゃんは副長補佐としての仕事もあるし、トシの身の回りまでは気を使えん。うん、小姓を頼もう」
「お、おい待てよ近藤さん!」
いつのまにやら決まってしまい、あたしとトシは顔を見合わせた。
*
「ちぃす、TETUっス。」
副長室に乗り込んで来た鉄之助はくちゃくちゃとガムを噛みながらあまりにも軽いノリで拳を突き出して来たのだった。
「えーとドカタさんでしたっけ?お互いフェアに行こうぜって事でよろしくTOSHI、イェーイ」
数秒、沈黙が流れる。チラリとトシを見ると、怒りに震えて青筋をたてながら瞳孔かっ開きながら鉄之助を睨んでいた。ヤバイヤバイ、これはトシがキレる!!そこで、少し前の近藤さんの言葉が蘇る。
『ココを追い出されたらあいつ本当に行き場がなくなっちまう。多少の事は目をつぶってやれ。ゆっくり色々教えてやればいいさ』
そう言われてるからにはなんとか理性を抑えないといけない。あたしは慌ててトシの肩を叩いた。トシはハッとして、ひきつった笑みを浮かべて拳を合わせる。
「い…イエーイ…よろしくTETU」
よくやった!!よくやったトシ!
その後、決めゼリフのように言葉を言い残して鉄之助が立ち去るとトシはあたしの肩を掴むとがくんがくんと揺らした。
「おい今のなんだよ理御ーっ!あー斬りてえ切腹だあんなん!」
「お、落ち着いてトシ!ゆっくり教えればいいのよ!」
「ゆっくりってどれ位ゆっくり!?俺の理性が保たねえぞ!」
「落ち着いてェェェ!!」
それからというもの、真選組は乱れまくり。食堂の配給さえまともに出来ず、道場で練習のときもなぜかバスケをして近藤さんがそれにノったり。
トシは精神的にかなりキてるようだった。
「…理御、ちょっと鉄とパトで見廻り行ってくっから資料整理頼む」
「了解。…大丈夫?トシ。あたしが行こうか?」
「いや、俺の小姓だから」
「うん…あのさ、」
「分かってる。ゆっくり教えればいいんだろ?」
「…うん。いってらっしゃい」
煙草に火をつけ、パトカーに乗り真選組を出た直後から、騒音公害で逮捕出来そうなくらいガンガンヒップホップを鳴らしていた。ため息を深くつくと、隣に総悟が立った。
「…大丈夫なんですかィ、あのボンクラ」
「…まあ、ね。時間かかりそう。でも、それでもだめならあたしが直接ありがたい説教をくれてやるわ。あんなんでも、もう真選組の隊士でしょ」
そう言って後ろを振り返り、副長室のふすまを閉めたのだった。
*
ふすまが勢い良く開かれ、それまで机に向かってペンを走らせていたが顔をあげると、トシがいつになく機嫌悪そうに瞳孔を開いてドカドカと入って来た。
「おかえり。どうかした?トシ」
「…見廻組」
「見廻組がどうかしたの?」
ゴロンと横になり、吐き捨てるように言うと寝返りをうった。
「ムカついたから、喧嘩売って来た」
あんぐりと口を開ける。またやらかしたの、という言葉が喉から出そうになったけど、その言葉を飲み込んでため息混じりに微笑んだ。
「…そ。また忙しくなりそうね」
あたしもペンから手を離し、ゴロンと横になった。
ボンクラの入隊
(喧嘩が始まる、デカい喧嘩が)