カケラを集めて
執務室で書類に目を通すリヴァイさん。私は一人で出歩いたらいけないと言われているので、自然と執務室にいることになる。暇なので、魔道書を出して読んでいた。
「リヴァイ兵長、コーヒーです」
「ああ」
入って来たエレンがコーヒーを渡す。それをじっと見ていると、私も同じものを渡された。
「セシリアさんもどうぞ」
「ありがとう」
それを飲みながら、じっとリヴァイさんを見ていた。
…だって飲み方おかしいもん。
取っ手があるのに、カップを奥から持つという不思議な飲み方をしている。何あの飲み方、取っ手を使おうよ。熱そうだし、飲みにくそうなんだけど。
リヴァイさんが飲み終わり、エレンにカップを返す。私も急いで飲んで返した。お盆に乗せて引き返すとき、エレンが私の杖につまずいた。
「わっ、」
「あ」
ガチャン!
お盆からカップが落ちて割れてしまった。割れたカップの破片が飛び散り、見るも無残だ。
「う、わああ!すみません兵長!片付けます!」
そんなに慌てなくても…と思ったが、リヴァイさんの表情が怖かった。そりゃ慌てるか。杖を拾いながら、破片を集めるエレンに声をかける。
「ちょっと待って、怪我するよ」
「大丈夫です!」
「いや、危ないわ。私に任せて」
にっと笑って杖をかざす。杖がパッと光る。
「戻れ!」
私の声に合わせて、破片が動き出す。まるで踊っているかのように、驚くエレンの手の上で、破片が集まりくっつき、再びカップになって手に収まった。
「う、わああ!すげえ!カップが…!!セシリアさんすげえ!ありがとうございます!!」
「いえいえ」
そんなに喜ばれると、なんか嬉しいなあ。これが正しい魔法の使い方だと思える。
ぱたぱたと戻るエレンを見送ると、リヴァイさんが私に聞いた。
「今のも魔法か?」
「うん。カップくらいなら簡単よ」
満足してソファに座り直す。再び魔道書を開くと、リヴァイさんがつぶやいた。
「…エルヴィンはああ言っていたが」
「…?」
「俺は正直、魔法なんて、あまりアテにしていなかった。くだらねェとまで思っていた」
リヴァイさんは書類からちらりと視線をこちらに向ける。
「しかし…実際、思っていたより悪くねェな」
それはリヴァイさんに魔法を認めてもらえたということなのだろう。ぱっと顔をほころばせる。ニンゲンに認められたということ、それがあのリヴァイさんだということがとても嬉しくて、だらしなく緩む口元を抑えた。
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