万事屋と真選組


「なんでてめェらがいんだよ万事屋ァァ!!」
「なんでてめェらがいんだよチンピラ警察ゥウ!」


両者すぐに駆けつけてくれたのは良かったが、二人とも仲が悪いことを忘れていた。万事屋コンビ(銀さんと神楽ちゃん)真選組コンビ(土方さんと沖田さん)はグルルルと威嚇しあっている。


「俺達はバイトから通報受けたから仕事として来たんだよ!てめェら食いに来たなら帰れ!」
「俺らだってバイトちゃんから依頼されて来たんだよ!俺らがやるから税金泥棒は帰れコノヤロー!」
「そうアル、私達だけで十分アル!」
「ほざけチャイナァ、俺らがやるからてめェは酢昆布でも食ってな」


四人はぎゃあぎゃあと喧嘩もどきを始める。神楽ちゃんと沖田さんも、銀さんと土方さん並みに犬猿の仲らしい。バトルでも始めそうな勢いだ。
今はもちろん閉店し、お客さんはいないから良いのだが、それにしても賑やかすぎて店長は耳を塞ぎながらマヨラーお兄さんが真選組だということに驚いていた。知っていたのかと聞かれ、まあ、はいと苦笑いで頷いた。


「ちょっと四人とも!!このファミレスの危機なんですよ!こうなったら手を組みましょう、バイトさんもそれを望んでるんですよ!ですよね!?」


新八くんがそう叫ぶと、四人ははたと動きを止めて私を見た。


「…手を組むゥ?こいつらと?」
「バイトちゃん、本気かよ…」
「えーっと…はい。お願いします、ファミレスの危機なんです!」


あまりにも嫌そうなので、少しためらったが、ぺこっと頭を下げると、店長もすぐさま頭を下げる。すると、銀さんがごほんと咳を一つした。


「あ、あー、まあ、バイトちゃんがそこまで言うなら。このファミレスには世話になってるしよォ、なあ、神楽」
「仕方ないアル、そこまで言うなら」
「まあ確かに人手は必要だろうしな…」
「今回は許してやるよチャイナ」


そういうわけでなんとか収まった。新八くんはホッとため息をついて、すいません、と私に謝った。しっかり者だなあ。一番落ち着いてるし、頼りになりそうだ。と思っていたら銀さんたちは新八くんをじとりと見て暴言を吐き出した。


「何仕切ってやがんでィメガネかけ機」
「調子に乗んなヨメガネかけ機」
「なんで矛先僕に向いてんのォォォ!?メガネかけ機ってなんだァァ!」
「メガネが本体って公式でも言ってんだろ銀さん知ってるよ」
「意味わかんねェよっていうかそろそろ本題に入りましょう!!!」


…うん、新八くんのツッコミが一番うるさい。





「状況はわかった。とりあえず、逮捕は難しいってことだけは言えるな」
「そうです、よね…」


説明し終わって、土方さんが煙草を取り出しながら言った。禁煙ですと言いかけて、店長がいいと手を振ったのでやめた。
逮捕は難しい、かあ。やはり、刀以外に何にも証拠が残っていないんじゃあ、普通そうだよなあ。防犯カメラつけときゃよかったな、なんて今頃言い出す店長は手遅れにも程がある。


「やっぱり、刀だけじゃ難しいですよね…」


しゅんとして刀を見つめる。頼みの綱もダメかあ、と項垂れると、銀さんが遮った。


「銀さんにその刀貸してみ」
「え、あ…どうぞ」


鞘ごと渡すと、銀さんは鞘をしげしげと見つめて、刀身を抜いた。しばらくその刀を見つめ、光にかざしたりしていると、ふと顔を上げた。


「やっぱりか。これ、元攘夷浪士の刀だな」


さらっと呟き、刀身をいろんな角度から眺める。その目はいつもと同じやる気のない目なのに、どこかきらりと光って見えた。


「え、ええ!?銀さん、刀見ただけでどんな人が使ってたかわかるんですか?」
「まあ、ざっとな。銀さん天才だから」
「すごいです…!」


思わず拍手すると、まーな、とニヤニヤする銀さんはどこか嬉しそうだ。なんでそんなにわかるんだろう。銀さんって何者…?


「攘夷浪士ってのは強盗までするのかよ、どこまでも腐った連中だ」


いまいましそうに土方さんが舌打ちを一つ。銀さんが腕を組んで言った。


「こいつ、攘夷浪士はもうやめてんだろ。この刀、無銘で血なまぐせェ上に何回も鍛えなおしてるが、最近はしばらく鍛えてねーようだからな。」
「ほお」
「普通、攘夷浪士は強盗なんざしねェよ。攘夷浪士やめて行き場所も職もなく、犯罪に手を染めるようになったとか、そんなもんだろ」


刀を肩にかついで分析をする。すごい、そこまでわかったんだとぽかんとする。
それを聞いた土方さんは眉間にしわを寄せてぎろりと睨みをきかせた。


「なんでそんなに物知りげなんだよ。やっぱお前くせェな」
「えっ風呂は毎日入ってんだけど!おい神楽臭うか?」
「ちょっと臭うアル、加齢臭が」
「鼻潰すぞコノヤロー」
「そっちの意味のくせェじゃねえよ天パ野郎!」
「話を戻しましょう!!!」


すぐに脱線してしまうのはこの人たちの性なのか。新八くんが話を元に戻す。とにもかくにも、攘夷浪士の仕業だということはわかったのだから大きな進歩だ。


「ここらにまだ攘夷浪士なんざいたのか…くそ、真選組のミスだ」
「つーことで、責任はこの土方が取って切腹するんで許してくだせェ」
「勝手に決めんな総悟!!」
「とにかく、元攘夷浪士の捜索です!手分けして探しましょう」


こくんと皆が頷く。私も探します、と店長と視線を合わせて頷きあう。なんと銀さんの知り合いに刀鍛冶がいるらしく、詳しく見てもらいに行くらしい。もしその刀鍛冶が鍛えた刀ならば、どこの誰かも判明するかもしれない。可能性は低いが、少しでもあるならば頼るしかない。


「強盗なんざ真選組に任せとけ、すぐ捕まえてやらァ」
「依頼されたからには銀さんが解決してやるよ」


頼もしい人たちだ。まだ何も解決していないが、大丈夫のような気がしてくる。
私は元気良く返事をして、一時その場を解散した。

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