このごろ、サンジ君がやたらかっこよくて困る。


「プリンセス、髪に何かついてるよ」


さら、と髪を一房掬われてどきりと心臓が跳ねた。紳士なのはいいことだけど、こう、いきなりしないでほしい。不意打ちは卑怯だ。


「ありがと、だ、だからもう離して」


サンジ君から視線をそらしながら言う。


「綺麗な髪だね、おなまえちゃん」


さらりと撫でられる。離す気はないようだ。通りかかったナミにどうにかしてくれと視線でうったえる。ナミは仕方ないわねと言いたげに近づいて来た。


「サンジくーん、みかんの木に水やって来てくれない?」


ナミが上目遣いで頼むと、たちまち髪を離してくるくると回りながらみかんの木の方に行った。


「かしこまりましたナミすわーん!」

「それでよし」

「ありがとナミー!」

「ったく、あんたは何してんのよ…」


呆れるナミにすがりつく。心臓が徐々におさまってきてホッとする。にしても、あの変わり様はなんなんだ。


「ま、がんばんなさい」

「え、それだけ!?酷い、ナミー!」


ナミはそそくさと去ってしまう。追いかけようとしたが、背後にまた気配を感じて振り向く。


「おなまえちゃん」

「なななにっ!?」


やはりサンジ君だった。妙に真剣な顔だ。てか水やり早っ!


「俺、おなまえちゃんのこと…」


ずい、と迫って来るサンジ君。何歩も後ずさりしていると壁にあたり、下がれない。ち、近っ、近いよ!!
心臓がうるさい。


「おなまえちゃんのこと、」

「たっ、」


どん!と胸板を押し返しながら、パニックになりかけで言った。


頼むからそれ以上近づかないで、心臓が過労死する!!」


ぽかんとするサンジ君を置いてナミのもとへ逃げたのだった。


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