坂田さんから渡された掛け布団を被った。暖かい。ぬくぬくしていたら坂田さんが私の首もとに手を伸ばしてきた。

「冷てっ!お前もしや死人じゃねーよな?」

「坂田さんの手あったかいな。ね、もっかいやって」

「俺の体温を奪う気満々かよ」

風呂炊き直してやろうか、と優しい言葉をくれる坂田さんに首を横に振る。そこまで迷惑かけられるほど図々しくないし(夜中の二時に押しかけといて何言ってんのって話だけど)。

「じゃコーヒーでも淹れてやるよ」

「安眠の邪魔したことは謝りますから。そこはどうかノンカフェインでお願いします」

「……ココア、とか?」

「えっマジで用意してくれんの?坂田さん優しいね」

「その代わりテメー今度パフェ奢れよ」

坂田さんは台所に消えた。あと神楽寝てっからあんま大声出すなよ。ま、アイツそうそう起きてきやしねーけど。そう言われたのでココアを待つ間静かにしていた。急激な眠気に襲われた。屋根の下で眠れる安心感に加えてこの布団だ。坂田さんの匂いする。安心プラス包容力、みたいな。

「…xxx、寝た?」

「…………起きて…る…っす」

そうだ、ココア。要求したつもりはないけど結果そうなった訳だし、寝たら悪いよ。でも、ねむ…い…。
ふ、と浮遊感を感じて沈みかけていた眠りの世界から少し浮上した。薄目を開けると坂田さんの顔が奇妙なアングルから見えた。抱き上げられたのだと気付いたのは布団の上に到着した時。掛け布団なんかよりもっと、坂田さんの匂いがする布団に寝かされた。

「…わ…たし、ソファーじゃ…?」

「細けェこた気にすんな。ちょっとした気まぐれって奴?」

「……一緒に、ねます?」

「バーカ。次同じこと言ったら襲うからな」

ちょっとだけ本気だったんだけどなァ…。布団についた匂いとか、間接的な物じゃなくて。直接肌で感じてみたいなっていう訳のわかんない欲求。もしかして私、結構坂田さんのこと好きだったりするのかな。そんなことを考えながら眠りについた。午前二時過ぎの、安らか過ぎる夢の入り口だった。












ノ ッ ク ノ ッ ク
(誰かいますか?)

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