掃除を開始せよ

 
ペトラやオルオ、エルド、グンタの様子がいつもと違う。そわそわした様子で忙しそうにしている。バケツやら何やら、いろいろよくわからない道具を準備しているペトラに聞いてみた。


「どうかしたのペトラ。何かあるの?」

「セシリア…!そうか、あなたは初めてね。はい、あなたもこれを」


手渡されたのは白い布。これで口元を隠せと言う。変装でもするのかな。面白そうだから従う。
エレンも布で口元を隠し、手には雑巾のかけてあるバケツを持っている。


「セシリアさんも参加するんですね」

「参加?うん、参加」

「頑張りましょうね!」

「うん、頑張ろう」


何があるのかよく分からないけど、とりあえず頷いておく。
ああ、そういえば、エレンはリヴァイ班の新兵だったのだ。仲良くなった人がたまたま同じ班配属だなんて、嬉しい。


「あ、兵長!」

「おい、準備はいいか」

「「ハッ!」」


そこへ訪れたリヴァイさん。ちょうどいい、何があるか聞こう。が、しかし、その姿を見て、固まる。


「り…リヴァイさん、それ…」

「あ?」

「似合いすぎ!」


口元の布だけでなく三角巾までしてあって、耐えきれず笑うと、リヴァイさんがぴきりと青筋を立てた。あれ?


「…いい度胸だな…セシリアよ、躾が必要だな」

「躾?」


あれ、怖いよ?リヴァイさんの顔が怖いよ?がしっと肩を掴まれる。ぎゃぁあ肩からありえない音が聞こえるううう!みしみし言ってるううう!


「セシリアは俺の執務室だ」

「え!?」


どういうこと?ペトラやオルオが哀れなものを見る目で見てくるんだけどどういうことなの!


「準備が出来たら各自持ち場につけ。解散」

「「ハッ!」」


だから何が!?ばっとリヴァイさんを見る。


「今から何するの!?教えてよ!」

「あ?見てわかんだろ。掃除だ」

「…………掃除?」


きょとんとして首を傾げた。


「掃除って、私したことないわ」

「「!?」」


歩き出したエレンらが私を二度見する。リヴァイさんはまるでゴミを見るかのような目で私を見た。


「なんだと…?」

「掃除や家事全般は、召使に頼んでたから。有能な執事がいるの」

「召使?執事…?てめえ、どこかの貴族か?」

「だから魔女だって」


魔女はそんなものなのだ。召使や執事、使い魔がなんでもかんでもやってくれる。立派な魔女になれば、頼むまでもなく、魔法で掃除をしてしまう。まあ、私みたいな見習い魔女だと、そんなになんでもしてくれるわけではないけど。


「…とにかく、全員持ち場につけ。セシリアには俺が掃除の仕方を教えてやる」

「え…なんか身の危険を感じるからいらない」

「黙って俺に従え」

「ちょ…ペトラー!エレン!」


歩き出したペトラは振り向いて、私に言った。


「兵長は潔癖性なの…ごめんねセシリア、私には止められないわ」

「えええ!」


ペトラが行ってしまい、オルオも出て行き、次々にいなくなる。リヴァイさんを見ると、はたきと棒を持って歩き出した。ついて来いというのだろう、仕方ない。
私は掃除用具のかわりに杖を持って、その後を追った。


  




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