一筋の光
「もし奇行種が現れたら私が足止めするから、リヴァイさんはそのすきに。できるようならあたしも応戦する」
「分かった。ちんたらすんなよ」
「わかってる」
飛びながら短く会話をする。なんだか、さっきと気分が違う。理由はわからないけど___体が疼く。ぞくりとするくらい、わくわく___する。
向かって来る巨人を見つけて、気分が高まるのを発散する気持ちで、魔法を発動する。
「氷欠泉!!」
バキィン、と現れた氷に動けなくなる巨人。それをすぐさまリヴァイさんが仕留めに行く。その間に小さい巨人がまた向かって来るのに気づき、指を差した。
「氷柱!!」
巨大なつららが巨人の頭上から落ちた。よし…!巨人の頭を貫いたが、念のため…
「風よっ!」
練習しまくった片手で削ぐ"風のブレード"を使う。ザシュ、と綺麗に決まり、巨人が倒れた。リヴァイさんのもとへ行く。リヴァイさんはどこか満足そうだ。
「出来てるじゃねェか」
「修行のおかげかな…!」
「…おら、次行くぞ。煙弾が見えた、手を貸しに行く」
「うん!」
やっていることはえげつなくて、残酷だ。すでに服は血に濡れている。でも、どこかで楽しんでる私がいる。こんな"殺し"を楽しんでいるなんて、自分が怖くなるほどで、私はやはり魔女なのだと思い知らされている思いだけど。
それでもやはり、気分は良かった。
「多いな…」
リヴァイさんがそうつぶやくほど、巨人に囲まれていた。小さいのが3体、大きいのが2体。高い木に4人兵士が降り立っていて、私達を見つけると心底安心したように脱力した。
「リヴァイ兵長…!!!」
「煙弾を出したのは正解のようだな」
「二人…!食われました…!」
「…。行くぞ」
「待って!」
リヴァイさんを引き止める。二人、死んだ。これ以上はここで死なせない。あたしは杖を握りしめる。
「援軍を呼ぶ。ちょっと待ってて」
「援軍…?そんなことが出来るのか、魔女」
兵士が疑いの眼差しを向ける。
木の上で魔方陣を描くのは初めてだ。どうしようも出来ずに空中に描き、イメージ。
「魔物召喚!」
ぶわ、と風が巻き起こり、それと同時に黒い羽が飛び散る。目を開くと、イメージした通りの魔物の群れが召喚されていた。よし、と思わずつぶやく。これだけの魔物を召喚したのは初めてで、どきどきする。
「___一つ目烏!!巨人の視力を奪い、足の筋肉を狙って!動けないように!」
大きな単眼をぎょろりと私に向けた20羽ほどの一つ目烏の群れは、返事をするように大きく鳴いて飛び立った。
「…なんだありゃ、カラスか?でけえし気持ち悪ィな」
「烏が巨人の動きを止めたら削ぎやすいでしょ?邪魔なら烏ごとやっちゃっていいよ。ただの下僕だから」
「ひいい…」
兵士が身震いした。
烏が眼球に向かって尖ったくちばしを向け、すごい早さで体当たりしたのを見ていた。そしてリヴァイさんが飛んで行ったのを見て、私も飛ぶ。
みんながどんどん倒していくところで、烏に命じる。
「集合、射撃用意!」
私の声にあわせて烏が集まり、固まる。一体一体が眼球を光らせ、奇行種のうなじに照準を合わせる。タイミングを見計らい、杖を向けた。
「発射!!」
カッ、と大きな単眼がギラリと光り、一つの大きなビームが発射される。うなじをくり抜き、風穴を開けた。
「ひいい!!」
「ほお」
しかし烏は私を一瞥して次々と霧散した。ちょっ、帰るの早いよ!何はともあれ、あと大きい巨人があと2匹。あと少し、と息を吐いたそのとき。生き残っていた兵士の一人が、血濡れで倒れているのを見つけた。
「…!!」
降り立ち、心臓を確認する。
まだ生きている。気を失ってはいるものの、かすかに聞こえる心拍音は、命があることを証明している。でも、食われかけたのだろう、手が千切れかけている。
「…大丈夫。私が助けるから」
言い聞かせるようにそうつぶやく。私は杖を構えて、意識を集中させ始めた。
助ける、このニンゲンを。死なせない、きっと。
そのことしか頭になかった。
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