「え、今なんて言いました?」

「だから今週の日曜どこか出掛けんぞ」


私の部屋に来た土方さんは唐突にそう告げた。日曜日に土方さんと二人でお出掛け。二人で。ここ重要。それはつまり……、


「デート!!?」

「ばっ、デカい声出すんじゃねーよ!」

「土方さんとデート!やば、嬉しい」

「とにかく!日曜はあけとけよ!」

「はい!うわぁぁ楽しみ!!」


おしゃれとかしようかな、いやしよう!で、メイクもして……嬉しさのあまりに叫んでる私に若干引き気味で土方さんは、じゃあなと部屋を出て行った。

男所帯で働いてる所為か元々わたしに女子力とやらが無いのか最近の流行なんて全然分からない。


「とりあえず雑誌買いに行くか」




待ちに待った日曜日。あーたった3日間だったのにすごく長く感じたよ。今わたしは駅前で土方さんを待っている。それにしても土方さんおっそいなー。もう30分も遅刻してる。彼女を待たせるってどういうことだよ!そんな時携帯が鳴った。


「もしもし?」

「お前どこにいんだよ!」

「うっ、るさい……」

「もう30分も待ってんだぞ!?」

「いや待て待て。わたしも待ち合わせ場所にいるんですけど」

「は?……お前いんの?どこだよ」

「駅前の西口」

「バカ!待ち合わせ場所は東口だろ!」

「何言ってるんですか。西口って言いましたぁ」

「あー、もういいわ。そっち行くから」


ぶつっと音とともに通話が切れた。それからすぐに土方さんは私のところに来て、私の頭を叩いた。暴力はんたーい。


「痛いじゃないですかー」

「うるせー!元はといえばお前が待ち合わせしたいなんか言うから悪いんだろ。屯所から一緒に出てくりゃよかったんだよ」

「だって……」


待ち合わせってカップルっぽいし、なんか憧れっていうか、してみたかったんだもん。叩かれた頭を押さえながらしゅんとしてたら土方さんはばつが悪そうに目を逸らした。それから小さな声で言った。


「あれだ、今日の格好……いいんじゃねーか?」

「ホントですか!?嬉しい!これ今流行りらしいんですけど、買ってよかった」

「……単純」

「土方さんも素敵ですね!そこら辺の男より断然カッコいいです!惚れ直しました!」

「別に普通だろ。行くぞ」


さっさと歩き出した土方さんに慌てて着いていく。こっそり盗み見みれば案の定顔が赤い。照れ隠しですね!分かります!

【となりのペドロ】今日はこの映画を観に来た。土方さんは一度観に来たことがあるらしい。二回も観たいほど面白いのかとわくわくしてたんだけど、別に普通だった。隣で土方さん号泣。周りの視線が痛いよォォ!!私はとりあえずポップコーンを食べるのに集中することにした。


「面白かったな」

「そ、そうですね」

「この後どうするか」

「私はこのままぶらぶらしててもいいんですけどね」

「あ?そんなんで楽しいか?」

「土方さんと一緒なら何でも楽しいですよー」

「お前さらっと恥ずかしいこと言うな!」

「あれ。また照れてるんですかー?かーわーいーいー」

「斬られてぇのか」


楽しい時ほど早く過ぎるもの。あっという間に辺りは暗くなっていた。そろそろ帰らないといけない。土方さんだってきっと忙しい中私のために時間を割いてくれたんだ。もう十分満喫したはず、なのにもう少しだけと思ってしまう私は欲張りなのかな。


「そろそろ帰りましょうか。私も隊士の皆さんに夕ご飯作らないと」

「…………」

「今日は楽しかったです。すごく、楽しかった」

「……らい」

「え?」

「今日ぐらいもっと甘えやがれ」

「だ、だって土方さんも忙しいし」

「そんなことァどうだっていんだよ」

「でも……」


土方さんの目は真剣だった。全部見透かされてるんじゃないかってぐらい。ここで私が別に構わないと言ったら土方さんはそのまま屯所に帰るんだろう。きっとその方がいいんだと思う。皆が待ってるし土方さんも仕事がある。


「お前は、もう終わってもいいのか。このまま帰ちまってもいいのか」

「………いや、です」

「…………」

「もっと…もっと土方さんと一緒にいたい。まだ帰りたくない」


でもね、私はそんなにいい子じゃないんだ。
ふっと土方さんは笑い私に手を差し伸べる。私は土方さんの手を掴んだ。





夜はまだ始まったばかり

今日だけはもっと甘えさせて。

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