バケモノ退治

 
「な…に、これ…」


魔物…?こんなの見たことない。デカイしニンゲンみたいな体だ。ニンゲン?いやニンゲンってこんなにでかくない。こいつみたいに全裸なわけないし。というかここどこだ。木がたくさんあるから森?
なんだかんだ考えながら呆然としていると、そのバケモノと視線が合ってしまった。


「こ…こんにちは」


挨拶しちゃったよ!!なんか知らないバケモノに挨拶しちゃった!!
言葉が通じていないのか、返事が帰って来ない。やはり魔物か?


「誰ですか」


ズバッと聞いて見た。すると、バケモノはこっちに歩いて来る。ヨダレを垂らしながら。…あれ絶対食べる気でしょ!!食われる!!私食われる!!(大事な事なので二回言いました)
私は傍らに落ちていた杖を掴む。ありがたや、これがないとどうしようかと思った。
シビレはなくなった。立ち上がり、バケモノを見る。魔女なめんなよバケモノ。お前なんか一瞬で粉々だぞ!杖をかざす。バケモノが迫って来る。


「…勝てる気がしない!!」


とりあえずダッシュで逃げる。いや無理でしょ!あんなデカイのにどうしろと!私まだ見習いだから!!無理!!
しかし、どうにかしなければ。これは食われる、マジで食われる。(大事な事なので二回(略))
そんなとき、木の上にニンゲンの集団を見つけた。ここはニンゲンの世界なのかな…?いやとにかく、助けてもらおう。


「たっ、助けてええええ!」


声が届いた。ニンゲンがこちらを向く。が、そのとき、バケモノが走り出した。ふざけんな。追いつかれてしまう、ニンゲンの助けは間に合わない。
えーいままよ。やってみようではないか!


「上手くいけ上手くいけ…」


ぶつぶつ唱えながら、後ろを振り向き杖をかざす。


「吹き飛べ!!」

ドゴォォォォォォオン!!


バケモノは巨大な爆発に巻きこまれ、吹き飛ぶどころか木っ端微塵になった。
嘘だろ、なんだ今の爆発。自分でも予想外すぎる規模に空いた口が塞がらない。とにかく食われることは乗り切った。


「せ…成功!」


良かった、と胸を撫で下ろす。振り向くと、降りて来ていたニンゲンが私を唖然としながら凝視していた。驚くのも無理もない、何もないところから爆発が起きてバケモノが吹き飛んだのだから。
ニンゲンの内の一人がつかつかと歩いて来る。


「お前、何者だ」


目つきが凶悪な男が何やら刃を見せつけながらそう聞いて来る。刃に怯えつつも、嘘を言ってはいけないので、正直に答えた。


「魔女です」

「ふざけんな、正直に言わねェと削ぐぞ」


ええええ、いや超正直なんですけど。こんな場面でふざける勇気はない。てか削ぐって何!?痛そう!


「私!魔女!です!まだ見習いだけど…」

「…そんなに削がれたいか」

「いやいや待って待って!」


イヤイヤと首を振っていると、そこにメガネをしたニンゲンがもう一人近寄って来て、間に入った。


「ちょっとリヴァイ、落ち着いて」

「俺はいつでも冷静だ」

「はいはい、それで、君、魔女って本当かい?」


こくりと頷くと、難しい顔をしながらじろじろと私を見る。足の先から頭の先まで。心なしか鼻息が荒い気がするんだけど、気のせいかな。


「魔女っていうと、本で見たことがあるよ。あんまりそうは見えないし、信じられないけど…実在するんだねえ…!初めて見た!」


だいぶ気のせいじゃなかった。超嬉しそうだ。触ってもいいかい、と聞かれて、どうぞと言うと、握手を求められたので握手した。


「おいクソメガネ、馴れ合うな。第一、魔女なんているはずねェだろ」

「うーん、そりゃそうなんだけどさ。嘘じゃなさそうだよ?だって見たろ、さっきの爆発。それにこんな服装、あまりここら辺では見ないし。疑うなら、見せてもらえばいいんじゃないかい?魔法」


ねえ、見せてよ。そう言われては断れない。うん、信じてもらうためだし。やってやろうじゃないか。
何がいいかな、と考えて、思いついた。見習いな私でも一番確実に実行出来る、魔女と証明する方法。
いつのまにか、他のニンゲン達も距離をつめて私を見ている。囲まれている状態に少し怯む。
ふう、と深呼吸。杖にまたがり、少し力むと、ふわっと宙に浮いた。どよめきが起こる。ぐるっと周りを回って着地すると、メガネの人が飛びついて来た。


「うおおおお飛んだ!立体起動ナシで飛んだァア!!すっげえ、何今のどうやってやったの!?」

「黙れクソメガネ。……どう思う、エルヴィン」

「本物らしいな…驚いたよ」


一番偉そうな男の人が前に出て来る。鋭い視線で見られる。怯まないようにがんばって見返していると、真剣な顔つきからふっと緩んだ。


「…どうやら悪い子ではなさそうだ。詳しいことは戻ってから聞こう。今日は壁外調査終わりだ。他の巨人が来る前に戻るぞ。リヴァイ、いいね」

「……判断に従おう」


信じてもらえたのだろうか。着いて行くしかない、行くあてもないのだから。リヴァイと呼ばれた人に舌打ちされて、着いて来いと言われた。


「大丈夫、なーんとかなるって!」


メガネの人が私の肩を叩く。励ましてくれているんだろう。なんだかこの人とは仲良くなれそうだ。


  




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