リトル・レクイエム

リラに歌えば


「あ!メリアさん!」


ペトラを見送りに来ていた私の元へ、エレンが走ってきた。随分と久しぶりに会ったような気がする。


「エレン、久しぶり。今日出るのよね?」
「久しぶりですメリアさん!はい、今からです!」
「何かあったら…何かなくても、ペトラを頼るといい。私の自慢の親友だからね」


なぜか照れているペトラが私の肩を照れ隠しに叩く。なかなかヘビーな一発だった。よろりとよろめいた私に輝く笑顔で元気良く返事をしたエレン。懐かれたものだ。
エレンはハッとしたようにペトラを見た。


「ペトラさん、支度できたら行きましょう!俺、迎えに来たんですよ」
「そうね。兵長を待たせちゃいけないわ、急がなくちゃ!じゃあ、メリア、また!遊びに来てね!」
「うん。いってらっしゃい」


一ヶ月後には、エレンの初陣か。確か、エレンの巨人化能力を活用出来なければ、王都に召還されるとか。頑張って欲しいけれど、たった一ヶ月でうまくいくのかどうか。前途多難だ。先が思いやられる。
ぱたぱたと駆けていく後ろ姿を見送っていると、急にエレンがくるりと方向を変えて戻ってきた。


「メリアさん!」
「どうかした?忘れもの?」
「忘れものってほどじゃないんですけど、」


見上げる位置にあるエレンを見つめて首を傾げると、エレンはへへ、とはにかんだ。


「古城に、遊びに来て下さいね。待ってますから」


ぱちくりと瞬きを繰り返す。そして、ぼっと顔が熱くなる。
待ってます、と。そんなセリフ、初めて言われた。避けられ、突き放されることはあれど、他人にこうして友好的に遊びにおいでと言われ、待っているとまで言われることはない(親友であるペトラは別として)。
なんだか照れくさくて、しどろもどろになりながら、わかったと頷いた。


「へへ、じゃあ俺行きますね!約束ですよー!!」


嬉しそうに手を振りながら、今度こそ去って行った。この懐きよう、まるで犬のようだ。


「行ったかい?彼らは」
「え、エルヴィン!」
「…メリア?」


隣にいつの間にか立っていたエルヴィンを見て驚くと、逆に驚かれた。エルヴィンは目を見開いて指摘した。


「顔が真っ赤だ。熱でもあるのかい?」
「え、そんなに!?熱じゃないよ」


指摘されてますます赤くなり、ぱたぱたと手で顔を扇ぐ。エルヴィンはすっと目を細めた。


「…エレンと何を話していたんだ?このごろエレンと妙に仲がいいじゃないか…」
「エレンが嬉しいことを言ってくれたのよ。…たいしたことじゃないんだけど、”友達”の会話に慣れてないから、ちょっと照れくさくて」
「…そうか。メリアも昔に比べると丸くなったものだな。喜ばしいことだ」


言われるほど、そんなに変わっていないと思うけど。しかし、まあ確かに、ペトラと出会ってその上エレンとも知り合った今では、エルヴィンとリヴァイとしか関わりを持たなかったあの頃からすれば、変わったと思う。それが成長と呼べるのかはわからないが。

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