※サッチ視点


無自覚って、罪だと思う。


「もーいいおなまえの馬ー鹿!」

「なっ!エースこそ馬鹿、馬鹿馬鹿ウマシカ!」


二番隊隊長と十六番隊副隊長、エースとおなまえの喧嘩は珍しくない。いつも、ほんの小さなことで喧嘩が起きて、すぐに互いに折れて仲直りする。とっくにパターン化している痴話喧嘩は、今日も起こってしまった。


「フ、また痴話喧嘩かァ?」

「毎度毎度懲りないねい、二人とも」


こっちに来たエースにイゾウとマルコが呆れ半分の眼差しを向ける。


「痴話喧嘩じゃねェ!おなまえがいけねーんだ!」

「今度はなんだよい」

「しかたねーから聞いてやんよ」


マルコと俺が先を促す。エースはむうと唇を尖らせながら話し出した。


「明日、島に上陸するだろ」


そうなのだ。明日、久しぶりの陸に到達する。買い出ししなければならないものはたくさんあるので、分担しようということになり、俺の隊は食料を任された。マルコんとこは確か医療品で、エースんとこも任されているものがあるはずだ。


「おなまえの十六番隊は何も任されてねーんだろ?」

「あァ、確かそうだったな」


他人事のようにイゾウが言う。いーな、遊べるじゃんかよ。


「だから、明日おなまえはナースのキリアとショッピング行くんだってよ。俺じゃなくて!」

「「「…」」」


要するに、エースはおなまえの親友にヤキモチを焼いてるらしい。エースは明日暇じゃないんだからしかたねーじゃん。サボるつもりだったのかよ。


「久しぶりの陸なのにおなまえが一緒にいてくれねェ!!」


…まぁ、そんなことだろうとは思ったよ。これにはさすがにみんな呆れる。


「…はいはい、そりゃ残念だったねい。じゃあ仕事始めるかねい」

「うるせェんだよいちいち。撃たれてェのか」

「はー、聞いて損した。時間返して欲しいくらいなんだけど」


マルコやイゾウ、ハルタがやれやれと肩をすくめる。エースは聞こえていないようで、まだ何か言っている。


「おなまえに言ったらよ、おなまえがいいじゃん一日くらいって、頬を膨らませるんだよ。それがまた可愛いんだけどよ…」


ここで、一つ質問をしていいか。


「なあ、エースとおなまえって付き合ってんだっけ?」

「「いや全く」」


これで付き合ってないのはおかしいと思う。こんなにおなまえおなまえ言ってて、おなまえだってエースエース言ってるのに、なんでくっつかないのか疑問なくらいだ。


「エース、おなまえのこと好きか?」


試しに聞くと。


「おう、好きだぞ。家族としてな!」


だと。
なあ、もう一つ聞いていいか。


「これって、ただの惚気だよな」


全員が、呆れながらも頷いた。



人はそれを惚気と呼ぶ(無自覚バカップルは最早公害)

(おなまえと遊んでくるー!)
(いってきまーす!)
(もうそのまま帰ってくんな!)


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