ある日のホームルーム中の事だ。
銀八先生はゴホンと一つ咳をした。
「あー、ここでみんなに大事なお知らせがある」
お知らせ?なんだろうか。教室がざわざわする。
「なんなのでしょうね、おなまえ」
「わかんない…」
前の席のお妙ちゃんと話す。
こんなに改まって言うなんて、きっと何か大切なことなんだろう。…結婚する、とか?なぜかそんなのが頭に浮かんだ。
実は私は銀八先生が好きだ。これまでも、頑張ってアタックしてきたつもりだった。たとえ、先生と生徒って関係でも。
そんな報告なら、聞きたくない。嫌だ、絶対、嫌だ。
「何アルか?もったいぶらずに早く言えヨ!」
神楽ちゃんが野次をとばした。
「まーまーそう焦るな」
銀八先生がゆっくりと歩き出す。ああ、嫌な予感しかしない。結婚、じゃなかったら、転勤?そっちの方がもっといやだ。
銀八先生はどんどん近づいて来た。てか、え?なんで私を見てるの?
みんなの視線が先生に、つまり私に集まる。
ぐい、と立たされた。
「わっ…」
そして、混乱している間に、頬にキスされた。
「たった今からおなまえは俺のモンになりましたァ」
「「「ええええ!?」」」
頬を抑えて銀八先生をぎょっと見つめる。私の顔は真っ赤だろう、心臓の音が尋常じゃない。銀八先生はみんなを見渡してニヤリと笑っていて、その手は私の腰をがっしりと掴んでいる。
「な、え、ど、どういうこと」
状況が飲み込めていないんですけど。
銀八先生は、私を見下ろしてにっと笑った。
「そういうこと。もう離さねーかんな」
ああもう、湯気が出そうだ。
野次馬がうるさいけど、全く耳に入って来ない。
「
苦情は一切受け付けておりません。文句のある奴は夕日に向かって叫んでればいいんじゃねーの」
そう言って。
ホームルームは終了した。
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