鼻歌交じりにオーブンを開ける。
時刻はもうすぐ三時。麗しきマドモアゼル達、その他の野郎共へのケーキを作っている最中だ。
ショコラシフォンの良い香りがふわりと漂い、おやつの時間を船内へ告げる。
あとは、冷まして生クリームを添えて…。
出来上がって一番に、まずxxxちゃんに届けるのが、日課だ。


「おやつの時間ですプリンセス。今日はショコラシフォンです」


シフォンの乗った皿、そしてジュース、フォークを置いて、本を読むxxxちゃんの目の前に置く。


「ありがと、サンジ」


短く返事をしたxxxちゃん。の、相席に座る。
読みかけの本を閉じ、そばに置くと、フォークを手に取り一口大に切る。と、そこでxxxちゃんがちらりとおれの方を見た。


「…み、見ないでよ。食べにくいんだけど」

「気にしないで。おれが見ていたいだけだからさ」


にこにこと見つめる。xxxちゃんは意味わかんないよ、と少し不機嫌そうにしながらシフォンを口にいれた。すると、不機嫌そうだった顔がへにゃりと目を細めて幸せそうな表情になった。この瞬間が、好きだ。コック冥利に尽きるというもので。


「うまい?」


にっ、として聞くと、xxxちゃんはぱっと弾かれたように答えた。


「おいしいっ!」


言ってから、あ…とまた表情を戻す。なんだか、意地を張る猫みたいでとても可愛い。


「光栄ですプリンセス」

「〜っ…」


xxxちゃんはぱくぱくっ、と食べ終えてガタンと席をたった。キッチンに持って行ってくれるらしい。紳士としてレディの手を煩わせるわけにはいかないとは思ったが、結局xxxちゃんが譲らなかった。その途中、段差があることに気づかないxxxちゃんは、段差につまずいてしまった。


「きゃっ!」

「おわっ」


とっさにxxxちゃんの腰を支え、落としかけた皿などをお盆でキャッチ。xxxちゃんは、とっさにおれの背中をつかんできた。つまり、距離がすごく近い。くっついている状態だ。なんとか転ぶことは回避出来てホッとすると、xxxちゃんがバッと離れた。


「xxxちゃん?大丈夫かい?」

「ご、ごめん!」


xxxちゃんの顔は真っ赤だ。そのことに少し驚いたけど、照れてるんだと気づいて、少しからかってやろうと思った。


「xxxちゃん?顔が真っ赤だよ。熱でもあるんじゃねェか?ま、赤いxxxちゃんもキュートだけど」


おでこに手をくっつけると、xxxちゃんはおれの手を払ってあとずさりした。


「ななな何してんのよ!」

「ななな?」


xxxちゃんの顔はさらに真っ赤で、少し涙目。


「サンジのっ、バカ!」


そう言ってすぐに走って行ってしまった。かわいすぎる反応に、くくく、と笑いがこぼれる。


「かわいすぎるよ、プリンセス。あんなの、反則だ」


もっとからかいたくなるだろ。可愛いおれのマイハニー。




おやつの時間
(サンジ君、xxxをいじめたんですって?いつもの紳士はどうしたのよ)
(いっいや、ちがうんだナミさん!)
(xxxもいいかげん素直になりなさい!好きなんでしょ!)
(!!ばかナミィィィ!)

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