「カンパーイッ!!!」
「「「カンパーイッ!」」」
近藤さんの音頭に合わせて、みんなが一斉にジョッキを高く持ち上げ、ゴクゴクと気持ち良さげに音をたてて呑んだ。
「っはァー!おいしーっ!」
理御は男顔負けの飲みっぷりでジョッキの酒を飲み干すと、ダァンとテーブルにジョッキを叩きつけていた。
年に数回あるかないか、真選組の中の飲み会が開かれる。
それが今日。
無礼講ということで、多少の羽目を外しても良いのだ。いつもの仕事での疲れや鬱憤を思う存分晴らして、また明日からの仕事に向けて気持ちを切り替えて頑張ろう、というような意味がある飲み会らしいが、はたしてちゃんと意味のある飲み会になっているかは疑問だ。
俺は酒をジョッキの半分ほど飲んだところで、理御の隣に行った。
「良い飲みっぷりだな理御」
呆れたような感心したような声で言うと、理御は上機嫌でジョッキを掲げた。
「久しぶりだもん!トシ、おかわりついで!」
「自分でやれ自分で。ほらよ」
目の前にちょうどあった酒瓶を理御にやる。理御はそれをジョッキになみなみとついで、半分入っている俺のジョッキにも傾けた。
「あたしがお酌してあげるわ」
「珍しいな。じゃ、頼む」
ジョッキに継ぎ足すと、溢れそうなほどの自分のジョッキを手に取った。
「カンパイ、トシ」
「おう」
ガチャン、とぶつかる。ほんの少し理御のジョッキから酒がこぼれたが、気にしない事にした。
「飲み過ぎんなよ、理御。てめーは酒に強いってわけじゃねーんだからな」
「はいはい、分かってますよー」
すると、全裸の近藤さんが豪快に笑いながら近づいて来た。げ、と声を漏らした。
「飲んでるか〜トシ、理御ちゃん!」
「飲んでる飲んでる。だから、あまりあたしに近づかないで、全裸ゴリラ」
「…あれ?幻聴かな、理御ちゃんからゴリラって聞こえた気がしたんだけどなあ」
「きっと幻聴よ、頭がおかしくなったんだわ。あ、もうおかしかったか。ストーカーの上に全裸で踊るようなゴリラだし?ああ、あたしの目が腐る。そんな汚物を見せつけないで」
「…近藤さん、理御もうだいぶ酔ってるみてェだから」
「…だよね、理御ちゃんってば酔いがまわるの早いなあ…ハハ…」
テンションも酔いも上がってきていつになく毒舌な理御からのゴリラ連発に、乾いた笑いを浮かべて涙目になった。フォローはしたものの、こりゃ立ち直るのは時間がかかるな。
その後、近藤さんがしょぼんとしながら立ち去って行くと、理御はジョッキにちびちびと口をつけて俺に話しかけて来た。
「ねえトシ…トッシー」
「なんでわざわざ言い直した?あってたからな!」
「思ったんだけどさ、やっぱあたし、ここに来て良かったって思うのよね」
「どうした急に…」
「助けてくれてありがとう」
「…俺は何にもやってねェよ」
「明日からも、みんなのために頑張るね」
「おー、頑張ってくださいよ副長補佐殿」
「ふふっ」
理御は嬉しそうに笑いながらジョッキの中身を飲み干した。こんなに素直なのも珍しい。妙に照れ臭いが、酒でやり過ごした。
理御がほろ酔い気分でいると、総悟が酒瓶を持って歩いて来た。
「よォ、理御。飲んでやすかィ」
「飲んでるわよー。もうだいぶ気持ち良くなって来たわ」
総悟もある程度飲んで来たのか幾分か紅潮した顔で理御の隣にどっかと座り込んだ。俺と目が合うと、嫌そうに手で払った。
「土方コノヤローはどっか行って来ていいですよ」
「てめーがどっか行け」
「まあ土方さんのことはほっといて、理御、ジョッキがカラですぜィ。ついであげやす」
「なんか気持ち悪いなあ、総悟。まあいいや、ありがとう」
「そら、ついでやったんだ。一気、一気」
総悟についでもらった酒を一気に飲み干す。すると、間もなく理御はまつげの長い目をとろんとさせて、顔を真っ赤にしてぐらりと傾いた。
「む〜…このお酒おいしい。足りないわよぅ」
「まだいりやすか?」
「いるわ。もう一杯、総悟」
「へいへい」
「理御…?おま、なんで一杯でそんなになってんだ?…まさか総悟、その酒!?」
「ほらよ。…一丁あがりでさァ。この"鬼嫁"、やっぱうまいからな」
「鬼嫁ェェェ!?」
慌てて理御のジョッキを奪い取ろうとするが、理御はごきゅごきゅと音をたてて飲んでしまった。総悟がニヤリとしたり顔で俺を見る。鬼嫁は、アルコール度数の他の物より高い酒。理御はもともと酒にそんなに強いという訳でもなく、二、三杯ですでにほろ酔いだったので、鬼嫁の一気飲みで完全に出来上がってしまったのだった。
「んん…美味しかったぁ。もういいや」
ジョッキを置くと、時折、ヒックと肩を揺らし、間延びした呂律の回らない口調でフラフラと立ち上がった。
「総悟ぉ、ザキんとこいくわよ」
「へーい。じゃあ、土方さん」
「おいちょっと待てェェェ!総悟てめっ、理御が泥酔した時の事覚えてんだろォォォ!」
フラフラと歩いて行く理御について行こうとする総悟の服をガシッと掴む。
理御は泥酔すると止められなくなるのだ、いろんな意味で。これまでにも泥酔したことが何度かあった。そのときの理御を痛いほど経験している。やべぇぞこれは、デジャヴ。
「面白いじゃないっスか。いざとなったら止めるんで」
「止められねェだろ!」
「やめられないとまらない」
「かっぱえびせん…じゃなくてェェェ!」
「違いますよ、そこは『酔った理御』でさァ。ということで」
「知らねェからな!どうなっても!」
「はいはい」
総悟は手をひらひらと振り、ザキの隣に座った理御のもとへ行ったのだった。
真選組の大宴会
どうなることやら。俺は頭を抱えた。
「「「カンパーイッ!」」」
近藤さんの音頭に合わせて、みんなが一斉にジョッキを高く持ち上げ、ゴクゴクと気持ち良さげに音をたてて呑んだ。
「っはァー!おいしーっ!」
理御は男顔負けの飲みっぷりでジョッキの酒を飲み干すと、ダァンとテーブルにジョッキを叩きつけていた。
年に数回あるかないか、真選組の中の飲み会が開かれる。
それが今日。
無礼講ということで、多少の羽目を外しても良いのだ。いつもの仕事での疲れや鬱憤を思う存分晴らして、また明日からの仕事に向けて気持ちを切り替えて頑張ろう、というような意味がある飲み会らしいが、はたしてちゃんと意味のある飲み会になっているかは疑問だ。
俺は酒をジョッキの半分ほど飲んだところで、理御の隣に行った。
「良い飲みっぷりだな理御」
呆れたような感心したような声で言うと、理御は上機嫌でジョッキを掲げた。
「久しぶりだもん!トシ、おかわりついで!」
「自分でやれ自分で。ほらよ」
目の前にちょうどあった酒瓶を理御にやる。理御はそれをジョッキになみなみとついで、半分入っている俺のジョッキにも傾けた。
「あたしがお酌してあげるわ」
「珍しいな。じゃ、頼む」
ジョッキに継ぎ足すと、溢れそうなほどの自分のジョッキを手に取った。
「カンパイ、トシ」
「おう」
ガチャン、とぶつかる。ほんの少し理御のジョッキから酒がこぼれたが、気にしない事にした。
「飲み過ぎんなよ、理御。てめーは酒に強いってわけじゃねーんだからな」
「はいはい、分かってますよー」
すると、全裸の近藤さんが豪快に笑いながら近づいて来た。げ、と声を漏らした。
「飲んでるか〜トシ、理御ちゃん!」
「飲んでる飲んでる。だから、あまりあたしに近づかないで、全裸ゴリラ」
「…あれ?幻聴かな、理御ちゃんからゴリラって聞こえた気がしたんだけどなあ」
「きっと幻聴よ、頭がおかしくなったんだわ。あ、もうおかしかったか。ストーカーの上に全裸で踊るようなゴリラだし?ああ、あたしの目が腐る。そんな汚物を見せつけないで」
「…近藤さん、理御もうだいぶ酔ってるみてェだから」
「…だよね、理御ちゃんってば酔いがまわるの早いなあ…ハハ…」
テンションも酔いも上がってきていつになく毒舌な理御からのゴリラ連発に、乾いた笑いを浮かべて涙目になった。フォローはしたものの、こりゃ立ち直るのは時間がかかるな。
その後、近藤さんがしょぼんとしながら立ち去って行くと、理御はジョッキにちびちびと口をつけて俺に話しかけて来た。
「ねえトシ…トッシー」
「なんでわざわざ言い直した?あってたからな!」
「思ったんだけどさ、やっぱあたし、ここに来て良かったって思うのよね」
「どうした急に…」
「助けてくれてありがとう」
「…俺は何にもやってねェよ」
「明日からも、みんなのために頑張るね」
「おー、頑張ってくださいよ副長補佐殿」
「ふふっ」
理御は嬉しそうに笑いながらジョッキの中身を飲み干した。こんなに素直なのも珍しい。妙に照れ臭いが、酒でやり過ごした。
理御がほろ酔い気分でいると、総悟が酒瓶を持って歩いて来た。
「よォ、理御。飲んでやすかィ」
「飲んでるわよー。もうだいぶ気持ち良くなって来たわ」
総悟もある程度飲んで来たのか幾分か紅潮した顔で理御の隣にどっかと座り込んだ。俺と目が合うと、嫌そうに手で払った。
「土方コノヤローはどっか行って来ていいですよ」
「てめーがどっか行け」
「まあ土方さんのことはほっといて、理御、ジョッキがカラですぜィ。ついであげやす」
「なんか気持ち悪いなあ、総悟。まあいいや、ありがとう」
「そら、ついでやったんだ。一気、一気」
総悟についでもらった酒を一気に飲み干す。すると、間もなく理御はまつげの長い目をとろんとさせて、顔を真っ赤にしてぐらりと傾いた。
「む〜…このお酒おいしい。足りないわよぅ」
「まだいりやすか?」
「いるわ。もう一杯、総悟」
「へいへい」
「理御…?おま、なんで一杯でそんなになってんだ?…まさか総悟、その酒!?」
「ほらよ。…一丁あがりでさァ。この"鬼嫁"、やっぱうまいからな」
「鬼嫁ェェェ!?」
慌てて理御のジョッキを奪い取ろうとするが、理御はごきゅごきゅと音をたてて飲んでしまった。総悟がニヤリとしたり顔で俺を見る。鬼嫁は、アルコール度数の他の物より高い酒。理御はもともと酒にそんなに強いという訳でもなく、二、三杯ですでにほろ酔いだったので、鬼嫁の一気飲みで完全に出来上がってしまったのだった。
「んん…美味しかったぁ。もういいや」
ジョッキを置くと、時折、ヒックと肩を揺らし、間延びした呂律の回らない口調でフラフラと立ち上がった。
「総悟ぉ、ザキんとこいくわよ」
「へーい。じゃあ、土方さん」
「おいちょっと待てェェェ!総悟てめっ、理御が泥酔した時の事覚えてんだろォォォ!」
フラフラと歩いて行く理御について行こうとする総悟の服をガシッと掴む。
理御は泥酔すると止められなくなるのだ、いろんな意味で。これまでにも泥酔したことが何度かあった。そのときの理御を痛いほど経験している。やべぇぞこれは、デジャヴ。
「面白いじゃないっスか。いざとなったら止めるんで」
「止められねェだろ!」
「やめられないとまらない」
「かっぱえびせん…じゃなくてェェェ!」
「違いますよ、そこは『酔った理御』でさァ。ということで」
「知らねェからな!どうなっても!」
「はいはい」
総悟は手をひらひらと振り、ザキの隣に座った理御のもとへ行ったのだった。
真選組の大宴会
どうなることやら。俺は頭を抱えた。