お化け達の舞踏会

「セシリアさん!」


呼び止められて振り向くと、エレンが走って追いかけて来ていた。


「どうしたの?」

「今から俺の幼馴染のとこに行きませんか?アルミンとミカサっていうんですけど、悪戯しに行きましょうよ!」


悪戯っぽく笑うエレン。おもしろそうな誘いに私はすぐに頷いた。


*


「「トリックオアトリート!」」


ばーん、とポーズつきで登場した私とエレン。金髪の男の子と赤いマフラーの女の子がきょとんと見つめている。…なんか反応してよ!


「なにしてるのエレン」

「今日ハロウィンだろ!イタズラしに来たんだよ」

「あなたは、魔女の…えっと、セシリアさんですよね」

「そうよ。アルミンとミカサ、っていうのよね?お菓子をくれないと悪戯するよ!」


またまたきょとんとする二人。この分だとお菓子は持っていなさそうだと思っていると、予想通り首を振った。


「じゃあ悪戯ね!」


ニヤリと笑って杖を一振りすると、ぼふんと煙がアルミンとミカサを包んだ。


「わっ!」

「な、に…」


ゲホゲホと咳き込む二人。煙が散り、その姿が露わになる。


「に…似合ってるよ二人とも!」


アルミンは髪が伸びてますます細身になり、色白美人な女の子に。もともと中性的な顔立ちだったのでそんなに違和感はないが、声まで少し高くなってまさしく女だ。
ミカサは髪が少し短くなり、身長が伸びてすらっとした青年に。赤いマフラーはそのまま巻いている。
なんと二人は、性別が逆になってしまったのだ。二人はお互いを見て口をぽかんと開ける。


「な、な、なにそれミカサ!?どうしたの!?」

「アルミン、小さくなった?」

「ミカサが大きくなったんだよ!というかそれ以前にツッコむところあるよね!?」


混乱する二人を眺めながらくすくすと笑う。あー楽しい。


「すげえ、セシリアさん!!アルミンもミカサも、似合ってるぞ!」


笑いながら指差したエレン。…を見て、私達は揃って声をあげた。


「エレンも性別変わってる!!」

「へ?」


ハーフアップにした髪、長いまつげと膨らんだ胸はどう見ても女だ。私はミカサとアルミンに魔法をかけたはずだったので、まさかエレンまでなるとは思わなかったけど、これはこれで面白いからよしとしよう。


「よしとしねェよ!!どういうことですかセシリアさん!なんで俺まで!」

「あれ、聞こえてた?どうやらエレンも巻き込んじゃったみたい。ごめんごめん」

「えええ!」


あははーと軽く謝ると、こんなハズじゃなかったのに、とエレンが嘆いている。エレンは悪戯する側に回りたかったらしい。


「エレン、可愛い。似合ってる。女エレンも捨てがたい」

「どういうことだよ!可愛いとか言われても嬉しくねえし!」


ミカサ(♂)がエレン(♀)の頭を撫でる。身長差もある上、若干ミカサが頬を染めているので、もう普通にカップルにしか見えない。違和感ゼロ。


「もうそれでいいと思うよ」

「よくないです!」

「私はこれでも別にいい」

「僕は戻りたいです…っ」

「ま、今日だけなんだし。一日限定で違う性別楽しんでみるのもいいんじゃない?」


口をぱくぱくするエレンの肩をぽんぽん、と叩く。アルミンはあからさまに落ち込んでいて、大きなため息をついている。ミカサとなぜか目が合い、頷き合った。
そして、じゃあね、とひらひらと手を振ってその場を後にしたのだった。


「…この後夕飯だろ」

「もうやだ…」

「私は別にいい」

「………これトイレとかどうすんだ?」

「「…」」

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