リトル・レクイエム

優しい夜の忘れ方


『お前は俺達を何だと思ってるんだ』
『勇敢に戦った俺達を、お前はそうして捨てて行くだけだ』
『お前は兵士じゃない』
『かえしてくれよ、俺達を』


聞きたくない。聞きたくない。
どうにもできないんだよ。許してくれ。何もできない私を許して。




「………メリア!起きろ、メリア!」


ばちっ、と目を開いた。そこには、私の肩を掴む血相を変えたリヴァイがいた。
どうしてリヴァイがここに、古城に行ったんじゃ、と聞こうとして思い出した。そういえば、時々古城から戻って来て報告や本部での仕事をするのだったか。
私が目を開けたことを確認したリヴァイは、ほっと息を吐く。


「やっと起きたか…!大丈夫か、ずいぶんうなされてたぞ」
「……いつものことだから」


そう答えてハッとした。失言だった。案の定リヴァイは眉を顰めている。


「いつものことだと?お前、毎晩うなされてんのか?」
「…違う。間違った」
「そうか、だからペトラが起こしに来ていたのか。だから毎朝あんなに早かったのか。そういうことだったんだな」


ばれてしまった。隠していたのに。否定するが、全く聞かずにリヴァイは一人で納得した。あんまり知られたくなかったのに。


「リヴァイ、気にしないで。もう慣れてるから」
「気にするに決まってんだろ。毎晩それじゃあよく眠れてねえだろう、身体壊すぞ」
「大丈夫、心配ない。自分の体調管理くらい出来てる」
「怪しいな。一人で起きれないなら、ペトラの代わりにエルヴィンにでも起こしてもらえばよかっただろうが」
「嫌だよ。私エルヴィン嫌いだし、何よりエルヴィンはこのことを知らない。このことを知っていたのはペトラだけ。教えたいことでもないし」
「………」


むくりと起き上がる。寝覚めは相変わらず良くない。
リヴァイは私の頭をがしっと鷲掴みにするように手を置いた。何なのだとリヴァイを見上げると、眉間にしわを寄せたリヴァイが私を見下ろしていた。


「やっぱりお前、古城に来い。一ヶ月、古城で暮らせ。今日、エルヴィンに許可をもらってくる。仕事ならあっちでやればいい」
「はあ?何言って、」
「……毎朝俺が起こしてやるから」


そう言って、ただでさえぼさぼさの私の頭をぐちゃぐちゃにした。私は抵抗せずにぽかんとリヴァイを見つめていた。いいなと頬を掴まれる。わかったという他なかった。


「でもそれならペトラに起こしてもらうからいいよ」
「………」


そしてその日のうちに、渋るエルヴィンから許可をもぎとったリヴァイに連れられて私は古城に向かった。

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