我が子が日課のように今日も仁王立ちでお父さんにびしっと指をさす。
「おとうさんっ!チョコまたたべてる!!とーにょーびょーになるよっていつもいってるでしょっ!」
「昨日我慢したじゃねェか。今日はいーだろ今日は。糖尿病になんかお父さん負けないからね」
「だめっ!とーにょーびょーこわいんだよっ!!」
「んなこと言わずによー。じゃあ、いっこだけ!糖分足りなくてお父さん死んじゃう」
「…じゃあいっこだよ?しかたないなあ」
「優しいねえさすが銀さんの子!よし、今日はパフェ食いに行くか!」
「ほんとっ?いく!」
「よっしゃ久しぶりにチョコパフェだ!」
「だー!!」
「待て待て結局食べるんじゃん!惑わされるなおちびちゃん!」
純情な子供心をうまく誘導した銀さんの頭にジャンプの角で叩いた。銀さんは若干涙目で振り向き、おちびちゃんをさっと前に出した。
「おんまえジャンプの角って痛ェんだぞコノヤロー!!ちび、言ってやれ!」
「おかあさんもいっしょにパフェたべにいこ!!」
「そっちかよ!!」
銀さんに似たのか、子供らしく甘党で甘いもの大好きなおちびちゃんはきらきらした目で私を見た。
結婚して夫婦になってからというもの、私は糖尿病になりかけの銀さんをどうにかしようと奮闘している。それを真似て子も銀さんに注意しているのだが、こうしてそそのかされるとすぐにころりと銀さんサイドについてしまう。困ったものだ。
とは言いつつ私も甘いものは大好きなので、すぐに折れてしまうのだが。
「仕方ないなあ…新八くんに仕事しろって怒られちゃうよ」
「いーんだよ。たまには」
「たまにの頻度じゃないんだけど」
「ちょこぱ!ちょこぱ!るるーん♪」
鼻歌を歌うおちびちゃんをひょいっとおんぶすると、銀さんは早くも玄関へ向かった。私もその後を追う。
いつものファミレスで三人仲良くチョコパフェを食べていると、ぶちゅちゅちゅ、という奇妙な音がした。私と銀さんは目を見合わせて引きつった笑みを浮かべる。おちびちゃんが不思議そうに音のした方を見た。
「うわーあ!まよねーずでろでろ!!」
「見るな見るな、目がマヨネーズになるぞ!」
「ならねェよアホかてめェ!って…こいつ万事屋んとこのガキか」
隣のテーブルにいたのは真選組の副長さんだった。どうもと会釈する。この人だとは思った。あの下品なマヨネーズを絞り出す音は他ではなかなか聞かないから。マヨネーズ丼に興味津々のおちびちゃんはじーっと見て目をきらきらさせた。
「ねーねーおじさん、それおいしいの?」
「おじさんじゃねェよ!……一口なら食ってもいいぞ、食べるか?」
少なめに一口分をスプーンにのせて差し出した副長さんだったが、銀さんがおちびちゃんをがしっと捕まえて抱き寄せた。
「人のうちの子に何食べさせようとしてんの土方くんよォ!んな犬のエサ食わさせねェよコノヤロー!!」
「んなっ…人聞き悪いこと言うな!犬のエサじゃねェ、土方スペシャルだ!!人の好意を無下にしやがって!!」
「マヨラーがうつる、ウチの子に近づかないでくれますゥ!!」
二人ともいい歳してギャーギャーとうるさい。耳を塞いでいると、おちびちゃんが言った。
「おこったら、めっ!!」
「……!!」
くそかわァァァ!!!あまりのかわいさに頭をぐりぐりと撫でてやる。銀さんはしばらく固まってからキッと副長さんを睨んだ。
「お前だけには死んでも嫁にはやらん!!いや誰にもやらん!!」
「ロリコンじゃねェいらん!!」
二人が睨み合っている間にチョコパフェを食べ終えたのでおかわりを頼んだ。二杯目のパフェを一口すくい、きょとんとしたおちびちゃんに食べさせてあげた。
とある親子の愉快な日常