大家族で夕食


なんと今日は銀さん一家が夕食を食べに来てくれています。銀さんと、にこにこと笑顔が可愛い美人さん。もしかして彼女、いや奥さんだったりするのだろうか。だって眼鏡の男の子、可愛いチャイナ服の女の子も一緒にいるのだから。お子さんではないだろうか。でも銀さんこんなに若いから違うかな。いろいろ考えつつ、お盆を運ぶ。


「お待たせいたしました、うな重です」

「ハアア!?誰だよ、うな重頼んだの!ふざっけんなコノヤロー!」

「あら私ですけど?今日は全部銀さん持ちなんですよね?ご馳走様です」

「姉上ェェエ!」

「アネゴーそれ私にも一口ちょーだいアル!」

「良いわよ。私が口に運ぶわね?神楽ちゃんのひとくち大きいから。ほらお口開けてー」


ここの一角だけひときわ賑やかだ。くすりと小さく笑いながら、うな重を置く。
どうやら、銀さんがパチンコで一山当てたようだった。話を聞く限りでは、銀さんは臨時収入を内緒で自分のために使おうと考えており、家族に食事をふるまおうとは決して考えてはいなかったのだが、パチンコの勝利に目敏く気がついた神楽ちゃんというらしき女の子が半ば無理矢理連れて来たらしかった。


「すまねーなバイトちゃん、こいつらがうるさくてよ」

「銀ちゃんが一番うるさいネ」

「黙っとけ!」


いいんですよ、と答えつつ、ツッコミが入ってまた笑った。銀さんはため息をついて頭をかき、いつものように注文をする。


「いつもの頼むわ」

「今日くらい他のご飯にしてみてはいかがですか?」

「あー、そうだな。んじゃ、バイトちゃんのオススメで」

「私のですか?」


きょとんとすると、銀さんはニヤリといたずらっ子のように笑った。いつもとは違う笑顔にどきりとする。


「バイトちゃんが作ってくれるならなんでもうめェしな」


銀さんはタラシなのだろうか。そんなセリフを言われてみたところで、実際作っているのは私ではないし、同じテーブルに奥さん(仮)とお子さん(仮)がいるのでなんとも言えないのだが。結局、ハンバーグ定食になった。


「ところで…あの、」


聞くかどうか迷ったが、結局聞くことにした。気になるし。


「奥さんとお子さん、ですか?」


すると、銀さんは目をこれでもかと見開いてぶんぶんとすごい勢いで首を振った。


「いやいやいや!いやちげーよ!何恐ろしい間違いしてくれちゃってんのバイトちゃん!誰がこんなゴリラとっギャァァア!」


銀さんが全否定しながら美人さんを指差すと、その指を美人さんが掴んで笑顔で逆方向に曲げる。折れる折れる!あり得ない方向に曲がってる!しかし美人さんは変わらぬ笑顔だ。ドス黒い笑みだが。


「いってェェ!」

「誰がゴリラですって?」

「お妙さァァん、呼びましたかア!!」

「てめーじゃねえわァァア!」


テーブルの下から男性が勢い良く這い出て来た。瞬時にお妙さんと呼ばれた美人さんが思い切り殴り飛ばす。店内の壁にぶち当たった。
何が起きているのだかさっぱりだ。そんな中、神楽ちゃんは全く気にせずすごい勢いでご飯をかきこんでいる。隣の眼鏡くんが私にぺこぺこと頭を下げた。


「騒がしくてすいません!」

「いえ、ちょうどお客様も少ないですし。賑やかで、構いませんよ」

「いやあ、うるさくて申し訳ない!はっはっは!」

「いやアンタが言うな!」


体格の良い男性は早くも立ち直って豪快に笑っている。テーブルの下から出てきたけれど、どなた様なのだろうか。すると、自己紹介をしてくれた。


「申し遅れました!俺は真選組局長の近藤勲といいます!お妙さんの愛のパートナーでごふぁっ」

「ストーカーなんです〜」

「真選組っ!?す、ストーカー…!?」


今度はお腹を殴られ腹を抑えてうずくまる姿を見てあんぐりと口を開く。真選組といえば、あのマヨ土方さんやあんぱん山崎さん、ドS沖田さんも真選組じゃなかったっけ。それのお偉いさんがストーカーだとは…。警察大丈夫か。いよいよ心配になってきた。


「トシや総悟から噂は聞いてたんだ。あいつらが来たらまた良くしてやってください!うるさい奴らですが…!」


立ち上がって笑いながら、私の肩を叩いた。笑顔が爽やかで、本当は良い人なのだなと思った。
ごゆっくりどうぞ、と言って近藤さんにもお冷やを出すと、近藤さんの目が輝いた。銀さんは余計なことをという視線で私を見たが。


「さあ!万事屋!盛り上がろうじゃないか!」

「てめーが仕切るな!帰れ!!」


そういうわけで、いっそう賑やかな夕食のひとときとなったのだった。
途中あり得ない破壊音や皿が割れる音が聞こえたのは聞こえなかったことにする。
…ああ、後で店長に怒られそうだ。





大家族で夕食

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