山崎があんぱん片手に酒を飲んでいると、真っ赤になった理御と後からついて来た総悟がどっかりと隣に座った。
「ザキぃ、飲んでるぅ?ヒック」
「ちょっ…理御さん、どんだけ酔ってんですか!?もうベロンベロンじゃないすか!」
「さ、飲んで飲んでぇ!」
無理強いする理御を見て、さすがに止めようと立とうとしたら、近藤さんが近づいた。
「そこらへんでやめておけ、理御ちゃん」
「んん〜?あ、こーんどーうさーん!」
理御がゆっくり振り向けば、そこには相変わらず全裸な近藤さんが仁王立ちしていた。
「あまり無理強いはするもんじゃない。にしても、ずいぶん酔ったな理御ちゃん」
「局長ォォ!助かりました!」
「チッ、おもしろくねーな」
山崎があんぱんをくわえて避難する。理御はよしっとなぜか気合を入れて、立ち上がった。
「近藤さん、あたしも脱ぐ!」
「え!?」
「もう暑くて熱くて!ヒック」
ばさ、とまずは上着を脱ぎ捨てる。いやいやいやっこれは…!!
隊士達の視線が理御に集まり、歓声を上げて見つめる者や雄叫びをあげる者、拍手をする者や口笛も飛び交う。
スカーフも取り、ベストまで脱ぎ去る。その次の、最後の砦のブラウスシャツのボタンに手をかけたところで、近藤さんがハッとして慌てて止めに入った。
「理御ちゃん!落ち着こう!さすがにそれは!ねっ!」
「そ、そうだ!やめろ理御!」
「ええ〜?まあいいや、だいぶ涼しくなったわ」
近藤さんとの必死の努力でボタンを二つ外したところでとどまった。がっくりとうなだれた隊士が一体何人いたことか。
「さあみんなジョッキを持ってぇ二度目の乾杯行きましょーぅ!ヒック!」
「「「おぉぉ!!」」」
「かんっぱーぃ!」
「「「かんっぱーい!!」」
そしてまた続きが始まる。理御は満足そうに笑っていたが、手を引いて座らせた。そばには俺、総悟、そして近藤さん。理御はこの幼馴染の三人に囲まれ、安心したのか真っ赤な顔でへらりと笑った。
「うふふ〜、どうしたの三人とも。なんだか嬉しいなぁ、このメンツは。ヒック…」
「これ以上暴走しねェように見とかねェとな」
「そんなカッコで、ほかの隊士どもに喰われちゃァたまんねーからな」
「理御ちゃんはお父さんが守るからね!こうしてここで俺達と話しておけばいいのさ。昔話でもしてようじゃないか」
理御はパッと嬉しそうに顔をほころばせたが、それよりも酔いが上回り、不満そうにする。
「えぇ〜?どうせならパーッと楽しくいっちゃおうよぅ、無礼講なのよ〜?ヒック!」
「お前はすぐハメを外しすぎるだろが」
理御は納得出来ないようで、むうと膨れて近藤さんに迫る。
「ねーぇ近藤さぁん。もうちょっと遊んできていいでしょぉ?」
「ちょっ…理御ちゃん、離れようか」
「なんでよ。近藤さんとあたしの仲でしょぉ?」
ずいっと身を乗り出す理御は、トロンとしたまつげの長い目、真っ赤な顔、ぽってりとした唇に淡い微笑を浮かべている。ボタンを外しているので谷間も見えるし、かなり薄い着こなしなので身体の輪郭がハッキリと分かる。ぶっちゃけエロい。今さっき存分にけなしていた近藤さんに、今度は妖艶に迫っている。
近藤さんはごくりとツバをのみ、理御の肩を押して離れさせた。
「ご、ごほん。理御ちゃん、とにかく少し離れて」
あっさりと理御が離れると、近藤さんはヨロヨロと立ち上がり、前屈みになってどこかに歩いて行く。
「近藤さん?どこ行くんだ?この状態の理御を俺達に任せていっちまうのか?」
土方が声をかけると、近藤はゆっくり首だけ振り向き、汗だらだらでひきつった笑いをもらした。
「い、いや…ちょっと…厠に」
「近藤さん、まさか…」
「あぁあぁ言わないでェェェ」
マジかよ…。
近藤さんはその場を逃げるようによたよたと離れて、厠に向かったのだった。あえてもう一度言おう、近藤さんは全裸だ。
理御は去る近藤さんを不思議そうに見て、首をことりと傾けた。
「ねぇ、トシぃ。近藤さんどこ行ったのぉ?ヒック」
「さ、さあな。どこだろうな〜、なぁ総悟」
「厠で、」
「おいてめェェェ!!」
理御は今度は俺に向き直りまた迫り出した。
「トシぃ。遊ぼうよぉ、つまんない。ね、もう一杯鬼嫁飲んでいい?」
「だ、駄目だ。お前それ以上飲んだら昏倒すっぞ」
「えー?」
目の前に理御の顔、下には谷間という目のやり場に困る状況に、顔を真っ赤にして後ずさりする。総悟がおもしろくなさそうに舌打ちを一つして、理御をぐいっと引っ張る。
「うわっ?」
「俺が遊んであげまさァ」
「ほんと?やったぁ」
「総悟!」
「うっせー土方コノヤロー。ちょっと迫られただけで鼻の下のばしやがって、これだからマヨラーはいけねーや」
「いやマヨラー関係なくね!?」
そのとき、唯一この理御を止められる、ある人物が理御の背後に現れた。
「はいストォォォップ!」
スパァァン!
ハリセンで思いっきり叩かれた理御は、ばたっと前のめりに倒れて動かなくなった。
「お、おおお!お前っ!」
「…誰だっけ?」
「美紀です、副長、隊長」
女中の美紀。理御の親友だ、確か。美紀のハリセンで叩かれると、なぜか酔った理御は気絶したように寝てしまう。
興味のない奴は名前すら覚えない俺達は、美紀の顔さえうろ覚えで、美紀は呆れたように二人を見てから、理御に視線を落とす。
「全く。懲りずにまたこんなになるまで飲んじゃって…ちゃんと見といてくださいよ」
「いや俺は止めたんだが総悟が」
「責任転嫁ですかィ、土方さん」
「いや100%お前のせいだよ!」
理御をよいしょと起こして壁にあずける。理御は幸せそうにすやすやと眠っていた。
「局長はどこ行きましたか?」
「あー…まあ、厠だ。理御、どうすりゃいい?」
「部屋まで連れていってください」
「わかった」
頷いた俺を美紀はじろりと睨んだ。
「送り狼にならないでくださいね。理御に手ェだしたら、いくら副長といえどもただじゃおきませんからね」
「分ァってらァ」
「いや、怪しい。俺が行きまさァ」
「いや、隊長のほうが危ないんで副長にお願いします」
「どういう意味でィ」
「そーゆー意味です」
「…とにかく、部屋にやって寝かせてくりゃいいんだな」
「はい。お願いします」
お酒の力は偉大なり
____次の日、理御は宴会の出来事をさっぱり覚えておらず、二日酔いで苦しむ事になるのは言うまでもない。
「ザキぃ、飲んでるぅ?ヒック」
「ちょっ…理御さん、どんだけ酔ってんですか!?もうベロンベロンじゃないすか!」
「さ、飲んで飲んでぇ!」
無理強いする理御を見て、さすがに止めようと立とうとしたら、近藤さんが近づいた。
「そこらへんでやめておけ、理御ちゃん」
「んん〜?あ、こーんどーうさーん!」
理御がゆっくり振り向けば、そこには相変わらず全裸な近藤さんが仁王立ちしていた。
「あまり無理強いはするもんじゃない。にしても、ずいぶん酔ったな理御ちゃん」
「局長ォォ!助かりました!」
「チッ、おもしろくねーな」
山崎があんぱんをくわえて避難する。理御はよしっとなぜか気合を入れて、立ち上がった。
「近藤さん、あたしも脱ぐ!」
「え!?」
「もう暑くて熱くて!ヒック」
ばさ、とまずは上着を脱ぎ捨てる。いやいやいやっこれは…!!
隊士達の視線が理御に集まり、歓声を上げて見つめる者や雄叫びをあげる者、拍手をする者や口笛も飛び交う。
スカーフも取り、ベストまで脱ぎ去る。その次の、最後の砦のブラウスシャツのボタンに手をかけたところで、近藤さんがハッとして慌てて止めに入った。
「理御ちゃん!落ち着こう!さすがにそれは!ねっ!」
「そ、そうだ!やめろ理御!」
「ええ〜?まあいいや、だいぶ涼しくなったわ」
近藤さんとの必死の努力でボタンを二つ外したところでとどまった。がっくりとうなだれた隊士が一体何人いたことか。
「さあみんなジョッキを持ってぇ二度目の乾杯行きましょーぅ!ヒック!」
「「「おぉぉ!!」」」
「かんっぱーぃ!」
「「「かんっぱーい!!」」
そしてまた続きが始まる。理御は満足そうに笑っていたが、手を引いて座らせた。そばには俺、総悟、そして近藤さん。理御はこの幼馴染の三人に囲まれ、安心したのか真っ赤な顔でへらりと笑った。
「うふふ〜、どうしたの三人とも。なんだか嬉しいなぁ、このメンツは。ヒック…」
「これ以上暴走しねェように見とかねェとな」
「そんなカッコで、ほかの隊士どもに喰われちゃァたまんねーからな」
「理御ちゃんはお父さんが守るからね!こうしてここで俺達と話しておけばいいのさ。昔話でもしてようじゃないか」
理御はパッと嬉しそうに顔をほころばせたが、それよりも酔いが上回り、不満そうにする。
「えぇ〜?どうせならパーッと楽しくいっちゃおうよぅ、無礼講なのよ〜?ヒック!」
「お前はすぐハメを外しすぎるだろが」
理御は納得出来ないようで、むうと膨れて近藤さんに迫る。
「ねーぇ近藤さぁん。もうちょっと遊んできていいでしょぉ?」
「ちょっ…理御ちゃん、離れようか」
「なんでよ。近藤さんとあたしの仲でしょぉ?」
ずいっと身を乗り出す理御は、トロンとしたまつげの長い目、真っ赤な顔、ぽってりとした唇に淡い微笑を浮かべている。ボタンを外しているので谷間も見えるし、かなり薄い着こなしなので身体の輪郭がハッキリと分かる。ぶっちゃけエロい。今さっき存分にけなしていた近藤さんに、今度は妖艶に迫っている。
近藤さんはごくりとツバをのみ、理御の肩を押して離れさせた。
「ご、ごほん。理御ちゃん、とにかく少し離れて」
あっさりと理御が離れると、近藤さんはヨロヨロと立ち上がり、前屈みになってどこかに歩いて行く。
「近藤さん?どこ行くんだ?この状態の理御を俺達に任せていっちまうのか?」
土方が声をかけると、近藤はゆっくり首だけ振り向き、汗だらだらでひきつった笑いをもらした。
「い、いや…ちょっと…厠に」
「近藤さん、まさか…」
「あぁあぁ言わないでェェェ」
マジかよ…。
近藤さんはその場を逃げるようによたよたと離れて、厠に向かったのだった。あえてもう一度言おう、近藤さんは全裸だ。
理御は去る近藤さんを不思議そうに見て、首をことりと傾けた。
「ねぇ、トシぃ。近藤さんどこ行ったのぉ?ヒック」
「さ、さあな。どこだろうな〜、なぁ総悟」
「厠で、」
「おいてめェェェ!!」
理御は今度は俺に向き直りまた迫り出した。
「トシぃ。遊ぼうよぉ、つまんない。ね、もう一杯鬼嫁飲んでいい?」
「だ、駄目だ。お前それ以上飲んだら昏倒すっぞ」
「えー?」
目の前に理御の顔、下には谷間という目のやり場に困る状況に、顔を真っ赤にして後ずさりする。総悟がおもしろくなさそうに舌打ちを一つして、理御をぐいっと引っ張る。
「うわっ?」
「俺が遊んであげまさァ」
「ほんと?やったぁ」
「総悟!」
「うっせー土方コノヤロー。ちょっと迫られただけで鼻の下のばしやがって、これだからマヨラーはいけねーや」
「いやマヨラー関係なくね!?」
そのとき、唯一この理御を止められる、ある人物が理御の背後に現れた。
「はいストォォォップ!」
スパァァン!
ハリセンで思いっきり叩かれた理御は、ばたっと前のめりに倒れて動かなくなった。
「お、おおお!お前っ!」
「…誰だっけ?」
「美紀です、副長、隊長」
女中の美紀。理御の親友だ、確か。美紀のハリセンで叩かれると、なぜか酔った理御は気絶したように寝てしまう。
興味のない奴は名前すら覚えない俺達は、美紀の顔さえうろ覚えで、美紀は呆れたように二人を見てから、理御に視線を落とす。
「全く。懲りずにまたこんなになるまで飲んじゃって…ちゃんと見といてくださいよ」
「いや俺は止めたんだが総悟が」
「責任転嫁ですかィ、土方さん」
「いや100%お前のせいだよ!」
理御をよいしょと起こして壁にあずける。理御は幸せそうにすやすやと眠っていた。
「局長はどこ行きましたか?」
「あー…まあ、厠だ。理御、どうすりゃいい?」
「部屋まで連れていってください」
「わかった」
頷いた俺を美紀はじろりと睨んだ。
「送り狼にならないでくださいね。理御に手ェだしたら、いくら副長といえどもただじゃおきませんからね」
「分ァってらァ」
「いや、怪しい。俺が行きまさァ」
「いや、隊長のほうが危ないんで副長にお願いします」
「どういう意味でィ」
「そーゆー意味です」
「…とにかく、部屋にやって寝かせてくりゃいいんだな」
「はい。お願いします」
お酒の力は偉大なり
____次の日、理御は宴会の出来事をさっぱり覚えておらず、二日酔いで苦しむ事になるのは言うまでもない。