「
先日勇気を出して告白したところ、お前の処女を喰わされるくらいなら消費期限切れの生卵を丸飲みする方がまだましだ、と言われたのだが、この件に関して君はどう思う?」
「…は?」
「ね、どう思う?」
いきなりそう言われても。誰だって、聞き返したくもなるだろう。
総悟が珍しく腹を壊して代わりに俺が見廻りに行かなければならなくなってしまい、歩いていると、久しぶりに会ったおなまえに団子屋に連れ込まれた。どうしたのかと思えば、唐突にこう言われたのだ。
まず、いろいろと質問がある。
「…お前、好きな奴いたのか?」
「ああ、いたよ。もう過去形だけどね。当たって砕けたさ、玉砕ってやつだね」
「どこのどいつだ」
すると、おなまえはさらりと答えた。
「君んとこの一番隊隊長殿だよ」
「…マジか」
「マジ」
…まさか、総悟だとは。
目を見開くと、瞳孔ヤバいよ、と言われて、瞬きしてゴホンと一つ咳をした。
にしても、当たって砕けたわりには、あっさりとしているっていうか、ドライだ。
「く…詳しく教えろ」
「それがさあ、聞いてよ。つい昨日のことなんだけどさ。見廻りだったろう、沖田」
「あ、ああ」
いつものようにサボってやがったから、屯所を追い出したのだ。
「ばったり会ったから、前々から言おうと思ってた事を言ってみたのだよ。好きだって」
好きだって。
その言葉を聞くと、なんだかモヤモヤした。なんだろうか。
「そしたらさ、なんて言ったと思う?お前の処女を喰わされるくらいなら消費期限切れの生卵を丸飲みする方がまだましだ、だってよ。やるよねえ」
おなまえは感心するかのように言う。他人事かよ、自分のことだろ。
「カチンと来たから消費期限切れの生卵を口に突っ込んでやったよ。青い顔して逃げて帰ったよ、沖田」
「てめーが原因かァァァア!!」
ガタンと勢い良く席をたつ。店内の視線が全て集まったので、ごほんと咳でごまかしながら静かに座り直した。
「恥ずかしいからやめてくれないかな土方」
「誰のせいだよ…」
「私か?ていうか、何の話?」
「…いい、こっちの話だ」
総悟が腹を壊したのは、おなまえのせいだったらしい。つーことは、こいつのせいで俺は見廻りになったわけで。山ほど残ってた書類を終わらせることが出来ないのもこいつのせいだ!!…いや、もとはといえば、言いすぎた総悟のせいなのか?
みたらし団子を頬張りながら、おなまえはもう一度聞いた。
「それで、君はどう思う?土方」
俺は、どう思うか。自分に問うと、口が勝手に動いた。
「俺にしたらいいと思う」
「…………は?」
言ってから気づく。俺は何を言っているんだ、俺にしたらいいと思う?そんなの、口説いてるようなモンじゃないか。
すると、初めておなまえの顔色が変わった。
ずっと飄々としていたのに、赤く、色づいた。
「…あ?」
「あ、えっと、」
まごつくおなまえ。これは貴重だ。じっと見ていると、おなまえはさっきの俺のように勢い良く立ち上がった。
「か、帰る!」
「お、おう」
言うなりダッシュで去って行った。残された俺はぽかんとしていたが、なんだかおかしくて、くくっと笑った。
今度また会ったときには、俺から団子屋に誘おうと決めた。
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