ジャックオーランタンにご挨拶

可愛すぎる二人が去り、私の心も落ち着いてきたところで、次のターゲットを求めて歩く。
すると、体格の良い男がうつ向けに倒れているのを発見した。


「だ、大丈夫!?」


慌てて駆け寄ると、男は薄く目を開き、口を開く。


「あ…ああ…なんとかな…」

「どうしたの!?何かあったの、あ、しゃべるのキツいなら無理しないで!」

「め…」

「め?」

「女神が降臨した…」


はあ?と首を傾げる。そういえばこいつの鼻は血で汚れていて、ふと床に目を向けると、指で"結婚しよ"とダイイングメッセージのごとく書かれている。なんだよこいつ。


「我が一生に…一片の悔いなし!」

「いや意味わかんないから」


べし、と頭を叩くと、ぐふっと言って力尽きた。ええー。これどうしろと言うんだ。
そこに、身長が高い男が小走りでやってきた。


「いた…!ら、ライナー!」

「あ、この人の保護者?どうにかしてくれない?倒れてたのよ」

「ご…ごめんなさい」


今連れて行きます、と言って肩を担ぐ。
なんだか…このタイミングでお菓子ちょうだいとは言い難いな…
見るからに重そうだ。細身の彼にはこんな体格の良い男を担いで移動するのはさぞかし大変だろう。少しだけ手伝ってあげよう。
そのまま連れて行こうとするその背中を叩く。


「君、君。ストップ」

「え…」


ぐったりしているその体格の良い男の体に杖を当てた。


「軽くなれ。すんごく軽くなれ」


そう言うと、重そうにしていた長身の男が目を見開き、担いだ男の顔を驚いた様子で見る。きっと、男の体重は驚くほど軽くなっているはず。イメージは1キロで魔法をかけたんだけど、上手くいっただろうか。


「じゃあ、運ぶの頑張ってね」


多少は役にたったかな、と微笑むと、その男はへにゃりと笑った。


「ありがとう」



その後、ライナーが軽すぎる自身の体重にパニックになったのは言うまでもない。

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