しとしとと雨が降る。靴箱から靴を出しながら、ちらりと外を見た。
今日のテレビでの天気予報では降水確率80%、あえて傘を忘れてみました。なぜなら…下心というのかな。ちょっと狙ってることがあったり、する。
いた。
テニス部の中での練習が終わって、リョーマも帰るところだ。その手には傘。深呼吸を一つして、駆け寄った。
「リョーマっ」
「…おなまえ」
「今帰り?」
「そうだけど」
「あのさ、」
これで断られたらもう、どうしよう。恥ずかしさで死ねる。いいって言われても恥ずかしさで死ねる。どっちにしろ死ねる。
「傘、」
「おなまえ、傘は?」
こけそうになる。遮らないでよ、私頑張ってるのに!そんなふうに思いながらも、忘れちゃったと言うと、リョーマは自身の持っていた傘を持ち上げた。
「入る?」
一瞬、固まる。だって、こんなの考えてなくて。まさかリョーマから誘ってくれるなんて。
どうすんの、と聞かれて頷くと、リョーマは少しだけ笑った。
「つーかさ、なんで忘れんの。バカでしょ、今日降水確率80%って言ってたのに」
「しっ仕方ないでしょ、忘れちゃったものは忘れちゃったの!」
「まだまだだね」
「…ふふっ」
「…何笑ってんの?」
「なーんにもっ」
同じ傘に二人、肩を並べていつもの倍の時間をかけてゆっくり歩いて帰った。
たまには雨もいいかな、なんて。
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